ファーザーズ・デイ(1997年アメリカ)

Father's Day

18年前の恋人に「あなたが父親かもしれない息子が、行方不明になったの」と言われた2人の男が、
サンフランシスコの街からリノへと逃亡する少年を追うコメディ映画。

ハリウッドを代表する人気6実力派コメディアンのロビン・ウィリアムスとビリー・クリスタルの共演なのですが、
今回ばかりはチョット残念な結果ですね。不運なことに、映画の出来自体が悪く、ひじょうに勿体ない結果だ。

監督のアイバン・ライトマンはそこそこ実績のある映像作家だし、
主演の2人に加えて、何故か映画の終盤でメル・ギブソンがカメオ出演していたり、
無駄に豪華な内容の映画なので、映画を盛り上げる土台は揃っていたので期待してたんですがねぇ。
プロデューサーとしてジョエル・シルバーもクレジットされてますから、映画製作の予算としては、
かなりの規模で用意されていたことが予想されるのですが、さすがにこれでは寂しいですね。

主演2人はさすがに期待通り、あれやこれやと手を尽くして映画を盛り上げようとしますが、
彼らがやればやるほど映画のテンションは下がっていくという、何とも皮肉な映画だ。
これはあまりにアイバン・ライトマンが主演2人の演技合戦に頼り過ぎているからだろう。

端的に言えば、実質的に本作の主導権を握っているのは主演2人なのです。
もっと言えば、映画をコントロールしているのが主演2人なのです。さすがにこれではいけません。

言わば“演出の不在”なわけで、別にアイバン・ライトマンでなくとも、できる仕事になってしまっているのです。

この映画の唯一の救いは、映画の紅一点...と言うには、いささか出番が少ないが...
主演2人の18年前の恋人コレットを演じたナスターシャ・キンスキーの変わらぬ美貌だろう。
スクリーンの世界に入ってから、もう20年経つというのにこの美しさ。
これで17歳の息子がいるというから、ショックだ(苦笑)。まぁ撮影当時、彼女はまだ36歳でしたが。。。

ただ、やっぱりコメディ映画としてニヤリともできないのは、いただけないなぁ。
まぁ強いて言えば、シュガー・レイ≠フ面々を前にして、ロビン・ウィリアムスがドイツ人プロデューサーを
装うシーンは狙いとしては悪くないけど、ハッキリ言って、あのシーンだけ。

やっぱり次から次へと観客を楽しませようとする、映画的な仕掛けをもっと仕掛けて欲しいですね。
マシンガン・ト−クが必要だったとは思いませんが、映画にもっとスピード感を持たせて欲しかったですね。
イマイチ歯切れが悪いまま映画が進行してしまい、ズルズルといってしまう感じで、観ていてキツいです。

コレットの息子スコットとのエピソードも、並べて平坦で魅力に乏しい。
この不思議な関係は、もっと映画として機能的に扱おうとすれば出来たはずで、大きな難点と言ってもいい。

後に『13デイズ』で合衆国大統領役に挑戦するブルース・グリーンウッドが起用されていますね。
この映画での彼は、簡易トイレごと崖から突き落とされたり、かなりの災難が襲いかかります。
まぁ残念ながら彼に関する描写が不足気味のため、今一つ彼の行動に説得力が無いのが難点なんですが、
こういった難点は全て作り手に責任があると思う。彼のエピソードで笑いが取れないのは、いただけません。

映画の尺が短く、観易い内容にまとまっているのは救いですね。さすがにこれ以上、長くなるとキツいですね。
これだけのスタッフを集めながら、商業的成功を収められなかったのは、何となく分かる気がします。

このキャスティングを考えると、
もっと作為的に主演2人の芸をコントロールしながら、映画を構成して欲しかったですね。
勿体ないんですよね、映画を引っ張っているのが2人だけであって、作り手の特徴が一つも出ていないから。
アイバン・ライトマンなら十分に彼らしい軽妙な演出によって、それらを出せたはずであり、
ロビン・ウィリアムスとビリー・クリスタルという2大個性派コメディアンだって、コントロールできたはずだ。

だからこそ、これはとても残念な結果ですね。

一般にこういうシチュエーションに置かれた男って、
女性から「アナタの子よ」なんて言われると焦っちゃうようなイメージがありますが、
この映画では一転して、捜索するスコットが自分の息子である証拠を必死になって競い合うというのは面白い。
足の指や髪の毛など、色々と見比べて自分との共通点を見い出そうとするのですが、
お互いにやがてはただの意地の張り合いになるというのが面白いですね。

いっそのこと、この2人の「自分が父親だ!」という争いがエスカレートした方が
映画は面白くなったかもしれませんね。そうなると映画のテーマが大きく変わってしまいますが、
せっかく映画を良い方向にかき回せる2大スターの共演なのですから、それぐらいやって欲しかったですねぇ。

何はともあれ、おそらく滅多に実現しないであろう、
ロビン・ウィリアムスとビリー・クリスタルの共演というチャンスをフイにしたという結果は残念でなりません。
最近ではこれだけ期待させておいて、見事に残念な結果に終わってしまったという作品も珍しいぐらいだ。

とりあえず、ナスターシャ・キンスキーは変わらぬ美貌を保っているというのは嬉しいですが、
この映画の収穫が「それだけ」というのは、とても寂しい気がします。

全く期待せずに観ると、少しは良く観えるのかもしれませんが、僕は期待ハズレの作品でした。。。

(上映時間99分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 アイバン・ライトマン
製作 ジョエル・シルバー
    アイバン・ライトマン
脚本 ローウェル・ガンツ
    ババルー・マンデル
撮影 スティーブン・H・ブラム
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ロビン・ウィリアムス
    ビリー・クリスタル
    ジュリア・ルイス=ドレイファス
    ナスターシャ・キンスキー
    チャーリー・ホフハイマー
    ブルース・グリーンウッド

1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(ジュリア・ルイス=ドレイファス) ノミネート