オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年アメリカ)

Edge Of Tomorrow

日本の原作を映画化したサバイバル・アクション。

しっかし、トム・クルーズも50歳超えても、何でもアリですな(笑)。
さすがにこういう映画に出演すること自体、大変な気がするんですが、それだけ若い証拠なのかな。
まぁ・・・正直言って、観ていて視覚的にも心理的にも、チョット疲れてしまう内容かなぁ。

いや、決して、つまらないというわけではなくって、
僕も映画の前半は何度も繰り返される主人公の“出撃の日”を楽しく観ていましたが、
さすがに映画の中盤に入ってくると、少々、飽きてしまいますね(苦笑)。作り手も色々と工夫してはいるのですが。

監督は今やハリウッドでは、売れっ子映画監督となったダグ・リーマン。
さすがにアクション映画の経験もあるせいか、映画の前半の戦闘シーンは悪くない出来。

しかし、この映画、肝心かなめのクライマックスがいけませんねぇ〜。
舞台をフランスに移してのストーリー展開になるのですが、どうもトーンダウン。
繰り返し“出撃の日”を描くことを止めた途端に、荒唐無稽なアクションにも限界が来てしまったかのよう。
訳の分からないエイリアンみたいな、地球を侵略するクリーチャーとの壮絶な闘いのはずが、盛り上がりません。
贅沢にもCGだって、いっぱい使っているのですが、ゴチャゴチャして、訳の分からないアクションなんですね。

これを見せられて、まるで「迫力満点のアクションだろ?」と言われても、
視覚的に整理のつかないアクションだけは、どうにも映画として収拾がついていない印象が残ります。
おそらく、ダグ・リーマンの手腕をもってすれば、もっと上手くクライマックスのアクションも描くことができたはず。

そんな壮絶な闘いの中心にいるのが、トム・クルーズなんですから、
ある意味で高齢化社会の象徴のような感じになってしまい、「頑張るなぁ〜」ぐらいの印象になってしまう。

別に彼がアクションを演じることに抵抗があるわけではない。
しかし、この映画に欠けていたのは、主人公の片腕となる存在であって、
それがヒロインのような扱いを受けたエミリー・ブラント演じるリタだというのは、チョット物足りない。
もし彼女が主人公の片腕なのであれば、もっと彼女の活躍を描いて欲しいし、主人公の助けとなって欲しい。

そうならなかった結果が、トム・クルーズの独壇場みたいな映画ということなんですね。
ですから、エミリー・ブラントを映画の清涼剤みたいな存在にしてしまったことに、問題があるように感じます。

とは言え、まるで93年の『恋はデジャ・ヴ』のように、何度も何度も“出撃の日”を繰り返し、
時間のループ現象に陥りながら、なんとかして苦境を脱しようとする発想自体は面白い。
これって、何度も何度も同じゲームをやりながら、徐々にクリアしていくRPGみたいな感覚があるんですよね。
そういう意味では、観客のゲームに興じる心理を上手く利用しているような感じで、新鮮でしたねぇ。

感覚的には実に現代的な映画という解釈はできると思います。

話の進め方がまるでゲーム感覚で、前のときは“これで”失敗して殺されてしまったから、
次からはこうやってやろうとするが、クリアしても少し先に進めば、また新たな障害にぶつかる。
そうやって、徐々に徐々に全クリアを目指す姿は、正しくゲームそのもののようで、これは逆に賛否両論かも。

まるで人生を使い捨てしているみたいとする論調も分からなくはないのですが、
ただ考えてもみれば、仮に人生をデジャ・ヴでやり直せたとしても、地道にやり直しながら、
同じシチュエーションにしていく作業は、とてつもない難儀であり、ここまでいけばある意味で感心させられます。

映画の序盤では、戦争のPRを広報戦略の一部として、
自らテレビで戦争を力説するのは得意だけど、いざ戦地に赴くことは徹底して拒否し、
強制的に戦地に送り込まれても、なんとかして回避・脱走しようとする姿を演じるトム・クルーズは上手い。

やはり、こういう姿を見ると、僕は基本的にトム・クルーズという役者は、とても上手いと思う。

ただ、彼が先天的に持っている(?)、スター性やファンサービス精神なんかが邪魔して、
彼の芝居の上手さがあまり正当に評価されていない気がするのですが、もっと評価されて然るべきだ。

そんなチキン野郎だった主人公にしたって、
何度も何度もビクビクしながら地獄のような戦場に行かされることによって、
尋常ではない恐怖を体験しながら、いつしか自らの命を捨ててでも、人道的な行動をとるようになるし、
危険を回避するべく、全ての出来事を記憶することによって、凄腕の兵士になっていくのが面白い。
(彼を馬鹿にしていた兵士たちも、思わず「アイツ、ホントに初めてなのか!?」と驚くほど・・・)

何故、日本の原作がハリウッドで映画化されたのか、
詳細はよく分かりませんが、主人公のこういった変化に魅力を感じたのかもしれませんねぇ。
まるでロボコップのように武器を装着したモービルスーツを装着するあたりも、
日本人の発想を意識した、ハリウッド製のアクションって感じ丸出しですけどね・・・。

この映画のクレジットを見るまで知りませんでしたが、
この映画の脚本にクリストファー・マックァリーも参加していたんですね。結構、豪華なスタッフです。

まぁ・・・やはりハリウッド映画にあっても、最近は特大ヒットを飛ばすことも少なくなり、
日本でも既にトム・クルーズ主演映画というだけで、客を呼べるような時代ではなくなっています。
そうなだけに、本作のように少しでも新しい風を入れた企画でなければ、通らなくなっているんでしょうね。
本作にしても、企画自体は面白いのですが、どことなく迷走している映画という印象はどうしても拭えません。

新風吹き込んだ映画ではありますが、
前述したように映画の途中で完全に失速してしまうのは残念。もう少し練って欲しかった。
ダグ・リーマンも最終的に、映像上だけの力技に頼ってしまったために、こういう結果になった気がします。

そういえば、ファウル曹長を演じたビル・パクストンも久しぶりにスクリーンで観たなぁ〜。
久々に彼を観ましたが、やはり年とりましたねぇ〜(笑)。こう思うと、自分も年とったなぁ・・・っと(苦笑)。

(上映時間113分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ダグ・リーマン
製作 アーウィン・ストフ
    トム・ラサリー
    ジェフリー・シルバー
    グレゴリー・ジェイコブズ
    ジェイソン・ホッフス
原作 桜坂 洋
脚本 クリストファー・マックァリー
    ジェズ・バターワース
    ジョン=ヘンリー・バターワース
撮影 ディオン・ビーブ
編集 ジェームズ・ハーバート
音楽 クリストフ・ベック
出演 トム・クルーズ
    エミリー・ブラント
    ビル・パクストン
    ブレンダン・グリーソン
    ジョナス・アームストロング
    トニー・ウェイ
    キック・ガリー
    フランツ・ドラメー
    ノア・テイラー 

2014年度サンディエゴ映画批評家協会賞編集賞(ディオン・ビーブ) 受賞