コクーン2/遥かなる地球(1988年アメリカ)

Cocoon : The Return

85年にヒットした第1作で調子づき、老人たちの“その後”を描いた第2作。

今回はロン・ハワードに代わって、カナダ出身のダニエル・ペトリがメガホンを取っていますが、
個人的にはこの第2作は「チョットないなぁ〜」というのが正直な感想。前作の良さをほとんど奪っている。

キャスティングは前作の面々を1人も欠かすことなく再集結させており、
プロダクションも適当に作った続編ではないのは分かるけど、内容的にも二番煎じの感が否めず、
老人たちのやり取りの面白さだけで、この続編を成り立たせようとするのは、やはり無理があったと思います。

前作で不老不死を目指した老人たちは、突如として家族に会いに戻って来るという、
これはこれで壮大なファンタジーを描いているのですが、この映画で前作の良さをもフイにした感があります。
だから僕の中ではこの続編はあくまで番外編であって、第1作とは切り離して考えたいくらいなんですよね。

だって、前作の何が良かったかって、いろんな事情がありながらも、
寿命を全うすべきだなんて常識的な理解を分かった上で、それでも老人たちは不老不死を求めるわけですよ。
目の前に家族がいても、それでも「元気でいろよ」と笑顔で不老不死の世界にトライするわけですよ。
決して、これは映画としても常識的な展開ではないし、難しい題材であったにも関わらず、
真正面から堂々と描いて、そんな老人たちの決断を観客にスンナリと納得させられたことだと思うんです。

それを引き継いだダニエル・ペトリは、常識的ではない結末だった前作から、
本作で一気に常識的な内容に、まるで“軌道修正”するかのように変更してしまう。
僕に言わせれば、これは余計なお世話だ。前作の展開を見るに、このシナリオに納得性があるとは言えません。

本作では、前作で妻ローズを失って失意の中にあり、
老人ホームで孤独な生活を送るバーニーに焦点を当てたのは良かったですね。
ローズを失った悲しみが癒えてはいないことが言及されていますが、前作では唯一、違う決断をする老人という
あまりスポットライトが当たった描かれ方ではなかったので、本作で敢えて彼に焦点を当てたのは良かったですね。

繭を先に引き上げて、研究所に持ち帰って軍事研究を視野に研究対象にするという
エピソードが前作からの差別化を目的として描かれているようですが、個人的にはあまりインパクトのある
シーンにはなりえておらず、むしろバーニーのエピソードの方が映画の中の位置づけとして大きかったと思います。

バーに連れ出して、仲間は無理矢理、新しい女性と引き合わせようとしますが、反発するバーニー。

海外は妻に先立たれた男性も、アッサリと結婚したりする僕の中での勝手な印象があって、
事実、ヒューム・クローニンも私生活での妻ジェシカ・タンディを94年に看取った後、
女流作家と結婚して、03年に最期を迎えています。一般的に日本では、死別後の人生に男女差があって、
妻に先立たれ、残された男性はなかなか新しいパートナーを求めて動けないと言われていて、
よくパトーナーに先立たれると、勿論、性別問わず誰だってショックを受けるけれども、
特に男性はなかなか立ち直れず、一気に老け込み、塞ぎ込みがちになってしまうことが多いです。

この辺は女性と大きく違って、この映画の中で描かれたバーニーは
まるで日本の男性の姿を象徴したかのような姿で、どこか同情を誘う部分はあるかもしれませんね。

若返ったおかげで、という理由一つでドン・アメチー演じるアートと妻の間に子供ができるなんて
エピソードも描かれますが、これはいくらなんでもやり過ぎ。これは続編を作ることが目的化してしまったのか、
前作がヒットしたおかげで、とりあえず5年後に地球に帰って来ることにしよう程度で企画が立ち上がったせいか、
映画の肉付けとして描かれたエピソードが雑過ぎて、ダニエル・ペトリだけの力ではどうともならなかっただろう。

それくらい、この続編は企画段階で問題があり過ぎで、やるべきではなかった続編の典型例だと思う。

ちなみに前作に続いて、アンタレス星人が扮した女性キティを演じたのはターニー・ウェルチ。
彼女は60年代に一世を風靡したラクエル・ウェルチの娘で、ラクエル・ウェルチが21歳の時の娘だ。
正直言うと、ターニー・ウェルチは前作の方が目立っていましたが、どことなく母のラクエル・ウェルチに似ていて、
本作の方がよりラクエル・ウェルチに似てきているように見えますね。もう少し彼女にも、見せ場を作って欲しかった。

作り手としては、キティよりも研究所の女性研究員を演じたコートニー・コックスを
目立たせたかったみたいで、確かに当時の彼女はブルース・スプリングスティーンのミュージック・ビデオに
出演して注目されたりしていて、本作の作り手の目にも止まり、彼女の存在感を出したかったのかもしれませんね。
この第2作がヒットしていれば、あわゆくば第3作もあって、むしろコートニー・コックスがメインになっていたかも。

ちなみに彼女が出演していたのは Dancing In The Dark(ダンシング・イン・ザ・ダーク)で、
アメリカもMTV隆盛期、ブルース・スプリングスティーンも一番のヒット・アルバムからのシングル・カットでしたから、
そんなMV(ミュージック・ビデオ)に出演していたコートニー・コックスは、この頃、一番の“押し目”だったのでしょう。

しかし、そんな目論見も虚しく、当然、第3作など作られることもなく、
第2作自体の評判は芳しくないまま終わってしまったため、コートニー・コックスは90年代半ばに、
大ヒットしたTVシリーズ『フレンズ』の出演機会に恵まれるまで注目されず、ターニー・ウェルチにいたっては、
00年代に入ると、まともな映画出演も無くなり、どうやら女優業を引退してしまったようですね。

この手の映画のシリーズ化の難しさを露呈させた作品であるかのようで、
00年代に入って、ハリウッドでもマーティングの強化が徹底され、イージーな続編の乱用は少なくなり、
おそらく本作も近年のような情勢では、実現しなかったであろう企画という感じで、時代の流れを感じますね。

特撮技術としては、前作に続いて、ほぼ同じ水準で安定の技術力だ。
ただ、言い換えれば...映像的には前作から驚くような進展はなく、もう少し新鮮味が欲しかった。

ちなみにダニエル・ペトリの息子、ダニエル・ペトリJrとドナルド・ペトリは2人とも、
ハリウッドで映画製作者として成功していて、特にドナルド・ペトリは01年の『デンジャラス・ビューティー』の
メガホンを取るなど、コメディ映画を中心に活躍しています。日本ではあまり知られていませんが、凄い家系ですね。

とまぁ・・・プロダクション側の狙いもよく分かるし、
当時の映画産業はまだ、“イケイケドンドン”だった時代でヒット作にはシリーズ化という、
一つのフォーマットが必ずと言っていいほど、ついていたということは理解できますが、
これこそ、まるで使い捨ての時代の発想という感じで、もっと第1作のことを大切に考えて欲しかったというのが本音。

(上映時間116分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 ダニエル・ペトリ
製作 デビッド・ブラウン
   リチャード・D・ザナック
   リリ・フィニー・ザナック
原案 スティーブン・マクファーソン
   アリゼベス・ブラドリー
脚本 スティーブン・マクファーソン
撮影 タク・フジモト
特撮 ILM
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ドン・アメチー
   スティーブ・グッテンバーグ
   ターニー・ウェルチ
   ヒューム・クローニン
   ジェシカ・タンディ
   ウィルフォード・ブリムリー
   ブライアン・デネヒー
   ジャック・ギルフォード
   グウェン・ヴァードン
   モーリン・ステイプルトン
   コートニー・コックス
   バレット・オリバー