コップ・アウト/刑事(デカ)した奴ら(2010年アメリカ)
Cop Out
過去の刑事映画のパロディを交えながら、
麻薬犯罪を目論むギャングを摘発しようと奮闘する刑事コンビを描いたアクション・コメディ。
アクション・スターとしてはベテランの域に達したブルース・ウィリスですが、
やはり、もう派手なアクション・シーンをこなすことは困難なのか、もうそこまで体をはってません。
それでも、頑固なベテラン刑事という設定で存在感を出せる貫禄はさすがとしか言いようがない。
けど、映画の設定として、別れた妻との愛する娘の結婚式の費用を捻出するために、
泣く泣く貴重なベースボール・カードを売りに行ったものの、たまたま強盗の襲撃に遭って、
自身の銃を奪われたことから、それを奪い返しに行ったところと、麻薬犯罪を目論むにギャングにつながる、
というのがどこか情けないというか、まぁ・・・コメディ映画だから仕方ないけど、もう一捻り欲しいですね。
映画のジャケットから言っても、もう少し派手なアクション・シーンがある内容を期待してたんだけど、
予想外なほどにアクション・シーンは控え目で、ブルース・ウィリスもやはり年とったなぁ〜って印象。
映画の前半に、主人公が娘の結婚式の費用について、
元妻の再婚相手から、しこたま嫌味を言われるシーンがあるのですが、
これはお互い様とも言える部分はあるのですが、ブルース・ウィリスのいつものキャラなら
嫌味を言った再婚相手のイヤな奴を、コテンパンにやっつけるところを、感情を抑えたあたりに成長を感じる(笑)。
監督は『クラークス』や『チェイシング・エイミー』のケビン・スミスで、
初めての刑事映画に挑戦したというわけですが、そこまで派手さはないものの、
それなりにアクション・シーンで見せ場を作れており、ブルース・ウィリスも上手く使っている。
相手役のトレイシー・モーガンはテレビを中心に活躍するコメディアンで、
映画の冒頭の取調室で、映画のパロディを次から次へと繰り出して、なんとか情報を聞き出そうとします。
取調室の向こう側にいる、ブルース・ウィリス演じる主人公に何の映画か当てさせるように、
四苦八苦しながらネタを繰り出していきますが、これは日本人には分かりづらいギャグかもしれません。
そうとうな映画好きでなければ、付いて行きにくいギャグの連続で、
こういうテンションにノレれば、おそらくこの映画はしっかりと楽しめるかと思います。
個人的にはトレイシー・モーガン演じるホッジス刑事で面白かったのは、
次から次へと繰り出す映画のパロディではなく、自身も窮地に追いやられ、
局面的にも緊張感ある捜査の途中であるというのに、妻の不倫を疑って仕掛けた監視カメラを持って来て、
いざ観ようとするも勇気が出ずに主人公に見てもらったり、その後も気になって仕方がないというエピソードですね。
この映画の良いところは、映画のテンポがとても良いというところと感じますが、
このリズムはトレイシー・モーガンのおかげでしょうが、ケビン・スミスの演出・編集も良かったのでしょう。
ただ、コメディ映画としては、もっと笑わせて欲しかったかなぁ。
おそらく作り手が強く意識していたであろう、『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズのエディ・マーフィのような
カリスマ性は本作からは感じられず、どこか映画の方向性も含めて、どこかで観たような映画に観えてしまう。
もう少し、印象的なバイプレイヤーを立てるなどして、もっと映画を面白くできたとは思うんですよねぇ。
そういう意味では、もっと脇役キャラクターを大切にして欲しかったですねぇ。
主人公コンビのことを疑う同僚刑事2人が少し大きな扱いで描かれますが、
この2人もケビン・ポラックのロバート・デ・ニーロの顔真似が少し面白かったぐらいで、
描かれ方としては、やはり中途半端。もっとコメディ的な見せ場を作れるキャラだっただけに、実に勿体ない。
80年代の刑事映画が好きなら、そこそこ作り手のオマージュの狙いが分かるかもしれません。
『ビバリーヒルズ・コップ』はもとより、『リーサル・ウェポン』シリーズや『シカゴ・コネクション/夢みて走れ』とか、
80年代後半から流行ったバディ・ムービーへのリスペクトを感じさせる作風が、とても印象的ではあります。
果たして、ケビン・スミスがそういったリスペクトを持っていたのかは分かりませんが、懐かしい感じですね。
だからこそ、もっと笑わせて欲しかった。
この映画は致命的なほどに犯人グループのエピソードでは笑える場面がないです。
個人的には、この手の映画は犯人グループを無理に凶悪に描こうとする必要はないと思うんですよね。
どこかB級な雰囲気漂う映画でもありますので、
開き直ってパロディ映画のようにしてしまっても良かったのかなぁとも思いますが、
それには、この犯人グループをもっと明るく描かないと、アンバランスになってしまいますからね。
やはり作り手としては、ギャグの応酬のようなパロディ映画のようにはしたくはなかったのでしょう。
不倫を疑われるホッジスの妻役を演じたのはラシダ・ジョーンズですが、
綺麗な女優さんだなぁと思ってたら、知らなかったけど...クインシー・ジョーンズの娘さんなんですね。
名門ハーバード大学を卒業してからは、しばらくの間、テレビ界を中心に活動していたようですね。
本作を観ると、やはりハリウッドも世代交代に苦労しているなぁという印象が残りますね。
ブルース・ウィリスもシリアスな映画に数多く出演しており、別にアクション映画に出演せずとも、
十分に映画俳優としての地位を確立できているはずですが、未だに本作のような映画へのオファーもあるのでしょう。
そういう意味では、80年代以降に数多くのアクション映画が世界的ヒットとなりましたが、
当時、人気を博したシュワちゃん、スタローン、ブルース・ウィリスといった大スターに取って代わる存在は、
なかなか現れず、少し下の世代であるトム・クルーズが頑張っているくらいで、更に下の世代となると、
押しも押されぬマネーメイキング・スターは生まれていないというところが、本当のところでしょう。
となると、ハリウッドのプロダクションとしても主演俳優のネーム・バリューで、
企画を押し通せることも無くなり、ヒットが確約されたアクション映画というのも、少なくなってきているのでしょう。
勿論、SNSやNETFLIXなどの、通信手段の変容が時代を変えてきていますが、
ハリウッドの場合は、特に次世代の台頭というのが少ないということもあるのではないかと思います。
すると、本作のようなかつてのスターに老体に鞭打ってアクション映画をやってもらうことが手っ取り早い。
そんな中で、かつてのヒット映画のオマージュを示す企画が立ち上がることは、定石なのかもしれません。
いずれにしても、本作は過度な期待は禁物です。ユル〜い気持ちで、観た方が楽しめるかもしれません。
(上映時間107分)
私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点
日本公開時[PG−12]
監督 ケビン・スミス
製作 マーク・プラット
ポリー・ジョンセン
マイケル・タドロス
脚本 ロブ・カレン
マーク・カレン
撮影 デビッド・クライン
編集 ケビン・スミス
音楽 ハロルド・フォルターメイヤー
出演 ブルース・ウィリス
トレイシー・モーガン
アダム・ブロディ
ケビン・ポラック
ギレルモ・ディアス
ショーン・ウィリアム・スコット
アナ・デ・ラ・レゲラ
ショーン・カレン
ジェイソン・リー
ミシェル・トラクテンバーグ
ラシダ・ジョーンズ