ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ(1988年アメリカ)

Dirty Rotten Scoundrels

今となっては、半分、忘れ去られてしまったような映画の扱いを受けていますが、
これはホントに良く出来たコメディ映画で、自信を持ってオススメできる傑作と言っていいです。

マイケル・ケインにスティーブ・マーティンというキャスティングの時点で“オイシイ”のですが、
2人の役者の力だけに頼らず、これはフランク・オズが見事にコントロールしたからこそ、成し得た映画です。

映画はコンゲーム(騙し合い)を描いています。
イタリアにも近い、南フランスの有名なリゾート地、コートダジュールでジゴロとして、
金持ち婦人からお金を騙し取って、リッチな生活を送るローレンスが偶然、汽車の中で出会った、
胡散臭いアメリカ人男性フレディがコートダジュールで小銭稼ぎを企んでいることを知り、
ローレンスはフレディをコートダジュールに入れないように、事前に手を回します。

しかし、それでもコートダジュールに入ってきたフレディ。
この辺は80年代は絶好調だったスティーブ・マーティンの持ち味が良く出ていますね(笑)。

フレディはローレンスがベテランジゴロだと知り、弟子入りを志願し、
ローレンスはフレディを都合良く使って、さっさとコートダジュールから追い出そうと画策しますが、
お互いになかなか上手くいきません。そんな中、ローレンスはとある一人の女性ジャネットに目を付け、
彼女から5万ドルを受け取った方がコートダジュールに残れるというゲームを提案します。

ある意味で、これはドンデン返し系の映画なのですが、
僕も最初に観たときは、無理のない範囲での予想外の結末になって、驚かされましたね。

個人的にはフランク・オズって、ここまで上手いディレクターだったとは知らなくって、
ホントに職人が作るコメディ映画に仕上がっていて、おそらく現時点での彼の最高傑作でしょう。
ストーリーの面白さは言わずもがな、ロケーションもキャスティングも抜群の素晴らしさで、
ここまでいろいろな要素に恵まれた作品というのも、そうそう簡単に生まれてくるものではありません。

また、ローレンスを演じたマイケル・ケインが良いですね。
西欧訛り丸出しの英語を操っているのですが、風貌は英国紳士か、どこかの国の皇族のように高貴。
さすがはジゴロと観客に思わせるだけの、実に見事な雰囲気作りができている。

マイケル・ケインはこの頃、劇場向け映画、TV用映画問わず、
そして映画の規模問わず、実に数多くの映画に出演していたことを揶揄されたりもしていましたが、
こういう映画でキチッと正確に仕事してきているのが、また嬉しいですね。貴重な名優の一人です。

まぁ、元々は64年の『寝室ものがたり』のリメークなのですが、
オリジナルに忠実なリメークとしながらも、上手く主演2人の持ち味を活かした作品に仕上げており、
オリジナルの良さを上手く残しながら、リメークの独自性を採り入れた好例だと思いますね。
(ちなみに『寝室ものがたり』では、マーロン・ブランドとデビッド・ニーブンのコンビ!)

劇中、ローレンスとフレディはあの手この手で、お互いに足を引っ張り合いますが、
特に面白かったのは、映画の中盤でフレディが軍人たちにローレンスに復讐を依頼するエピソード。

フレディは完璧な舞台が整ったと思って、ジャネットの部屋へ向かいますが、
そこで彼がまた予想だにしない状況になるという展開で、そのときに見せるスティーブ・マーティンの
表情がまた絶妙で、ある種の返り討ちに遭うという構図の面白さが見事に映えていますね。
この辺の各エピソードの見せ方がなんとも上手くって、これがディレクターの上手さだと思いますね。

おそらく撮影前は、マイケル・ケインとスティーブ・マーティンの組み合わせに、
疑問を感じる人も多かったのではないかと思うのですが、これは結果的に大成功でしたね。

前述したように、80年代は絶好調でひたすら大きな演技で笑いをとろうとするスティーブ・マーティンと、
英国紳士の風貌しながらも、どこかに胡散臭さを残すマイケル・ケインの調和がなんとも絶妙で、
最近はこういう映画がホントに減りましたねぇ。対極する存在ですが、この2人のコンビネーションは抜群でした。

この映画の劇場予告編も面白くって、
映画の本編では使われなかったシーンなんですが、コートダジュールの海沿いを優雅に散策する、
ローレンスとフレディが映り、海辺にいた老婆を海に落とすという不謹慎なものなんですが、
これは確かに映画を見たくさせる予告編なんですね。とっても上手く出来ていたと思います。

贅沢にもこの映画のカメラはミヒャエル・バルハウスによるもの。

さすがに南フランスのリゾート地が舞台なだけに、
ロケーションも抜群なのですが、どことなく気品ある画面作りになっているのも良いですね。
この映画の雰囲気を助長する要素として、カメラが果たすべき役割はとても大きかったものと思います。

個人的には、80年代は数多くのコメディ映画が製作されており、
その中には実に秀でた作品も多いことから、こういう作品にもっとスポットライトを当てて欲しい。
勿論、全てではないけれども、その中には今も尚、その輝きを失っていない作品は多くあると思うんですよね。

映画のテンポが凄く良いせいか、内容の割りには複数回の鑑賞に堪えるのが良いですね。
ドンデン返しが連続する映画ではあるのですが、オチが分かっていても、楽しみ方があるのが素晴らしい。
やっぱり優れた映画というのは、複数回の鑑賞に堪える作品だと思うんですよね。

これを観ると、コートダジュールに行きたくなることは間違いありません。
そんな気分にさせる、観光気分を高揚させられる映画でもありますね。

抜群のロケーションと、カメラが上手く調和した結果だと思いますね。
そんなリゾート地であることを逆手にとったかのような、クライマックスの痛快さは印象的で、
この“決まり具合”は、フランク・オズも快心の出来だったと言ってもいいでしょう。

ちなみに幾度となく、本作の3回目の映画化の噂が出るんですが、未だ実現しません。
21世紀という時代性に合う内容かは微妙ですが、製作されればそこそこヒットしそうな気もしますがね・・・。

(上映時間110分)

私の採点★★★★★★★★★★〜10点

監督 フランク・オズ
製作 バーナード・ウィリアムズ
脚本 デイル・ローナー
    スタンリー・シャピロ
    ポール・ヘニング
撮影 ミヒャエル・バルハウス
音楽 マイルズ・グッドマン
出演 スティーブ・マーティン
    マイケル・ケイン
    グレン・ヘドリー
    アントン・ロジャース
    バーバラ・ハリス
    イアン・マクディアミッド