キリング・ショット(2011年アメリカ)

Catch .44

これは、なんちゃってタランティーノな映画ですね(苦笑)。

でも、正直言って、これは失敗作。余計なことを意識し過ぎていて、良くない仕上がり。
そりゃ作り手のヤル気は凄くあったというのは分かるけど、完全に空回りしてしまっていますね。
色々とシナリオの段階で、捏ねくり回し過ぎた感が強く、映画の本質から外れてしまっていると思いますね。

まぁ時制をゴチャゴチャと複雑に入れ替えて、故意に複雑な映画にしてしまっているのですが、
編集の段階でそうとうな苦労を強いられたのがよく分かる作りで、あくまで単純明快な構造のストーリーを
スタイリッシュな編集を採り入れることで、観客を混乱させようとする意図は伝わってきますね。

ただ、たいへん申し訳ない言い方だけど、それらのほとんど失敗ですね。
僕も正直言って、「いったい、いつになったら面白くなるんだろう〜」と期待しながら観ていたら、
結局、映画がそのまま終わってしまったような印象で、結局、何がしたかったのか分からない。
そのせいか、エンド・クレジットに入ってからの“オマケ”など、余計な代物にしか見えないですね。

アーロン・ハーヴィーがこの映画を通して、何を描きたかったのか、よく分からないのが残念ですね。
やはりタランティーノのモノマネだけでは、映画が成立しえないということは、よく分かっていたはずです。

ブルース・ウィリスにしても、フォレスト・ウィテカーにしても、
決して手抜きな芝居ではないのですが、やはりどこか“狙い過ぎ”な感があって、
その全てが例えば『パルプ・フィクション』の亜流のように見えてしまって、仕方がないんですよね。
これでは、本作のオリジナリティが生まれてこない感じで、とても勿体ない。

たぶん、これはもっと工夫して撮っていれば、面白くなっていた気がします。
個人的には「タランティーノが撮っていればなぁ・・・」とは言いたくないのですが、
あまり強く他作品を意識することなく、しっかりとビジョンを持って撮っていれば、魅力的になっていたはずです。

映画の冒頭の女の子たちの紹介にしても、正にタランティーノ風なのですが、
その女の子たちがマリン・アッカーマン演じるテスぐらいしか、映画の終盤まで絡んでこないという、
あまりに意味の無い紹介シーンになってしまっており、こういうシュールさを楽しむ映画にもなっておらず、
クドいようですが、やはり作り手が本作を通して、一体、何がしたかったのか伝わらないとこがツラいですね。

幾度となく、中身のない会話が延々と続くあたりもタランティーノの影響だと思うのですが、
これがホントに中身がなく、最後の最後までそれらが何一つ活きないから、これじゃ意味ないですね。
おそらくこれらの会話が、何かしらの伏線になるのでは?と期待していた向きもあるでしょうが、
実はこれらは伏線にすらなりえず、シュールな面白さを引き出すにも程遠い、中身の無い話しを延々と
続けられてしまうので、これではさすがに映画の途中で飽きてしまう人もいるのではないでしょうか。

そういう意味では、映画の尺自体は短いのですが、とても長く感じられる1時間33分です。。。

まぁ・・・元々がたいしたことないストーリーなだけに、
時制を入れ替えまくって、故意に混乱させたり、無意味なシーンを意味ありげに見せたりと、
色々と工夫しようとする意図はあったとは思うんですが、結局、それを痕跡として残せませんでしたね。

利き腕の違いによって、生死が分かれるというオチもあまりに雑で工夫になっていない。
きっと、これはこれで作り手なりの工夫だったんでしょうが、ビジョンがズレてると思うんですよね。
やはりこういう場合は、作り手が基本に立ち返って、基本に忠実に映画を撮るべきでしたね。

それが作り手が凝らした工夫ではなく、
残ったものが映画をコネくり回した結果としか映らなくなってしまったのが、とても残念ですね。
でも、これは作り手の問題でもあったと思うんです。もう少し経験があるスタッフがいれば・・・と思うんですよねぇ。

ついにブルース・ウィリスも開き直ったかのように、
かなり薄くなった頭髪を露にして、ボサボサなヘアースタイルで登場するという、
ある意味で“大サービス”ぶりだったのですが、その“大サービス”も空回りしたかのように、
映画の出来が芳しくなったというのも皮肉で、ブルース・ウィリスの期待した出来にならなかった感がありますねぇ。
(どうやらブルース・ウィリスは本作の企画に惚れ込んで、出演を決めたらしい・・・)

フォレスト・ウィテカーに関するエピソードで、かなり残酷な描写が多いので、
日本では問答無用でレイティングの対象になってしまいました。一つは、警察官を背後から撃つシーン、
そしてクライマックスの食堂で、ブルース・ウィリスとの会話の終わりに起こる事件が、結構、残酷です。
無駄に特殊メイクのスタッフが頑張ったんでしょうねぇ。故意に長く映したりして、目を背けたくなる光景です。

まぁ・・・通常ならば、インディーズの枠組みで活動するレベルの映像作家でしょうから、
これはほんの手始めにしかすぎないとは思うのですが、初回監督作がこういう出来だと次が心配ですね(笑)。

それ相応の研鑽を重ねて、次回作はもっと工夫が実る作品になっていることを期待します。
さすがに本作の出来で満足されてしまっては、作り手の自己満足と言われても、仕方ありません。
やはり他の映像作家のコピーだけで、何も創意が入らない産物には、何も価値が無いという好例だと思います。

とても辛らつな言い方にはなってしまったのですが、
企画自体はそうとうに魅力的なもので、豪華キャストを実際に集められたわけですから、
それでこの結果になってしまったというのは、スタッフは責任を感じなければいけないと思います。
その上で次回作で、この反省をどう活かすか、しっかり考えなければ、同じ失敗を繰り返すだけでしょう。

強いて言えば、映画の序盤で少女3人が乗った車のカーステレオで、
ブルース・ウィリスがかつて歌手としても活動していたときに発売した曲を聴くという設定には
笑ったけれども、あそこで流れていたのって、ホントにブルース・ウィリスの曲だったんだろうか?(笑)

(上映時間93分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

日本公開時[R−15+]

監督 アーロン・ハーヴィー
製作 ランドール・エメット
    マイケル・ベナローヤ
    ミーガン・エリソン
脚本 アーロン・ハーヴィー
撮影 ジェフ・カッター
編集 リチャード・バイアード
音楽 ジョー・パガネッリ
出演 フォレスト・ウィテカー
    ブルース・ウィリス
    マリン・アッカーマン
    ニッキー・リード
    デボラ・アン・ウォール
    シェー・ウィガム
    ジル・ストークスベリー
    ブラッド・ドゥーリフ