エレジー(2008年アメリカ)

Elegy

まず、この映画のタイトルは『エレジー』じゃなくって、
『エロジジイ』に変えた方が良かったのでは?というほどの内容ですね(笑)。

まぁそこまで悪い出来の映画ではありませんが、
チョットやはり...部分的には、ついて行けない部分もあったかなぁ。
まぁ僕も分かんないですけどね(笑)。そりゃ老年期を迎えても、この映画のケペシュのような心境なのかも。

但し、例え心でそう思っていたとしても、
さすがに娘以上に若い娘を見つけては、何とか肉体関係に持ち込もうと、
社会的なポジションを獲得した、60歳を過ぎてまで涙ぐましい努力にでるケペシュの姿には、
どことなく物悲しさを感じてしまったのも事実で、やはり彼に感情移入できるかは大きなポイントだろう。

一見すると、上質に撮られた映画のように仕上げてはいますが、
僕はこの映画の撮影も含めて、作画的なものはそこまで良いものだとは思えなかった。

それはやはり、決定的にヒロインのコンスエラの描き方に賛同できなかっただろう。
個人的には物語の語り方として、僕はケペシュに主眼を置いて描くのではなくって、
あくまでコンスエラに主眼を置いて欲しかったし、原作に忠実なだけなのかもしれませんが、
ケペシュに主眼を置いてしまったがために、ラストなんかは完全に“お涙頂戴”状態になってしまっている。

これでは、さすがに映画の訴求力が弱くなってしまうんですよね。
ある意味、本作が当初掲げていたはずの、老年期を迎えた男性の性という奇抜なテーマに
肉薄できなかった帰結になってしまっているし、さすがに映画化した意味も無いですね。

それと、詩人ジョージを演じたデニス・ホッパーの芝居が、観ていてツラかった。
多くの映画ファンが嘆いたであろう、デニス・ホッパーは癌のため2010年に他界しました。
晩年は病気が進行し、かなり痩せ細った姿をマスコミに披露して話題となりましたが、
本作でもそんな晩年を予期させるかのような、実に生々しい芝居を披露しており、心が痛む。

まぁ老いてもプレーボーイ、ケペシュを演じたベン・キングズレーはさすがの存在感。
相変わらずの名演技ですが、60代後半になって、ここまでセクシーなのも特筆に値する。
(しかしながら、それでもケペシュが「我慢できない」と言い、若い娘を口説く姿は痛々しいが・・・)

いや、これはルックスの問題でもあると思うんですよね。
正直言って、これがジャック・ニコルソンなら許容して、観れたかもしれないんです。
確かに前述したように、ベン・キングズレーも十分にセクシーなんだけど、
強いて言えば、ベン・キングズレーは少し生々し過ぎるんですよね(←彼のファンの皆さん、ゴメンなさい)。

そう、この映画のケペシュはジャック・ニコルソンが演じるべきだったのです(笑)。

とまぁ・・・映画の本質とは異なる話しはさておき...
前述の訴求力という点では、もう少し何をどう描きたかったのか、ハッキリさせて欲しかったですね。
僕はやはりコンスエラにとって、ケペシュとの恋愛がどう捉えていて、お互いにどう影響し合ったかを描いて、
彼らの恋愛がどんなに特別なものであったかを象徴させるべきだったと思うんですよね。

原作はフィリップ・ロスの『ダイング・アニマル』。
まぁおそらくフィリップ・ロスは年老いても、若い娘との性愛に溺れる姿を描きたかったんでしょうね。
そうでなければパトリシア・クラークソン演じる中年女性の存在なんかも、説明がつきません。
でも、そうなら一つだけ注文付けさせてもらいたいのは、ラストの展開は何か違和感があるということ。

僕はやっぱり、このラストを観て、一体、この映画が何を描きたかったのか、よく分からなくなりましたね。

キャスティングは十分に素晴らしいものを用意できたのだから、
個人的にはもう少し映画の筋書き自体を、どうにかして欲しかったですね。これでは、凄く勿体ないですね。

監督のイザベル・コイシェはスペイン出身の女流監督で、
03年の『死ぬまでにしたい10のこと』なんかは、日本でもチョットした話題になった作品だ。
まぁ演出は無難な感じですが、堅実で安定した映画を撮れるというのは、大きな強みですね。
僕は彼女、決して力量やポテンシャルの低い映像作家だとは思いませんし、これから更に良くなる気がします。

ただ、やはり映画を通しての主張というものを、もう少し冷静に考えた方がいいですね。
時には、何も主張しない映画が「これは凄い映画だぁ!」と感じることもありますが、
本作なんかは、明らかに映画の主張、描きたいものをもっとハッキリさせた方がずっと良かったはずだ。

それにしても、ペネロペ・クルスはキレイだなぁ。
まぁこの映画で彼女のヌードシーンがあるのですが、それは驚くほどキレイ。
確かにケペシュが人生を狂わされるほどの恋愛だというのも、この点では納得する(笑)。

まぁ洗練された映画という印象は受ける点では、イザベル・コイシェの語り口が良かったのでしょう。
かなりアブノーマルな題材であるにも関わらず、映画の印象は極めてソフトで過剰にならない。
何でも極端な傾向に走る傾向がある昨今の映画の中では、ひじょうに珍しい部類と言えるでしょう。
洋楽で言うなれば、ロキシー・ミュージック≠フ『Avalon』(アヴァロン)みたい?(←分かりづらい)

あと、本作で描かれたことで、にわかに信じられなかったのは、
ケペシュと息子の関係で、仲が悪く、家庭の不和を迎えた理由はケペシュの浮気だったのに、
今だに若い娘にうつつを抜かすケペシュのオノロケを聞かされても、無表情という息子の心境がよく分からない。

そういう意味では、日本人的な感覚では分かりづらいのかもしれません。

(上映時間112分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 イザベル・コイシェ
製作 トム・ローゼンバーグ
    ケイリー・ルチェッシ
    アンドレ・ラマル
原作 フィリップ・ロス
脚本 ニコラス・メイヤー
撮影 ジャン=クロード・ラリュー
編集 エイミー・ダドルストン
出演 ペネロペ・クルス
    ベン・キングズレー
    デニス・ホッパー
    パトリシア・クラークソン
    ピーター・サースガード
    デボラ・ハリー
    ソニア・ベネット
    ミシェル・ハリソン
    チェラー・ホースダル