チャーリーズ・エンジェル フルスロットル(2003年アメリカ)

Charlie's Angel : Full Throttle

00年に製作され、世界的に大ヒットした『チャーリーズ・エンジェル』の3年ぶりの続編。

確かに第1作は楽しかった。当時、ハリウッドでも勢いのあるトップ女優であったキャメロン・ディアスと
ドリュー・バリモアがエンジェルとしてスクリーンを縦横無尽に動き回ってアクションシーンはこなすし、
ほど良くキャピキャピした部分があって、若さ全開でありながらもギャグ満載で実に楽しいエンターテイメントでした。

しかし、さすがにいくら続編とは言え、第1作そのまんまの二番煎じはあまりにしんどい。
楽しい映画だとは思うけど、それだけで手放しで称賛はできないかな。何かしら新しいものを見せて欲しかった。

人気TVシリーズの映画化を、当時のトップ女優が集まって実現したがために
前作はメガヒット作となりましたが、どの勢いそのままに続編を製作することになりましたが、
映画を観ていると、やっぱり製作に加わっているドリュー・バリモアの意向が強く反映されているような気がしました。

映画は冒頭から、トム・クルーズが誇る人気シリーズのパロディかと思わしき、
荒唐無稽なアクション・シーンから始まるのですが、その後も基本的にはパロディの連続でコメディ色が強い。

しかも、前作で登場したクリスピン・グローバー演じる”ヤセ男”が再びチョイ役で登場してきて、
ドリュー・バリモア演じるディランの窮地を救って、彼女がキュンキュンしちゃうシーンもあるなんて、
こういうギャグを織り交ぜちゃうあたりは、ドリュー・バリモアをフロントに据えて動いたプロジェクトだからこそだと思う。

前作に続いてメガホンを取ったのは新進気鋭のマックG。
スタイリッシュかつCGをふんだんに使ったスピード感満点の映像感覚は前作と同様にさすがの出来で、
前作でファンになった人は安心して楽しめると思います。ただ、良くも悪くも本作の面白さはそこだけかな。

やっぱり、何か一つでいいので前作との違いを見せて欲しかったかなぁ。
あまりにハリウッドのプログラム・ピクチャーの典型例みたくなってしまったので、悪い意味でビジネスライクに見える。

チョット、他の映画のパロディもしつこくやり過ぎましたね(笑)。
『サイコ』、『フラッシュ・ダンス』、『ケープ・フィアー』など次々とパロディを繰り出すのですが、
こういったギャグに頼ってしまったのはアイデアの枯渇を感じる。このシリーズにそういうのは求めてなかったのでね。

正直、ラジー賞に大量ノミネートされてしまった理由って、こういうところにあると思います。

単にキャメロン・ディアス、ルーシー・リューと楽しくやりたいというコンセプトだけで、
往年の人気シリーズである『チャーリーズ・エンジェル』のどういった部分を表現したいということが明確ではなく、
彼女たちの共演という基本コンセプト以上のものが映画の中で、全く反映されていないというのが問題ですね。
僕はそれでも楽しかったと言えば楽しめたので気になりませんが(笑)、物足りないと批判する意見もよく分かる。

要するに、前作からパワー・アップしていないところが目につくので、どうしても良くは見えないと思います。
ですので、単純に『チャーリーズ・エンジェル』のファンで前作の面白さが踏襲されていればよいという人向きなんです。

僕は世代的にもオリジナルのテレビドラマを観ていたわけではないし、正直言って、馴染みも無い。
でも、テレビドラマの根強いファンが多いということは知っているし、亡くなったファラ・フォーセットはブレイクしたし、
エンジェルの活躍を描く映画というよりも、パロディ・ギャグが先行する内容を観て、オリジナルのファンでもない
私が見ても、「これで果たしてテレビドラマ時代のファンが、どれくらい楽しめるのだろうか?」と心配になった。

辛らつな言い方をしてしまうと、こういう内容ならば別に『チャーリーズ・エンジェル』である必要もないと思えちゃうし。
この辺はハッキリ言って、やり過ぎてしまった監督のマックGに責任があると思う。もっと制御した方が良かったなぁ。

本作の新キャラクターとしては、デミ・ムーア演じるマディソンという、かつてチャーリーの元で働いていた
伝説のエンジェルが登場してきますが、個人的にはもっとアクの強いキャラクターであっても良かったと思うんだよなぁ。
特にエンジェル同士の決闘シーンがアッサリ終わってしまったような感じで、どうにも物足りないラストになってしまった。
確かにデミ・ムーアの鍛え上げられたシルエットには、貫禄(?)すら感じさせるので、もっと目立たさせて欲しかった。

前作の撮影当時のトラブルが話題となっていたボズレー役だったビル・マーレーが降板し、
本作からはバーニー・マックが演じていますが、エンジェルへの指示役で直接的なお目付け役という位置づけなので、
ボズレーはあくまで仮名にしかすぎず、ボズレーという名を与えられた人が複数名いるという前提で、
バーニー・マック演じる黒人男性がボズレーとしてエンジェルに仕事を与え、見張っているという立場ですが、
本作でのバーニー・マックはビル・マーレーが演じてきたボズレーとまるで違うけれども、よく頑張っていましたね。

バーニー・マックは08年に他界してしまったのが残念でなりませんが、
ビル・マーレーとはまた違ったコミカルさを見せてくれていて、これまでとは違ったアクセントがあって良いですね。
エンジェルたちに“転がされる”という感じではありませんが、キチッと存在感があって映画に合っていると思います。

半ばお約束のようなキャラクターではありましたが、ルーシー・リュー演じるマンディの父を演じた、
懐かしのモンティ・パイソン≠フジョン・クリーズが元気で嬉しい。娘が医者であると聞かされていたはずなのに
実は彼女は医者ではなくって、聞けば聞くほど“裏の世界”で働いているように聞こえて動揺しまくる表情が上手い。
かつては自分がボケまくる立場だったジョン・クリーズですが、すっかり翻弄されるキャラも似合うようになりましたね。

これだけギャグの応酬みたいな映画になるのですから、どうせならジョン・クリーズはもっとメイン・ストーリーに
絡んできて欲しかったですね。一連の騒動に彼も巻き込まれるみたいな展開の方が面白かったかもしれない。
どうせ前後関係を無視して破天荒に映画を作るなら、それくらいメチャクチャにやっても良かったと思いますね。

それと、この頃のハリウッド映画って、エンド・クレジットの終わりに“オマケ”を付けるのがブームで、
本作も“オマケ”があるのですが、この“オマケ”を観ると本作がヒットすれば、第3作も作る気だったのかもしれません。
そんな含みを持たせた部分もありますが、この辺は当時のハリウッドの悪癖というか、僕は余計な“オマケ”に観えた。

ひょっとしたら、製作当時はヒットすれば第3作も製作するつもりだったのかもしれませんが、
その第3作は2019年になるまで作られませんでしたし、第3作ではキャストが一新することで製作されました。
(さすがにドリュー・バリモアも製作総指揮で加わったものの、彼女のカラーがかなり薄れたようで・・・)

何か一つでも新しいものを出せていれば、当時のハリウッドのビジネスモデルからすれば、
ほぼ間違いなく第3作はそのままの勢いで製作されていたでしょうし、ヒットシリーズになっていたことでしょう。
しかし、あまりにストレートに第1作のまま過ぎました。そして、パロディ・ギャグも過剰に頼ってしまった結果、
この映画のコンセプトの根幹がなんであるのか、すっかり揺らいでしまったことで迷走した第2作になってしまいました。

そういう意味では、監督は交代しても良かったのかもしれませんね。
どうしても、第1作が成功体験になってしまいますから、第1作の路線を踏襲することに注力しますからね。
それが良さになることもあるのですが、本作のようなエンターテイメントはどこかに新しさがないと、すぐに古びる。
まぁ・・・前作も訳の分からない相撲とかありましたけどね。但し、ギャグの一つ一つが良い塩梅だったと思うんです。

それが第2作でも同じようなことをやってると、どうしても既視感が拭えなくなる。
これが“コンセプトのみで作られてしまった”とラジー賞でも、揶揄的に評されてしまった所以でしょう。

きっと撮影現場は楽しかったのでしょうね。しかし、キャストのファンでなければ、そこまで楽しめない気がします。
そういう意味では、もっと企画の段階からしっかりと練って欲しかったし、続編を作る意義を見い出して欲しかった。
当時は今よりもハリウッドのプロダクションも自由で、こういうコンセプト先行型の企画でも通ったのでしょうけど、
映画産業が活発であった証拠である反面、こういう映画が量産されたことで水準が下がっていったような印象です。

そういえば...最初に観たときは気付きませんでしたが、密かにシャイア・ラブーフが脇役で出演してるんですね。

(上映時間105分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 マックG
製作 ドリュー・バリモア
   レナード・ゴールドバーグ
   ナンシー・ジュヴォネン
脚本 ジョン・オーガスト
   コーマック・ウィバーリー
   マリアンヌ・ウィバーリー
撮影 ラッセル・カーペンター
編集 ウェイン・ワーマン
音楽 エド・シェアマー
出演 キャメロン・ディアス
   ドリュー・バリモア
   ルーシー・リュー
   バーニー・マック
   デミ・ムーア
   クリスピン・グローバー
   ジャスティン・セロー
   ロバート・パトリック
   ジョン・クリーズ
   シャイア・ラブーフ
   マット・ルブラン
   ルーク・ウィルソン
   ロバート・フォスター
   キャリー・フィッシャー
   ジャクリーン・スミス

2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ドリュー・バリモア) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(キャメロン・ディアス) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ルーシー・リュー) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(デミ・ムーア) 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(ジョン・オーガスト、コーマック・ウィバーリー、マリアンヌ・ウィバーリー) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞コンセプトのみで作られてしまった作品賞 ノミネート