サウンド・オブ・サイレンス(2001年アメリカ)

Don't Say A Word

PTSDなど様々な精神疾患を抱え、時折、凶暴な振る舞いを見せる少女から秘密の番号を聞き出すよう、
誘拐犯から命じられた有能な精神科医ネイサンが体験する恐怖を描いた戦慄のサスペンス映画。

監督は『コレクター』のゲイリー・フレダーで、主演はベテランのマイケル・ダグラスだ。

ハッキリ言って、『コレクター』の出来はヒドかったが、今回はかなりマシな出来になっていて安心しました。
どこが飛躍的に良くなったかを指摘するのは難しいのですが、まずは映画の雰囲気作りをキチッとしているのは
大きな進歩だったと思いますね。『コレクター』にはこのようなバックグラウンドがまったくありませんでした。
この映画では感謝祭前日という、本来はハッピーである日に悲劇が起こるという明暗を敢えて対象させながら、
上手くサスペンス劇を盛り上げていきます。この辺の戦略は上手いですね。

まぁ映画の脚本自体は、決して褒められたものではないと思いますが、
一方で謎解き合戦に陥りがちな、この手のサスペンス映画を上手く洗練された作品に昇華させている。

具体的にはPTSDを抱えたエリザベスを演じたブリタニー・マーフィの不思議な存在感だろう。
彼女の好演があったからこそ、映画がギリギリのラインで救われたという感も無くはありませんしね。
どことなく『17歳のカルテ』のアンジェリーナ・ジョリーを想起させられましたが、
強烈なまでの存在感というほどでもなく、上手く映画に調和していて良い感じだと思いましたね。

まぁ...そういえば『17歳のカルテ』にも彼女は出演していましたね。

誘拐グループがどこまで鮮やかな手口を使ったのかは知りませんが、
ある意味では家の主に気づかれぬように家中に監視カメラを仕掛け、闇夜にカギのかかった部屋に侵入し、
まんまと隣の部屋で眠る娘を誘拐できてしまうというのは、凄いですね(笑)。

そういう意味では、悪く言えば本作はご都合主義のサスペンス映画なのです。
まぁただ許しがたいほどのご都合主義というほどではなく、まずまず自然な流れとして見せれていたと思います。

ちなみにタイトルになっている『サウンド・オブ・サイレンス』と言えば、団塊の世代の方々なら、
おそらく真っ先にサイモン&ガーファンクル≠フ名曲『Sound Of Silence』(サウンド・オブ・サイレンス)を
思い出されるかとは思いますが、この映画は一切、あの曲と関係ありません。

そのため、何故にこのような邦題が付けられたのか、僕にはサッパリよく分かりません。

ともあれ、何か関係あるのかと勘違いされ、意外な観客の誕生を配給会社は期待したのかもしれませんし、
駄作と呼ぶほど悪い出来ではないため、ひょっとしたら鑑賞される良いキッカケなのかもしれません(苦笑)。
まぁ普通に考えれば、この映画が日本でヒットする可能性って、そう高いとは思えないですからねぇ。。。

ただこの映画は時間軸をもっと上手く使えていれば、もっと面白い映画になっていたでしょうね。
いかんせんタイムリミットが決まられた攻防なのに、時間的制約という感覚が希薄なのです。
これがもっと上手く使えていれば、もっと緊迫した内容になっていたはずで、
サスペンスとして盛り上がったと思いますね。この辺がディレクターの力量の違いですかね。

それと映画の中盤まではまずまずの運びだったのに、
クライマックスの墓場での誘拐犯との対決シーンがあまりに大雑把で興冷めしましたね。
この辺のまとめ方のマズさは、致命傷ともなりかねないので、もう少し慎重に撮って欲しいものです。

結局、この映画の場合もこのクライマックスでの対決シーンがネックですね。
これが収まり悪く終わってしまったために、随分と中途半端な映画で終わってしまっています。
ゲイリー・フレダーがヒットメーカーになるためには、こういった点から修正しなきゃダメですね。
主演のマイケル・ダグラスもこの映画のプロダクションに参加していなかったのでしょうか?
主演作の精査には定評があるマイケル・ダグラスですから、これだけ規模の大きな作品でしたら、
彼自身がプロデューサーとして映画の企画に関わっていたら、もっと変わっていたかもしれませんね。

マイケル・ダグラスは最近でも『フェイス/オフ』や『レインメーカー』などの製作に携わっており、
プロデューサーとしての手腕の高さはハリウッドでも評価が高いですからねぇ。

このクライマックスはもっとサスペンス映画らしく、緊張感のあるスリラー映画っぽく描いて欲しかったなぁ。
まぁハッピーエンドでいいとは思うのですが、それにしても平凡なアクション映画のようになってしまうのは、
どうしてもいただけませんね。個人的にはあまりに芸のないオチだなと思ってしまいました。

どうでもいい話しだけど、ネイサンの妻を演じてた女優さんを何処かで観たことがあるなと思ってたら、
なんと『007/ゴールデン・アイ』でセクシーな悪女を演じてたファムケ・ヤンセンでした。
どことなく印象が違ったのがビックリしましたが、ずっとベッドで寝てるという設定だったので残念でしたが(笑)、
映画にエンジンがかかり出すと、誘拐グループの一人を果敢にも退治するという快挙(笑)。

それから印象的だったのは女性刑事を演じたジェニファー・エスポジートという女優さん。
あまり知らなかった女優さんではありましたが、これから活躍の場を広げていけそうなラテン系の女性です。
こういう脇役のキャラクターをキチッと演じたというのは、ひじょうに大きな功績です。

そういう意味では、本作は女性の力で持っている映画なのかもしれませんね。

(上映時間114分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ゲイリー・フレダー
製作 アーノン・ミルチャン
    アーノルド・コペルソン
    アン・コペルソン
原作 アンドリュー・クラヴァン
脚本 アンソニー・ペッカム
    パトリック・スミス・ケリー
撮影 アミール・M・モクリ
音楽 マーク・アイシャム
    グレーム・レヴェル
出演 マイケル・ダグラス
    ショーン・ビーン
    ブリタニー・マーフィ
    スカイ・マッコール・バートシアク
    ファムケ・ヤンセン
    ジェニファー・エスポジート
    ガイ・トーリー
    オリバー・プラット
    ショーン・ドイル