エルヴィス・コステロ/Detour 2016

Elvis Costello/Detour 2016

2016年9月7日(水)[昭和女子大学 人見記念講堂]

       

01 They're Not Laughing At Me Now ゼイアー・ノット・ラフィング・アット・ミー・ナウ
02 Mystery Dance ミステリー・ダンス
03 Man Out Of Time マン・アウト・オブ・タイム
04 Ascension Day アセンション・デイ
05 Veronica ヴェロニカ
06 So Like Candy ソー・ライク・キャンディ
07 45 45
08 Everyday I Write The Book エヴリデイ・アイ・ライト・ブック
09 Shot With His Own Gun ショット・ウィズ・ヒズ・オウン・ガン
10 Accidents Will Happen アクシデンツ・ウィル・ハプン
11 Deep Dark Truthful Mirror ディープ・ダーク・トゥルースフル・ミラー
12 Little White Lies リトル・ホワイト・ライズ
13 Beyond Belief ビヨンド・ビリーフ
14 She シー
15 Watching The Detectives ウォッチング・ザ・ディテクティヴズ
16 A Face In The Crowd ア・フェイス・イン・ザ・クラウド
休憩(2分)
17 Pads, Paws And Claws パッズ、ポウズ・アンド・クロウズ
18 Love Field ラヴ・フィールド
19 Clown Strike 道化師たちのストライキ
20 Burn The Paper Down To Ash バーン・ザ・ペーパー・ダウン・トゥ・アッシュ
21 Vitajex ヴィタジェックス
22 That's Not The Part Of Him You're Leaving ザッツ・ノット・ザ・パート・オブ・ヒム・ユアー・リーヴィング
23 Blame It On Cain ブレイム・イット・オン・ケイン
24 Down On The Bottom ダウン・オン・ザ・ボトム
アンコール
25 Shipbuilding シップビルディング
26 Pump It Up パンプ・イット・アップ
27 Alison アリソン
28 (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes レッド・シューズ
29 (What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding / The Scarlet Tide [Medley] ピース、ラヴ・アンド・アンダースタンディング / ザ・スカーレット・タイド [Medley]
※★印はwith Larkin Poe
いやぁ、エルヴィス・コステロ、御年62歳。聞きしに勝る、まだまだ熱いオヤジだった(笑)。

今回、初めてコステロのコンサートを見ることになったのですが、
正直言って、今回の“Detour”って企画は「ステージ後ろに映し出された映像に関連する曲を歌う」という、
弾き語りステージだと聞いていたので、かつてのパンク/ニューウェーブの時代だったり、パブロックの派生として
ある意味でオルタナティヴに発展し続けてきたコステロのステージとは、かけ離れたものではないかと思っていました。

会場は以前、来たことがある三軒茶屋の昭和女子大学 人見記念講堂。
ここは以前、再結成したベン・フォールズ・ファイヴ≠フライヴを見た会場ですが、
ここは収容人数が約2000人なので、コステロのライヴ会場としては小さいような気がしていたのですが、
よくよく調べてみたらコステロって、日本でもそこそこ人気があるのに、あまり大きな“ハコ”ではやらないんですね。。。

見に行こうかと真剣に悩んだ、3年前のツアーはステージの上に巨大ルーレットを置いて、
ルーレット回して止まった曲を片っ端から演奏するという、妙な企画のツアーで途中からはコステロが
気分で客席の女性を指名してステージに上げて、その女性のリクエストに応えて演奏するという、
リクエスト大会のようになっていたらしいのですが、いつもコステロのコンサートは大盛況で興味はありました。

そこで今回、直前になって告知があって、
ツアーにラーキン・ポー≠フメンバー2人が帯同することになったので、19時開演だった予定を
18時30分からラーキン・ポー≠フ前座をやるという、なんとも慌ただしいスケジュールにしてきました。

前回、昭和女子大学 人見記念講堂に行ったときも、三軒茶屋の駅から思ったよりも歩いた記憶があったので、
今回はかなり早めに行っておいて大正解。ラーキン・ポー≠フ前座のステージがキッチリ定刻にスタートだもの(笑)。

そして彼女たちの前座は、キッチリ30分で終了。まるでタイムを測っていたかのようでした。
アメリカ南部の空気を感じさせる面白い音楽だとは思うけど、さすがにラーキン・ポー≠フ音楽って、
コステロのファンとあまり被らなさそうな感じなので、リアクションも薄く、ひょっとしたらやりづらかったかもしれませんね。

これはコステロ本編のステージも熱く長かっただけに、前座も入れると3時間を越えるステージだったこともあるかも。

前座のラーキン・ポー≠フステージが終わり、一旦、客電が点き、元に戻ってしまいます。
ステージに設置された巨大テレビでは、コステロのビデオ・クリップが流されるという演出で、
本編の開始を待っている時間も退屈はしないと思いますが、会場の雰囲気のせいか、周囲も随分と落ち着いた感じ。

で、約15分ほど経過した、19時15分。
再び客電が落ち、テレビではまるで映画のオープニング・クレジットのように、演者を紹介します。
ここで流されるのが Monkey To Man(モンキー・トゥ・マン)のクリップで、よりによって曲の最後まで流すんですね(笑)。

クリップが終わり、無照明のままステージで突然、「これは新曲だよ!」と言って、
アコースティック・ギター一本で弾き始めたのは、あの特徴的なヴォーカル、エルヴィス・コステロ本人でした!

よりによって、いきなり発売されていない聴いたこともない新曲だから、面食らっちゃいますが、
テレビの映像を重ねながら、コステロは実に丁寧に歌っているようで、かなり感情が入っています。
続く曲の歌い出しで、会場は盛り上がったのですが、1stアルバムから Mystery Dance(ミステリー・ダンス)!
曲のイメージ通りに、ハイスピードな感じで、かなり荒々しくアコースティック・ギターを弾き倒していました。
後から冷静に考えると、この Mystery Dance(ミステリー・ダンス)がこの日のベスト・パフォーマンスだったかも。

そして、Man Out Of Time(マン・アウト・オブ・タイム)も聴けるとは思っていなかったから、嬉しかったぁ〜。
如何にもコステロらしいのですが、今回の“Detour”もステージで歌いながら、コステロの気分によって、
セットリストが変わっていくので、事前にスタッフが持っていた曲目から Mystery Dance(ミステリー・ダンス)の
時点で変わっていて、この Man Out Of Time(マン・アウト・オブ・タイム)も、当初の予定には無かったらしい。

このあたりでは、デビュー間もない頃、レコード会社に乗せられて、
何故か学ランを着て、トラックの荷台に乗って、銀座でゲリラ・ライヴを仕掛けて、違反切符を切られたという
当時の写真と話しをMCで喋っていて、この話しは欧米でもコステロ自身がしているので、そうとう印象深いのでしょう。

そして、先日、亡くなったアラン・トゥーサンの話しをして、
あらためてハリケーン・カトリーナで、アラン・トゥーサンのニューオーリンズのスタジオを失ってしまった話しをして、
彼への追悼にと Ascension Day(アセンション・デイ)を弾き語りで歌っていました。やはりショックみたいですね・・・。

「お祖母ちゃんに」と一言入れて、歌ったのが日本でも有名な Veronica(ヴェロニカ)。
これはかなりキーを変えて、アレンジした曲になっているので、オリジナルのイメージはほとんど無いですね。

この日は、本ツアーでは最後の日本公演で、大阪から3日連続のステージだったせいもあってか、
コステロも少し疲れていたのかもしれません。相変わらず、凄まじい声量で若い頃の声も維持していてビックリですが、
ところどころで声がかすれたり、少し音程を外したりしていた部分もあったので、喉も疲弊していたのかもしれません。

人気曲 Everyday I Write The Book(エヴリデイ・アイ・ライト・ザ・ブック)にしても、
かなり大胆なアレンジをしていて、全く別な曲になっていたので、よ〜く聴いていないと分からないかも(苦笑)。

Shot With His Own Gun(ショット・ウィズ・ヒズ・オウン・ガン)からは、
コステロはグランド・ピアノに座って弾き語り。僕はコステロがピアノを弾いているのを、初めて見ました。
続く Accidents Will Happen(アクシデンツ・ウィル・ハプン)もかなりアレンジしたバラード・ヴァージョン。
そして、Deep Dark Truthful Mirror(ディープ・ダーク・トゥルースフル・ミラー)は間違いなく前半のハイライト。

続いては、ステージ脇の椅子に腰かけて、足を組んでフラメンコ・ギターのように弾き語り。
スゴく意外だった Beyond Belief(ビヨンド・ビリーフ)はアコースティック・ヴァージョンも結構良かったですね。

その次は、日本でも超人気の She(シー)でしたが、ピアノ弾き語りと違った印象ですが、大きな拍手。
続く Watching The Detectives(ウォッチング・ザ・ディテクティヴズ)は、エレクトリック・ギターに持ち替えて、
ノイジーなギターを炸裂させながらも、音を重ねてカオスな雰囲気に。巨大なメガホンを使って、更に遊ぶコステロ(笑)。
クラシック映画で映像を後方のテレビに映して、曲の内容とシンクロさせようとする演出も光ってましたねぇ。

そこから、コステロはステージから下がって、少しだけ休憩してから、
前座で登場したラーキン・ポー≠フ2人を従えて、今度は3人でのステージになります。

ここでは貴重な Love Field(ラヴ・フィールド)が良かったですね。
あとは、ラーキン・ポー≠フ姉ちゃんに歌わせた Vitajex(ヴィタジェックス)はなんか楽しそうにしてました。

当初の予定では21時20分頃に終演予定と入口に掲示されていたのですが、
Down On The Bottom(ダウン・オン・ザ・ボトム)で一旦、3人はステージから下がりますが、この時点で21時10分。
そのせいか、コステロはアッサリとアンコールに応じて、すぐにステージに戻ってきたので時間を気にしていたのかも。

そこからは怒涛の6曲!

ピアノ弾き語りで Shipbuilding(シップビルディング)に始まり、
続く曲でアコースティック・ギターを抱え、スタッフに「行くぞ!」と何やら合図して、なんとプラグを外しました!

なんとなんと、コステロ本人が Pump It Up(パンプ・イット・アップ)をオフマイクで歌いながら、ステージから降りてきて、
観客席の通路を練り歩いたのです! 先日のボビー・コールドウェルでも似たようなことはありましたが、
あれはサックスのサポート・ミュージシャンでしたからねぇ。まさかまさかのコステロ本人の登場でビックリしました。
もう客席総立ちで、凄まじい手拍子とリズムを刻む音で、一体何を演奏しているのか分からないぐらい(笑)。

続く (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes(レッド・シューズ)では、
途中のコーラスを客席に求めるコール&レスポンスもしっかり行われ、曲が終わったら、ラーキン・ポー≠呼びます。

で、お約束の (What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding(ピース、ラヴ・アンド・アンダースタンディング)。
「これで終わりかなぁ・・・」と思っていたら、曲の終わりにコステロがラーキン・ポー≠フ姉ちゃんに何やら声をかけ、
もう一曲 The Scarlet Tide(ザ・スカーレット・タイド)を演奏。アンコールも長かったけど、これでホントの終わり(笑)。

客席からコステロに花束が手渡しされ、ステージ上で声援に応えながら、
何故か花束をバラし、1輪ずつをラーキン・ポー≠ノ渡し、1輪だけ残し、客席に投げ込む大サービス。
で、コステロは手に持った1輪を何故か、枝の部分を咥えてニヤリ(笑)。ヤケにテンション高かったですね。

この後はマカオ、シンガポール、台北と回ってアジア・ツアーは終わりで、
また欧米に帰るみたいですけど、60歳を超えて尚、エネルギッシュでラディカルな部分を失わず、
全身全霊、全力投球でステージをこなす姿に、凄まじいまでのプロ意識を感じました。
予定よりも大幅に終了時刻が遅れ、客電が点いたのが21時45分でしたから、コステロだけでも2時間30分。
前座も入れたら3時間を超えるステージなので、ファンにはたまらないライヴでしたね。

わざわざ飛行機代をかけてでも、台風接近の東京に行きましたが、
7月に絶不調のボビー・コールドウェルを見せられただけに、その反動は大きく、コステロが神に見えました(笑)。

それにしても、コステロはあの特徴的なヴォーカルを維持する力が凄いですね。
思わず、当たり前ですが「オォ、CDと同じ声だ!」と訳の分からない感動を覚えました(笑)。
そして声もデカい!(笑) ガム噛みながら歌うのですが、よくあんだけの声量で30曲も歌えるもんです。
マイクからやや離れて歌っても、全く声が弱くならないというのも凄い。あれは当たり前ですが・・・プロです(笑)。

大盛況だったコステロ、次回は是非ともフツーにジ・インポスターズ≠ニのライヴで来てください(笑)。