エボリューション(2001年アメリカ)

Evolution

これは実に微妙なSF映画ですが...(苦笑)
狙い過ぎな部分もあれば、地味に面白いところがあったりして、
決して軽視することができない映画で、何とも“美味しい”ポジションの映画ですね(笑)。

コメディ映画を専門に活動するアイバン・ライトマンが
珍しく規模の大きなSF映画を手掛けた作品で、日本でもかなり大きな規模で劇場上映された作品ですが、
残念ながら大きなヒットには至らず、悲しくも半分、忘れ去られたような作品になってしまいましたね。

まぁ確かにそこまで映画の出来は良くないけれども、
強いて言えば、オーランド・ジョーンズ演じる科学者ブロックの体内にエイリアンが入り込んだパニックから、
治療のためにと彼をベッドで抑制して、荒療治にでるシーンは面白かったかな。

但し、ジュリアン・ムーア演じる政府機関の女性職員アリソンが
やたらとドジな女性という設定なのは、狙い過ぎかな。あれは彼女のファンしか楽しめないでしょう(笑)。

SF映画としての体裁を持っているわけでから、
映像効果に関しては、かなり本格的でさすがはハリウッドのプロダクションの力です。
アイバン・ライトマンはかつて『ゴーストバスターズ』をヒットさせましたから、
SF映画の作り方に関しては、それ相応の経験がとても大きかったのかもしれませんね。

エイリアンの造詣はそこまで良くありませんが、
どことなくチープさを強調しているのが面白くって、本作の大きな持ち味ですね。
この辺はアイバン・ライトマンらしいというか、良い意味でシリアスにならない配慮がありますね。

まぁ言うまでもなく、本作はコメディです。
驚異的なエイリアンが襲来して、人類滅亡の危機だというのに、まるで映画に緊張感はないし、
どことなく楽観的なムードが漂う映画になっており、いくらでもサスペンス映画にしようと思えばできるところを、
敢えてコメディ映画にしてしまったというのが、如何にもアイバン・ライトマンらしい発想ですね。

どうもアイバン・ライトマンは『ゴーストバスターズ3』を撮りたいらしいのですが、
なかなか協力が得られなくって、我慢し切れずに本作を撮ってしまったらしいのですよね。。。

キャスティングは製作当時のハリウッドで豪華。
もう既に日本でもブームは下火になっておりましたが、90年代半ばにTVシリーズとして人気を博した、
『X−ファイル』シリーズのモルダー捜査官役でブレイクしたデビッド・ドゥカブニーを筆頭に、
本作製作当時は、オスカーに限りなく近かったジュリアン・ムーアに、人気コメディアンのオーランド・ジョーンズ。

少なくとも本作製作当時は、ある程度の集客力があったキャスティングですね。
まぁデビッド・ドゥカブニーはともかく、前述したようにオーランド・ジョーンズはいい味出してるし、
紅一点のジュリアン・ムーアは、彼女のファンであれば間違いなく必見の作品に仕上がっている。
(欲を言えば...せめてドジな姿はもっと上手く表現して欲しかったが...)

映画の中盤にあった、ショッピング・センターにドラゴンのような
クリーチャーが入り込んで、買い物客を巻き込んで大暴れするシーンはなかなか良かったですね。

このシーンのスペクタクル性を活かして、
もっと全体的に映画のサスペンス性を盛り上げても、僕は良かったと思うんですよね。
確かに映画の方向性として、コメディに向けたかったという意図は分かるのですが、
演出の基礎はしっかりしているだけに、全体的に中途半端だったように感じましたね。
コメディ映画として強調するなら、もっと大胆に観客を笑わして欲しいかな。

この辺の中途半端さが、映画を磨き切れなかった最も大きな要因で、
アイバン・ライトマンが映画監督として大成できない理由は、ここにあると感じますね。
(いや、フォローするようでアレですが...アイバン・ライトマンは悪い映画監督ではないですけどね・・・)

まぁただ・・・映画のオチを観る限り、
本作はこのくだらなさを楽しむのが筋なのでしょうし、あまり深く考えない方が楽しめるのでしょう。

あまり過度に期待してしまうと、前述したようにコメディ映画としてもSF映画としても
中途半端な出来ですから、あまり楽しめないかとは思いますが、この妙味にハマればイケると思います。
ですから、ひょっとすると数十年後にはカルト映画として崇拝される可能性はあると思います。

特に終盤の攻防は、まるで『インディペンデンス・デイ』を想起させるオチなのですが、
ただそれ以上に、決定打となるエイリアンの撃退法があまりにチープで強烈だ(笑)。
あまりのチープさに、僕も観ていて、思わず失笑してしまいましたが、こういうのは好きな人は好きでしょう(笑)。

映画の尺の長さも丁度良いし、全体的な起伏もそこまで悪くありません。
しかしながら、やはりこの映画が致命的だったのは、あまりに中途半端な映画の方向性でしょう。

コメディとしては中途半端、サスペンスは盛り上がらず、SF映画としても中途半端。
さすがにこれでは大きな収穫があった映画とは言えません。この辺は作り手の経験の差でしょうか。

チープな映画が好きな人にはオススメしたい一本ですが、
あまり過度に期待しないで観てあげて欲しい。そうすれば、本作が持つ意外な魅力や
意外にも“美味しい”ポジショニングを為した映画であるということに気付いてくれる人もいるかも・・・。

(上映時間102分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 アイバン・ライトマン
製作 ダニエル・ゴールドバーグ
    ジョー・メジャック
    アイバン・ライトマン
原案 ドン・ジャコビー
脚本 デビッド・ダイアモンド
    デビッド・ウェイスマン
    ドン・ジャコビー
撮影 マイケル・チャップマン
音楽 ジョン・パウエル
出演 デビッド・ドゥカブニー
    ジュリアン・ムーア
    オーランド・ジョーンズ
    ショーン・ウィリアム・スコット
    タイ・バーレル
    テッド・レヴィン
    ダン・エイクロイド
    ウェイン・デュバル
    スティーブン・キルボーン