デス・レース(2008年アメリカ)

Death Race

75年のカルト映画『デス・レース2000』の現代版リメーク作なのですが、
ド派手に作られた映画ではありますが、どこまで真剣に作られたのか、よく分かんない作品ですね(苦笑)。

そもそもこの映画はトム・クルーズ主演で製作される予定だったとの噂もあり、
今回もオリジナルのプロデューサーだったロジャー・コーマンがクレジットされていたり、
製作決定から約3年強もの月日が経過していたりと、色々と紆余曲折があった映画です。

ゲーム感覚で次から次へと登場人物が死んでいったり、ド派手な爆破シーンがあったりと、
とにかく夏の大花火大会のような感覚で、とにかく賑やかな映画だ。

残酷なバイオレンスや激しいカー・チェイスをスピード感溢れる映像で構成しており、
この映画を撮ったポール・W・S・アンダーソンの狙い通りの内容なのでしょうね。
以前、彼が撮った『バイオハザード』シリーズと本作の感覚はとにかくよく似ております。
何となくスクリーンに映っている映像を観るに、ゲーセンに来たような感覚になるのが難ではありますが、
僕はこれはこれで、作り手が苦労した賜物なのだろうと思います。

ただ、やっぱり映画らしさが形骸化し、こういった映像感覚が氾濫するのは受け入れられない。
確かに感覚的に派手さを感じさせるのには効果的だが、これは映画じゃない、ゲームだと思う。
こういう映画が幅を利かせる時代になってしまったのは、なんとも寂しいと思うのです。

映画の主人公エイムズは妻殺しの濡れ衣を着せられ、民間の刑務所に収容された服役囚。
刑務所長に言われるがままに、殺人レース“デス・レース”に参加させられ、
実際には死亡してしまった人気レーサー、フランケンシュタインの代役を演じさせられる。
まぁこの手の映画としてはありがちな強引な条件付けから映画は動き出し、
とにかく目まぐるしくストーリーは進行していきます。この強引さは異常ですね(笑)。

異様なまでに残酷で、意図的な殺人さえも容認されるレース内容は激しさを増し、
レース参加者は次から次へと殺されてしまいます。この展開は『ローラーボール』みたい。

主演のジェイソン・ステイサムは最近、ハリウッドでは売れっ子のアクション・スターですが、
この映画でも彼のタフネスぶりが十分に活かされている。紅一点的な“華”が女優陣にないのは残念だけど、
それを補っても余りある存在感の強さと言っても、良いかもしれません。

と、ここまでは良かったとは思うけど、
何処まで本作の作り手が真剣にこの企画に取り組んでいたのかは、チョット疑問(笑)。

僕は映画の最後のテロップを読んで、思わず失笑してしまいましたよ。
散々、ド派手に映像効果使って、爆破シーンや残酷なシーンを撮ったのに、

●この映画のカー・チェイスはプロのスタントを使っています●
●安全性にも十分に配慮して撮られたものです●
●くれぐれもマネをしないように●

って、オイオイ!(笑)
「今更、それはないでしょ」とツッコミの一つでも入れたくなるテロップが出現。
思わず、このテロップも作り手の冗談なのかと思ってしまいましたが、
カー・チェイスよりもこの映画の不道徳感を観客に警告した方が良かったのではないでしょうか?

それと併せて言えば、映画の冒頭のテロップにも笑ってしまいそうになった。

●2012年、アメリカ経済は最悪の状態に陥り、失業者が急増した●

って、オイオイ!(笑)
「これまた何かの皮肉か」とツッコミの一つでも入れたくなるテロップが出現。
これ以上、アメリカ経済が悪化したら、世界経済はどうなるんだよと更に強い投げかけをしたくなること請け合い。

全ての鍵を握る悪の親玉の刑務所長として、名女優ジョアン・アレンがお付き合い。
何故に彼女がこの類いの映画に出演する気になったのか、よく分かりませんが、
『ザ・コンテンダー』で初の女性大統領を目指していただけあって、貫禄の存在感。

しかし、肝心かなめの主人公のガイド役となる女性キャラの存在感が弱く、
映画として“華”に欠けましたね。やはりこの手の映画のヒロインは輝かなければなりません。

まぁオリジナルの『デス・レース2000年』はカルトな映画がブームだった
70年代という時代だからこそ、大衆に受け入れられた作品だったんですよね。
それをいくら現代風に焼き直しても、所詮はカルトな題材の域を出ていないと思います。
本作のように無理にメジャー映画の土台に乗せようとすると、かなりの違和感を感じずにはいられないと思う。

やっぱ、ロジャー・コーマンの企画なんだから、もっと冒険して欲しかったなぁ。
真の意味でB級カルトな内容の映画にして欲しいし、低予算で映画を完成させて欲しかった。

オリジナルがヒットした意味を、よく理解しないで撮るから、こういう風になってしまうのです。

(上映時間110分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[PG−12]

監督 ポール・W・S・アンダーソン
製作 ポール・W・S・アンダーソン
    ポーラ・ワグナー
    ジェレミー・ボルト
原案 ポール・W・S・アンダーソン
脚本 ポール・W・S・アンダーソン
撮影 スコット・キーヴァン
編集 ニーヴン・ハウィー
音楽 ポール・ハスリンジャー
出演 ジェイソン・ステイサム
    タイリース・ギブソン
    イアン・マクシェーン
    ナタリー・マルティネス
    ジョアン・アレン
    マックス・ライアン