ディープ・ブルー(1999年アメリカ)
Deep Blue Sea
間違っても、映画史に残る大傑作なんてわけはないが...(笑)
これはこれで従来のハリウッド映画のセオリーのほとんどを完全に無視した(笑)、
おそらくラッシュ(試写会)のときに、大きな波紋を呼んだであろう、海洋パニック・サスペンス。
監督は『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリンで、
いつも規模の大きなダイナミックなアクション映画を専門に創作活動を展開しておりますが、
本作では随分と思い切って、多くの観客の予想を良い意味で裏切るという、
これまでの映画界の常識の多くを打ち破るという、チャレンジ精神旺盛な映画に仕上げてくれております。
まぁ・・・詳細は「観たら分かる」としか言いようがないのですが(笑)、
この映画の登場人物の扱いに関しては、映画の前半から後半にかけて、予想を裏切られっぱなし。
特に映画のクライマックスの殺戮マシーンと化した凶暴化したサメとの対決も、かなり予想外でしたねぇ。
まぁ予想外のストーリー展開だったからという理由一つだけで、
その映画の評価が高くなるというほど、甘くはないのですが、映画の印象が強いのは確か。
さすがに他作品との差別化について、この映画の作り手も強く意識していたのではないかと思います。
映画は海洋上に建設された、巨大海洋研究施設を舞台に
そこで飼育されていた遺伝子操作された殺戮マシーン化した凶暴な3匹のサメが、
脱走を繰り返していただけに、この研究施設に投資していた大会社の経営者を連れて来て、
サメの脳からアルツハイマー病の特効薬開発に役立つと目論むタンパク質を含む液体を抽出する、
パフォーマンスをした女性研究者はじめとするチーム数名が、実験の最中で凶暴化したサメに襲撃され、
次から次へと襲いかかられ、研究施設ごと海底に沈みながらも、なんとか生き抜こうとする姿を描きます。
また、サフロン・バロウズ演じるヒロイン、スーザンのキャラクターが強烈。
どうやら父親をアルツハイマー病で亡くしているという設定らしく、父親の喪失が彼女にとって、
研究に打ち込む大きな動機になっているらしいのですが、何がなんでも研究の成果を生かそうとする執念が
ある意味で観客の反感をかうかもしれないのですが、こういうヒロインって、ある意味で珍しいですねぇ(笑)。
サフロン・バロウズって、あまり日本ではメジャーな女優さんとは言えませんが、
本作では狭い空間内で人食い鮫に追い込また挙句、下着姿になって、部屋の配線を鮫に食わせるという、
ある意味でサービスしてくれるシーンがあったりして、これはこれでレニー・ハーリンの映画っぽい発想だ(笑)。
本作が日本でもそこそこヒットしてくれたおかげで、彼女の仕事の幅も広がるなぁと思ったのですが、
どうやら本作の後もマイペースな仕事のペースを守っているらしく、慎重な性格なのかもしれませんねぇ。
この映画でビックリしたのは、日本で劇場公開されたときのテレビCMで、
物語の結構、重要であるサミュエル・L・ジャクソンが「みんなで助け合うんだ!」と演説するシーンを
全てCMの最後に使ってしまったところ。CMのプロデューサーが何を考えて、ああいう編集したのか
僕には分かりませんが、ああいう重要なシーンをCMで使ってしまえる勇気は、ある意味で凄いと思う(笑)。
レニー・ハーリンの映画が如何にメチャクチャなのか、
如何に従来のハリウッド映画のセオリーをブチ壊しているのかを象徴している展開なんですが、
そんな一番、“美味しい”ところをアッサリと、こういうCMで使ったというのは、おそらく前例が無いと思う。
かつて『JAWS/ジョーズ』のようなサメをモチーフにした、
パニック映画は何本かありましたが、本作のメチャクチャ度合いはホントに高いんですよね。
まるでサバイバル・ゲームのように片っ端から登場人物を殺していき、
海洋上にあった研究施設は片っ端からブチ壊す破壊行為に出て、ハリウッド映画の悪習を象徴するかのように
レニー・ハーリンは破壊を楽しむかのような開き直りっぷりなんですが、僕はこういうの賛同できないのですが、
さすがにここまで開き直られると、逆に気持ちいいぐらいって感じはあるんですよね(苦笑)。
但し、デザイン的にはおそらく賛否が分かれるレヴェルだろう。
特に殺戮マシーンと化したサメが次から次へと襲いかかってくるシーンに関しては、
まるでアニメーションのように映ってしまうせいか、どうも臨場感に希薄なのが気になるかなぁ。
やはりサメを活かした映画であるならば、サメの姿だけではなく、泳ぐ水影を利用して欲しかった。
正直、『JAWS/ジョーズ』シリーズの革新的だったのは、水影を上手く利用できたところだったと思うんですよね。
レニー・ハーリンの持ち味とも言える、破天荒さが好きな人には是非ともオススメしたい作品ですね。
あと、ゲーム感覚で展開する映画が好きな人にも十分に楽しめる作品だとは思うのですが、
あくまで映画の出来としては及第点レヴェルという感じで、素晴らしいエンターテイメントというほどではありません。
しかし、90年代はハリウッドのプロダクションもレニー・ハーリンの破天荒さに
寛大だったのですが、21世紀に入るとさすがにウケなくなったのか、04年の『エクソシスト ビギニング』以降は
あまり印象的な仕事がなく、規模の大きな企画も任されなくなってしまいましたねぇ。
個人的にはレニー・ハーリンのような映像作家は苦手ではあるのですが、最近はこういう豪快な映像作家が
ほとんどいなくなってしまったせいか、なんだか寂しいですねぇ(笑)...と贅沢な悩みがあります。
LL・クール・Jが出演していることでも話題となりましたが、
彼がクライマックスにサメに襲撃されるシーンにも驚きましたが、あれはもう少し真面目に撮って欲しいですね(笑)。
さすがに、あれだけ食いつかれても、まるでサーフィンに乗ってるかのように見えるってのは、無理がある(笑)。
まぁ・・・前述したように、あまりにセオリーを無視した展開なだけに、
これはおそらく映画会社でも賛否両論だったでしょうね。でも、こういうのが発表されるってことは、
それだけ映画界が活発だったことの裏返しで、元気がない時代はこういう作品が誕生しないものです。
それにしても...サミュエル・L・ジャクソンはよくこの役を引き受けたなぁ〜(笑)。
(上映時間105分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 レニー・ハーリン
製作 アキヴァ・ゴールズマン
ロバート・コスバーグ
トニー・ルドウィグ
アラン・リッシュ
脚本 ダンカン・ケネディ
ウェイン・パワーズ
ドナ・パワーズ
撮影 スティーブン・E・ウィンドン
音楽 トレバー・ラビン
出演 トーマス・ジェーン
サフロン・バロウズ
サミュエル・L・ジャクソン
LL・クール・J
ジャクリーン・マッケンジー
マイケル・ラパポート
ステラン・スカルスゲールド
アイダ・タートゥーロ