ドライブ・アングリー(2010年アメリカ)

Drive Angry

しっかし、ニコラス・ケイジは『ゴーストライダー』といい、こういうB級アクション好きだなぁ。
90年代後半はマネーメイキング・スターとして大スターの仲間入りを果たした俳優だっただけに、
すっかり仕事を選ばなくなったニコラス・ケイジを見て、なんだかフクザツな気持ちになる・・・(笑)。

まぁ、90年代から仕事を選ばないというより、とにかくいろんな映画に出演してましたからね、
とにかく稼がなきゃならないのか、仕事の規模に拠らず仕事をこなしていくポリシーなのかもしれません。

日本でも某パチンコ台メーカーのCMに出演したりして、
どこか親しみ易いというか、安っぽいスターという感じだったのですが、
最近は元々の彼の趣味もあってか、より仕事を選ばなくなったなぁという印象が残りますね(苦笑)。
(やはり何度観ても来日会見を装った、「アイィ ラァヴ パァァチンコォゥ!」と叫ぶCMのセンスが忘れられない・・・)

やはりゴシップにもなっていた通り、私生活でのニコラス・ケイジはトンデモない浪費家らしく、
常に金を稼ぎに仕事をこなしていかないと、いけないんでしょうね。結構、“来るもの拒まず”というタイプかも。

後にジョニー・デップと一時期結婚生活を送ることになる、
アンバー・ハードは前年の『ゾンビランド』に続いて、グログロな内容の映画に出演してますが、
本作はかなりクローズアップされる役どころで、確かにその美貌がスクリーン映えする感じだ。

元々は3D上映された映画で、映像自体は如何にも3D向けですが、
一部の爆発シーンや斧や銃弾が跳んでくるシーンの迫力を表現しているだけですので、
まぁ・・・普通に2Dで観ても、十分に楽しめる内容なのではないかと思いますがね・・・。

当時は『アバター』の世界的大ヒットから、本作のような作品でも
3D上映されるなど、3Dがブームになっていましたけど、やはりそれに見合う内容かどうか...
なんでも3D上映すれば良いということではないというのが、私の正直な本音ですね。

パトリック・ルシエの映像表現としては、より暴力的に、より感覚的にといった方向性。
さすがに殴り殴られというシーンの迫力は、音声のおかげもあって、特筆に値するものがありましたね。

主人公を追い続ける、自称FBI捜査官を演じたウィリアム・フィクトナーは
少々“狙い過ぎ”の感はありましたが、やはり水素タンクを搭載したローリーごと、
バリケードを作った警察に突っ込んでいくシーンは痛快と言うべき迫力で、本作の隠れた主役であることが分かる。
ついでに、と言わんばかりに、クライマックスで主人公を“連行”していくかのようなオイシいところを持っていきます。

ウィリアム・フィクトナーは日本でも劇場公開された規模の大きな映画に数多く出演しているのですが、
ここまで前面に出てクローズアップされた、大きな役が当たることも珍しいくらいですからね。

映画はカルト教団に娘と孫の命を奪われた主人公が、
あの世から復讐のために、現実世界に戻ってきて大暴れするという物語なのですが、
主人公が人間離れした動きができることを隠すわけでもなく、映画の序盤から超人的な部分を描いていて、
真正面からストレートに描いている点は好感が持てる。そして、アンバー・ハード演じるヒロインと
主人公が安易に恋仲に発展することを無理矢理描こうとしない点も、ある意味では意外性があって良い。
(まぁ・・・ニコラス・ケイジとアンバー・ハードの年の差も、親子ほど離れているので、その方が自然ですが)

おそらく、このカルト教団の描写はマンソン教を意識したものかと思いますが、
例えば教会でのシーンに象徴されるように、信者たちもまるでゾンビのように描いているのが印象的ですね。
そう思って観ると、教祖のような男がチャールズ・マンソンに見えてくるから、不思議なもんだ。

一風変わっているのは、死後の世界から娘や孫が殺されるのを“見せられ”、
復讐を決意するという点であり、これはこれまでの映画でありそうで無かった設定だと思う。

この映画の“狙い過ぎ”が行き過ぎたことを象徴したのが、
映画の中盤にあるミルトンらが宿泊した田舎町のモーテルで、濡れ場から銃撃戦へと発展していくシーンで、
まるで作り手が「これって、スタイリッシュだろ?」と観客に言いながら撮っているようで、どうも私はノレなかった。

パトリック・ルシエは前年にも『ブラッディ・バレンタイン』も3Dで劇場公開させており、
おそらく立体化させる映像表現にこだわってアプローチを続けたいディレクターなんでしょうね。
ただ、前述した通り、「何でも3Dにすれば良い」ということではないと思いますので、もっと“引き出し”を作るべきですね。

頭蓋骨を杯にしたり、視覚的にも悪趣味な感覚が満載な作品で、この辺も賛否両論でしょう。
まぁ、“そういう映画”なんで、これはこれで仕方ないというか、それが作り手のやりたいことなんでしょうけど、
この悪趣味な世界観も、今一つ映画の武器にできていないというか、メリハリがないからかインパクトに欠けますね。

もう少し映画に緩急がついていたら、きっと映画にメリハリが生まれて、
もっとグロい描写も、バイオレンスもインパクトをもって表現できたのではないかと思うんですよね。
本作の失敗は、映画の最初から最後まで、ずっとこの調子だったことで、映画にメリハリが生まれませんでしたね。

この辺はパトリック・ルシエがコントロールすべき点だったと、今後の創作活動に役立てて欲しいですね。

一見すると、カー・チェイスを主体とした映画っぽい触れ込みだったのですが、
いざ本編はそんな中身ではないので、車をメインに据えた映画と期待したら、大きな肩透かしを喰らいます。
これは原題含めたタイトルも悪いですよね。車ではなく、要するに“ドライヴ感”ある映画にしたかったのでしょうが。

それは編集の問題でもあると思いますが、音楽をガンガン流せば誤魔化せるというわけでもなく、
私には“ドライヴ感”は全く感じられませんでしたね。ただ単に、自分の感性に合わなかっただけだとは思いますがね。

いずれにしても、B級映画が好きな人にしかオススメできない映画だ。
同じニコラス・ケイジ主演の映画であれば、『ウィッカーマン』や『ゴーストライダー』あたりが好きな人はノレるでしょう。

(上映時間104分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

日本公開時[R−15+]

監督 パトリック・ルシエ
製作 レネ・ベッソン
   マイケル・デ・ルカ
脚本 トッド・ファーマー
   パトリック・ルシエ
撮影 ブライアン・ピアソン
編集 パトリック・ルシエ
   デヴィン・C・ルシエ
音楽 マイケル・ワンドマッチャー
出演 ニコラス・ケイジ
   アンバー・ハード
   ウィリアム・フィクトナー
   ビリー・バーク
   シャーロット・ロス
   デビッド・モース
   クリスタ・キャンベル
   トム・アトキンス
   ケイティ・ミクソン
   ジャック・マクギー
   トッド・ファーマー

2010年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(ニコラス・ケイジ) ノミネート