コンフィデンス(2003年アメリカ)

Confidence

まぁ・・・あからさまに、この映画のコンセプト自体を否定しかねないんだけど...
もうこの手の映画は限界だろう。コンゲームを描いた映画なのは悪くないけど、これはもう映画じゃない(笑)。

上映時間いっぱい使ってドンデン返しを連続させ、予想もつかない結末、
そして観客をも騙す快感...とやらに、この映画の脚本家がすっかり酔ってしまっているだけやん。

というわけで、僕はどうしてもこの映画を支持することができません。

そりゃ73年の『スティング』のような騙し合いを描いた映画というのなら理解します。
しかし、本作のような明らかにナレーションを付けて観客を騙す、或いは謎解きをメインにした構成、
こういうのは僕は映画の範疇を逸脱しかけていると思うし、映画の本質が逸れてしまっていると思う。
かなり厳しい言い方をすれば...こういう映画が横行するから、映画がおかしくなっちゃうんですね。

ですから、95年の『ユージュアル・サスペクツ』あたりから増えた、
この手の映画、僕は容認するつもりはありませんし、何かしらの映画らしさを必ず作って欲しい。
それができないのならば、映画というメディアで遊んでいるだけ、或いは映画というメディアである
必然性がまるで無いと判断せざるをえないですね。頑固なだけかもしれませんが、これは譲れません(笑)。

00年頃まで、僕はエドワード・バーンズはほぼ間違いなくハリウッドを代表する若手映像作家として、
名匠になれるほど有能であると期待していたんですけどねぇ〜。最近はすっかり足踏み状態(苦笑)。
オマケに本作のような軽い映画に出演したりして、作品の選球眼も疑いたくなってしまいますねぇ。。。

これはあくまでエドワード・バーンズが自分で映画を撮るための資金集めだったらいいんですけどね。。。

前述しましたけど、この映画はとにかくナレーションの使い方が下手。
僕はジェームズ・フォーリー、92年の『摩天楼を夢みて』なんかがもの凄く好きなんだけど、
あれだけシビれるぐらいカッコいい映画が撮れるのに、どうしてこんな道草をするのか理解できません。

「ナレーションとは映画を観ても分からない情報を伝えるために使うもの」と言ったのはビリー・ワイルダー。
この言葉は実に意味深長で、ナレーションは効果的なものにできるか否かで、最終的な映画の仕上がりに
強く影響を与えることは明白で、残念ながら本作はあまりに意味のないものになってしまっている。
それゆえ、この幾度となく挿入されるナレーションが入るたびに、ダメを押してしまっている。

同じジェームズ・フォーリーが撮った07年の『パーフェクト・ストレンジャー』は
ここまで酷くはなかったけれども、少なくとも本作を観る限りでは、ジェームズ・フォーリーは21世紀に入って、
完全に映画作りの方向性を見失ってしまったようだとしか言いようがないぐらい迷走してしまっている。

この映画で何が大きく欠如してしまっているかというと、それは雰囲気作りだと思う。
それと、もう一つ挙げれば登場人物の描写の甘さ。後者は例えばダスティン・ホフマン演じるキングですね。
彼がとても恐れられている裏の世界の実力者という設定で登場してくるのですが、
少なくとも本編を観る限りでは、そこまでの恐ろしさを示唆するようなシーンは一つもなく、
申し訳ないが、ただの年老いた変態にしか見えなかったのは、本作の致命傷と言ってもいい。

雰囲気作りという意味では、一つ一つのトリックを仕掛けるにあたって、
計画を練った上で、実に用意周到なトリックを実行に移しているのだろうけれども、
全てが上手くいき過ぎていて、逆に言えば、彼らの苦労感が希薄なのは難点だろう。

これはスマートな集団を描く映画なのですから、別に多くの苦労を見せる必要はありません。
しかし、何か一つでいいんです。それゆえ、映画のラストでの痛快さというものが、薄れてしまっていると思う。
(そのせいか、映画のラストは作り手の“どや顔”が目に浮かぶよう・・・)

ここでよく比較されるのは『スティング』かとは思いますが、
ハッキリ言って『スティング』はアイデア一発勝負の映画の典型例だと思うし、
こういった発想の映画というのは『スティング』の専売特許だと思っています。

ですから、厳しいかもしれませんが二番煎じは通用しません。
何故なら『スティング』はそれまでの映画界で邪道だったものを堂々と映画化したものだからです。
でも、常に映画のベーシックな部分は変わりません。だから今も尚、邪道と言われても仕方がありません。

しかし『スティング』が評価されたのは、詐欺師という反社会分子を主人公にしたにも関わらず、
敢えて映画は詐欺行為の苦労を描き、楽天的かつコメディ調に描き切ってしまったことにあります。
だからこそ、当時から多くの観客が観終わった後に「痛快な映画だった」と感想を述べたのです。

こういった斬新さがあれば映画は評価される可能性はあると思います。

いずれにしても、もっとジェームズ・フォーリーには落ち着いて映画を撮ってもらいたいですね。
良かった頃の、ドッシリと構えて映画を撮っていたスタイルを完全に忘れてしまったようで残念でなりません。

また、同時に僕の本音としては、この手の類いの映画を安易に称賛することは避けて欲しいと思う。
勿論、こういった映画が大衆から求められていること自体は否定しないし、だから製作されるのかもしれない。
しかしながら、こういうサスペンス映画の多くが観客に謎解きを強いる時代になってしまった今日、
僕はあまりに貧相な発想が横行し過ぎているような気がしてならず、映画の本質が悪い意味で
変化してしまうことを危惧しております。映画とは総合力で成り立つメディアだと思っているし、
どうせ映画化するのであれば、僕は映画にすることの意味を一つでいいから、見い出して欲しいと思う。

とまぁ・・・色々と思う、頑固な今日この頃です(苦笑)。

(上映時間97分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ジェームズ・フォーリー
製作 マイケル・バーンズ
    マーク・バタン
    マイケル・オホーヴェン
    マイケル・パセオネック
脚本 ダグ・ユング
撮影 ファン・ルイス・アンシア
音楽 クリストフ・ベック
出演 エドワード・バーンズ
    レイチェル・ワイズ
    アンディ・ガルシア
    ダスティン・ホフマン
    ポール・ジアマッティ
    ブライアン・ヴァン・ホルト
    ルイス・ガスマン
    フランキー・G
    ロバート・フォスター