カーリー・スー(1991年アメリカ)

Curly Sue

実質的なホームレスで“当たり屋”の男と少女。
そんな2人にカモにされた冷徹だった女性弁護士が2人を助ける姿を描いたコメディ映画。

80年代を代表するヒットメーカー、ジョン・ヒューズが本作を最後に裏方へと回ってしまったのですが、
別に本作は失敗作ではないと思うし、むしろ安心して楽しめる良質な作品と言ってもいいと思う。
こういうタイプの映画をいとも簡単に発表してしまうハリウッドの懐って、ホントに深いですね。

主演は名コメディアン、ジョン・ベルーシの実弟であるジェームズ・ベルーシで、
80年代はそこそこ映画に出演してましたけど、本作以降はあんまりスクリーンで見なくなったなぁ。

そしてタイトルにもなっている、カーリー・スーを演じたアリサン・ポーターがとにかくカワイイ。
この映画、その魅力は全てのこの娘(こ)に凝縮されていると言ってもいい。
なんかチョットだけ調べたら、この娘(こ)、本作以降、ほとんど芸能活動してないみたいだけど、
実に勿体ないですねぇ〜、これだけスクリーンで輝けるだけの魅力があるのに。
極端に言えば、ジョン・ヒューズにとっても嬉しい誤算だったと思いますよ。
おそらく映画初出演の彼女が、ここまで役にハマるとは思ってもいなかったことでしょう。
(まぁひょっとたら私生活で何かあったのかもしれませんから、あまり大きなことは言えないけど・・・)

まぁ・・・この娘(こ)のおかげで、映画がひじょうに魅力的なものに昇華しているのも事実ですからね。

カモにされてしまう女性弁護士の恋人の描き方があまりに類型的過ぎて、
チョット映画として芸が無いのが残念ですけど、それでもストーリー展開上、避けては通れなかったでしょう。
まぁそんな役をもホントに嫌味ったらしく見事に演じ切った役者さんも凄いのですが...(笑)。

とは言え、"当たり屋”のサクセスを描くというのは、正直言って、反感をかい易いかな(苦笑)。
まぁ僕も車を今は日常的に運転するし、”当たり屋”のような存在は倫理的に許せない。
けど・・・まぁ...この映画で描かれる2人は、なんだか憎めないから困ったものです(苦笑)。
良く解釈すれば、それだけこの2人を上手く描けているということだと思うんですよね。
そういう意味では、作り手の意図が映画を成功へと導いたと言っても過言ではないと思いますね。

ただ、この映画がとても大切なことを描いているのは、
ジェームズ・ベルーシ演じるビルが変わろうと努力して、職業を求めて外へと出る点ですね。
人は例え、変化を求めていたとしても、その変化を受け入れること自体は凄く難しいことだと思うのです。

映画のラストでカーリーも学校へと通うことになります。
ここで面白いのは見送りに来たビルもグレイも、2人してカーリーのキスを待っていたら、
カーリーが呆れた顔して、「みんなが見てるから」と皮肉っぽく言うシーンで、何だか微笑ましかったですね。
こういうチョット細かなとこまで気が配られている、可愛らしい映画なんですよね。
そのせいか、本作に関しては余計に愛着を感じちゃいましたね。

ただ、この映画を観ていて気になったのは、
ジェームズ・ベルーシ演じるビルの人間像がイマイチ分からない点である。
確かに前述したように、映画の後半でカーリーたちのためにもと、変わるよう努力します。

確かに彼は元から、人の好いホームレスで少なからずとも知恵を持っているようである。
ただ、どうせなら映画として、バーでたまたま知り合った女性から「この子をヨロシク」と言われて、
半ば無理矢理押し付けられたカーリーを連れ添って、長年に渡って、彼女の面倒をみることになる過程を
短時間でもいいから描くべきだったと思いますね。そうすれば、彼のキャラクターはもっと明確になったはずです。

まぁ子供を主人公としたファミリー映画って、数多くあるんだけれども、
本作はその中でも比較的、真っ当に作られた作品と言ってもいいと思いますね。

ジョン・ヒューズは映画監督としてヒットメーカーだった80年代も、
監督作の多くは青春映画であり、本作のようなタイプの映画を自らメガホンと取ったことは珍しいですね。
それでもこれだけの出来になるのですから、僕はこういうところにハリウッドの底力を感じますね。

当時は『ホーム・アローン』シリーズなど、ファミリー映画は何本か発表されていましたが、
その中でも本作は日本であまり大きな注目を浴びずに、今や忘れかけた作品と言っていいと思いますね。
まぁ傑作とは言わずとも、僕は勿体ないと思いますね。これだけ可愛らしい映画なのに。

映画の中にも登場してきますが、朝晩の冷え込みが厳しいシカゴの街で、
コートを脱いでゆったりと暖かい空間と優雅な食事が約束されているホテルのレストランが、
ここまで羨ましく思え、ビルとカーリーを入れてやりたいと思わせられるのが、何だか切ないですね。

北海道も似たようなシチュエーションがあるだけに、何だかいろんな意味で身に染みるシーンです。

ただ・・・正直、テレビの深夜放送を観終わったときに、大爆音で国家が流れ、
それに合わせて大声で国家を歌うシーン、映画としては悪くないシーンだとは思う一方で、
現実にあんなことする女の子がいたら、チョット"引いちゃう”なぁ(笑)。。。

(上映時間101分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ジョン・ヒューズ
製作 ジョン・ヒューズ
脚本 ジョン・ヒューズ
撮影 ジェフリー・キンボール
音楽 ジョルジュ・ドルドュー
出演 ジェームズ・ベルーシ
    アリサン・ポーター
    ケリー・リンチ
    ジョン・ゲッツ
    フレッド・ダルトン・トンプソン
    キャメロン・ソア
    ジョン・アシュトン
    スティーブン・カレル