悪魔を憐れむ歌(1997年アメリカ)

Fallen

死刑執行された連続殺人犯が発した謎の呪文。
この日の後、身辺で次々と不可解な現象が起こった殺人課の刑事ジョンが
やがて自分の周辺で悪魔が次々と人間の身体を乗り移っていることに気づき、
自らの立場が危なくなっていることに気づき、悪魔との対決を選択するオカルト・サスペンス。

この手の映画も一時期多かったと記憶してますが、
段々とブームが終息に向かったためか、作品数自体は確実に少なくなってきていますね。

映画の前半が結構、モタつく感じで、随分と映画が冗長で必要以上に長く感じられたのですが、
中盤以降、クライマックスまではそこそこ盛り上がって、上手く仕上げてきたという印象があります。
これで映画の前半がもっと引き締まった内容だったら、もっと面白くなっていたでしょうね。

監督は『真実の行方』で名を上げたグレゴリー・ホブリット。
演出面では悪くないと思いますが、全体的な映画の構成という点では、少し疑問が残るかな。
前述の映画の前半のモタつき感もありますが、クライマックスの対決シーンも中盤以降、
グッと映画が引き締まってきただけに何とも情けない作りで、最後だけ力不足で拍子抜けですね。

キャスティングも良いんだけど、主人公の相棒を演じたジョン・グッドマンがイマイチでしたね。
容姿だけでインパクトあるのに、ほとんど活躍のタイミングが無くて残念でしたね。

それと、邦題が『悪魔を憐れむ歌』というタイトルでしたから、
てっきりローリング・ストーンズ≠フ『Sympathy For The Devil』(悪魔を憐れむ歌)なのかと思いきや、
この曲を使ったのは映画のエンド・クレジットだけで、映画の前半からしきりに多用されるのは、
同じくローリング・ストーンズ≠フ『Time Is On My Side』(タイム・イズ・オン・マイ・サイド)。

まぁいいんだけど・・・これなら、もっと他に適切な邦題があったと思うんですがねぇ〜。。。

それと、映画のオチの付け方があんまり上手くなかったかな。
ある意味ではドンデン返し系のエンディングなんだけれども、何だか分かりにくいオチになってしまった。
“猫”の存在が出てくることで、そのあり方は明白なんだけど、もうチョット派手に演出しても良かったかも。
それどころか、隠れていた人間がいたなど、もっと分かり易いオチでも良かった気がします。

触れただけで悪魔が乗り移っていく描写が活かされ始める、映画の中盤からはグッと面白くなる。
特に主人公のジョンに助言を与える女性ミラノが悪魔から狙われ始めて、
通りを歩く人を介して次から次へと乗り移っていき、彼女を追い詰めていく描写は悪くない。
サスペンス劇の盛り上げ方としては基本に忠実で、なかなか見せてくれますね。

但し、サスペンスという観点からいけば、主要登場人物の絡みが希薄なのはイマイチかな。
前述したジョン・グッドマンの活躍の場が少ないこともいただけないが、
同時に主人公のボスである警部補を演じたドナルド・サザーランドも存在感が薄いのは致命的だ。
彼なんかは、名バイプレイヤーなのですから、もっと疑わしい人物として利用すべきなのです。
映画の前半から総じて同じ傾向が続くのですが、警察内部での描写に工夫が感じられず、
彼らの関係性にスリルが感じられないから、結果として映画に刺激が足りないのです。

まぁ『真実の行方』でもそうでしたが、役者に目で芝居させるのは上手い。
本作で悪魔が乗り移った状態を目で表現させていますが、この発想は悪くないですね。
(『真実の行方』ではクライマックスにエドワード・ノートンが目つきを変えて芝居をしてました)

ただ、どうなんだろ。この映画の作り手はホントにこの内容が売れ線だと思っていたのだろうか?(笑)
それなりに資金を要した作品だと思うのですが、このオカルトな内容はかなり観客の好みが影響しますね。

まぁ映画の前半のモタつきさえなければ、おそらく映画はもっとタイトになっていただろうし、
観客をできるだけ早くサスペンス劇へと誘い込むことができたと思いますね。
そうすれば映画の印象が大きく変わっていたであろうだけに残念。
映画の前半でモタついたのは、映画の雰囲気作りに手間取った影響もあるので、
オカルトというか、悪魔的なムードを映画の前半でもっと端的に表現できていれば・・・と思う。

エンターテイメントとしても、ギリギリで及第点レヴェルには届かなかった感が残ります。

それから敢えて追記すれば、デンゼル・ワシントンのファン的にもイマイチだろう(苦笑)。
彼の魅力もフルには活きていないし、いっそのこと、悪魔が乗り移って欲しかったなぁ(笑)。
少なくとも後の『トレーニング・デイ』なんかを観れば、そういった類いの芝居もできそうなんだけど・・・。

やっぱり、この手の映画としては『エクソシスト』の先駆性が光りますね。
本作のような後発の作品を観ると、改めてその偉大さを実感させられてしまいますね。

あくまで仮定の話しとして、『エクソシスト』の監督だったウィリアム・フリードキンが本作を撮っていたら、
また違った解釈で新たな展開で見せてくれたかもしれませんね。

(上映時間124分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 グレゴリー・ホブリット
製作 チャールズ・ローヴェン
    ドーン・スティール
脚本 ニコラス・カザン
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
美術 テレンス・マーシュ
音楽 タン・ドゥン
出演 デンゼル・ワシントン
    ジョン・グッドマン
    ドナルド・サザーランド
    エンベス・デービッツ
    ジェームズ・ガンドルフィーニ
    エリアス・コーティズ
    ガブリエル・カソーズ
    マイケル・J・ペイガン