大脱出(2013年アメリカ)

Escape Plan

あくまで前提条件としてですが、
20年前なら、ここまでスタローンとシュワちゃんが共演することなんか考えられなかった。

かつて、89年の『テッドフォール』や97年の『フェイス/オフ』で
幾たびか共演が囁かれていましたが、常に何らかの事情で実現してこなかった過去があり、
そういった今までの経緯を考えると、この2人の堂々たる共演は不可能なんだと考えていました。

僕が映画に夢中になったのは、丁度、20年ぐらい前だったせいもあり、
本作のような企画がガンガン成立すること自体に若干の違和感もあって、
思わず「時代も変わったなぁ〜」と痛感させられるのが、また感慨深いところがありますねぇ。

時代が変わったとは言え、まだまだギャラも高いはずで、
ナンダカンダでスタローンにシュワちゃんもビッグネームであることは間違いないわけで、
日本でもそこそこのヒットを放ったように、世界的にも注目度が高い作品であったということを考慮しても、
僕は本作、エンターテイメントとしてとっても良く出来ていると思います。しっかり楽しめる映画になっています。

上映時間も2時間弱と丁度良く、ある意味で安心して楽しめるエンターテイメントです。

おそらく2010年の『エクスペンダブルズ』のヒットからの系譜的作品だと思いますが、
予想外にしっかり考えられたエンターテイメントであって、ただただ破壊を楽しむ映画というわけではないですね。
監督のミカエル・ハフストロームは、『ザ・ライト −エクソシストの真実−』で規模の大きな映画を経験済みですが、
スタローンとシュワちゃんを擁した本作は、またスケールが桁違いであったはずですが、なかなか健闘しています。
主演2人はさすがに高齢であることを隠しきれないのですが、そこを上手くカバーする描き方にはなっている。

スタローンにしても、シュワちゃんにしても、
ある意味で熟練したアクション・スターとしての魅力を出していると言っても過言ではなく、
かつてバリバリ現役なアクション・スターであった時代のイメージとは決別し、
良く言えば余裕、悪い言えばユルさを持って、アクション・シーンにのぞんでいるようで、これはこれで悪くない。

とは言え、この映画、少々、厳しいことを言わざるをえないのは、
さすがにスタローンとシュワちゃんの年齢が隠せない映画になってしまっているせいか、
どうしても「お爺ちゃんが頑張っているアクション映画」という印象が拭えず、細部で無理を感じるからです。

まぁ前述した通り、カバーはしているけれども、
いかんせん2人とも60代後半にさしかかったスターですからねぇ。世代交代しなきゃダメです。
どうしたって、2人が悪党どもを殴り倒していく姿に違和感があることは否定できません。

やはりハリウッドも人材難は顕著に出ていますね。
もうそろそろ、スタローンやシュワちゃんの後継者となるスター俳優が登場してこなければいけませんね。

いつまでも「お爺ちゃんが頑張っているアクション映画」にすがり付くプロダクションではいけません。
こういう映画がヒットすることに、ハリウッドはもっと危機感を抱いた方がいいような気がします。
あくまでエンターテイメントですから、“お祭り映画”としては支持しますが、これが主流では困りますね。

最近はスタローンの志向性も変わってきたのか、
『エクスペンダブルズ』シリーズの成功を受けてなのか、詳細な理由は僕には分かりませんが、
本作なんかを観ていても思うのですが、スタローンのアクションの方向性も変わりましたね。
以前のような、ムキムキ、マッチョな汗臭いアクションばかりが先行する作品ではなくなってきています。
どちらかと言えば、かつてのシュワちゃんのアクション映画のような志向性になってきたかなぁ。

さすがにご都合主義が横行している部分はあるので、
やたらと主人公が都合良く、脱獄作戦が上手く進むなど、違和感がある映画ではあるのですが、
もう少し主人公が脱獄のために使う道具を調達するのに、苦労した方が映画は面白くなったかなぁ。

真に迫ったアクションで見せることは難しくなってきただけに、
どこに映画の面白さを演出するかという観点がもの凄く大切なはずで、それが本作は少し弱いかな。

悪役に徹したジム・カビーゼルはなかなか良かったですね。
単に“雇われ看守だった”という見方もできますが、スタローンとシュワちゃんという2大スターを相手に、
実に堂々たる憎たらしいまでの好演で、久しぶりに規模の大きな映画で彼を観ましたが、まだまだ期待できる。

この刑務所内の描写はなかなか良かったので、
いっそのこと『バトルランナー』のように近未来SFサスペンス調にしてしまった方が良かったかも。
この辺は作り手のノウハウも影響してきますが、映画のインパクトをもっと強くできたかもしれませんね。

どうでもいい話しかもしれませんが、
営利目的の民間が経営する刑務所という位置づけがよく理解できなかったのでえすが、
民間企業で刑務所を経営して、強制労働があるわけでもないのに、どうやって利潤を生むのでしょうか?
まぁ映画の本編にそこまで影響する要素とは言い難いのですが、産業構造がよく分からなくて不思議だった。

それならば、いっそのこと通常の刑務所を物語の舞台として、
スタローンが厳しい看守、シュワちゃんが刑務所アドバイザーとして投獄されるも、
何らかの理由で牢獄に閉じ込められて、なんとかして脱獄しようと闘いを挑むという設定の方が面白かったかも。

現実世界では、刑務所も人で溢れかえっており、
そこまで収容人員に余裕があるわけではないと聞いており、財政的にも厳しいようです。

当然のように税金が投入されているわけで、
日本の刑務所事情はとても厳しい状況であることは現実のようです。
まともに経営していては儲かるわけがないし、主人公がハメられるにあたって、
刑務所のコンセプトってそれなりに重要なファクターになるはずなんだけど、どうも納得性が低いかな。

今どき珍しい“お祭り映画”ですが、
往年のアクション映画ファンであれば、思わずニヤリとさせられる映画であることは間違いないだろう。

(上映時間115分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ミカエル・ハフストローム
製作 マーク・キャントン
    ランドール・エメット
    レミントン・チェイス
    ロビー・ブレナー
    ケビン・キング=テンプルトン
原案 マイルズ・チャップマン
脚本 マイルズ・チャップマン
    アーネル・ジェスコ
撮影 ブレンダン・カルビン
編集 エリオット・グリーンバーグ
音楽 アレックス・ヘッフェス
出演 シルベスター・スタローン
    アーノルド・シュワルツェネッガー
    ジム・カビーゼル
    カーティス・“50 Cent”・ジャクソン
    ヴィニー・ジョーンズ
    ビンセント・ドノフリオ
    サム・ニール
    エイミー・ライアン
    ファラン・タヒール