コレリ大尉のマンドリン(2001年アメリカ)
Captain Corelli's Mandolin
第二次世界大戦下、イタリア軍とドイツ軍によって占領された、
ギリシア領ケファロニア島を舞台に、底抜けに陽気なイタリア軍大尉コレリの明るく人生を謳歌する生き方に、
次第に島の人々も心を開くようになり、島の医者の娘が彼に恋していく姿を描いた戦争ドラマ。
98年に『恋におちたシェイクスピア』でいきなりアカデミー作品賞を獲得した、
ジョン・マッデンが大規模なロケを敢行して撮った作品で、映画の出来はまずまず悪くないと思う。
多少、映画の作り手がフォーカスしたい部分が分かりにくく、
映画全体で考えた時に疑問に感じる部分もあるけど、僕はそんなに悪い映画だとは思わない。
戦争を描いたシーンと、恋愛のパートの配分にしても丁度良く、映画のバランスも悪くないと思う。
ただ、この映画、僕の勝手な偏見ではあるのですが...
どうも、にわかに懐疑的に観てしまう部分があって、それがどうしても気になって仕方がありません。
それは主演のニコラス・ケイジがどうしても胡散臭く観えてしまう点だ(苦笑)。
そりゃ彼なりに一生懸命やっていることは否定しませんが、映画の前半は特に胡散臭い(笑)。
全体的に過剰な芝居をする傾向がこの頃は特に強かったように思いますが、それが逆効果ですね。
役柄設定があることは理解しますが、もっと全体的にクドさを抑えて芝居して欲しかったですね。
この演技の過剰さの何がいけないって、
全体的に落ち着いた調子で進めるジョン・マッデンの語り口とまるで噛み合っていないことなのです。
おかげで、ニコラス・ケイジの過剰な芝居だけがおそろしく“浮いて”観えてしまう。
まぁペネロペ・クルス演じる医者の娘をめぐる三角関係など、
映画をかき乱すようなファクターがしっかりとベースを作っていて、思いのほか映画の骨格がしっかりしている。
この辺はジョン・マッデンの確かな演出力が大きくモノをいっているのかもしれませんね。
(勿論、ロマンス小説としての原作の魅力も優れていたことも大きいのだろうけれども・・・)
映画の終盤に迫力の戦争シーンがあるのですが、
これが予想外と言っていいほどに力が入っており、作り手の意気込みの強さが感じられます。
また、撮影のロケーションも抜群に素晴らしく、
さすがに実際にケファロニア島で長期間のロケ撮影を敢行しただけあって、かなり魅力的な映像になっている。
石造りの建造物、そして眩しいばかりの日差し、雄大に広がる海岸、そして日差しを遮る緑。
いずれの撮影対象も、本作にとって重要な要素であり、このロケーションはもっと評価されてもいいと思う。
但し、一つ言わせてもらいたいのは、
映画においてマンドリンがタイトルになるほど重要な要素であったとは思えない点だ。
確かにニコラス・ケイジが演奏するシーンは、それなりの意味があるのですが、
どうせタイトルにするぐらいなら、もっと強い意味を持たせて欲しいと思いますね。これでは中途半端です。
何度か演奏シーンが出てきますが、もっと観客の心を強く揺さぶるシーンであって欲しいですね。
いや、と言うのも...マンドリンの音色の魅力って、こんなもんじゃないと思うんですよ。
チョット、ミーハーな意見ですが...
高校の頃だったと思いますが、ロッド・スチュワートの『Mandolin Wind』(マンドリン・ウィンド)を
最初に聴いた時の衝撃は、こんなもんじゃなかったですよ。もっと心に残るインパクトがありましたね。
失礼ながらも、あまり聴き慣れない音色に完全に魅せられた記憶が、今でも強く残っています。
映画の中で使われる音楽とは言え、本作の場合はそれぐらいのインパクトがないと、
映画のタイトルにするぐらいの重要な位置づけというのは保てないんですよね。
マンドリンって、日本でも多くの方々に愛好されており、
実際に僕も以前、友人がマンドリンのクラブ活動の演奏会を見に行った記憶があります。
この映画の主人公のようにオーケストラの中で演奏すると、一際目立つ印象ですね。
そのせいか(?)、僕の記憶では本作劇場公開当時、
札幌の某シネコンですが、劇場公開日の初回上映でマンドリン演奏会を催したりしていたはずです。
(そう、あの頃は日本でもシネコン乱立状態になり、今よりいろんな意味で映画産業が活発でした・・・)
それと、この映画、もう一点だけ注文を付けたい。
それはペネロペ・クルス演じるヒロインの婚約者の描き方ですね。
そりゃ対極的に描きたいという意図も分かりますが、これではあまりにイヤな奴ですね。
演じるクリスチャン・ベールは悪くないし、もっと堂々と描いた方が厚みが出たと思えるだけに勿体ないですね。
そういう意味では恋愛映画や、ストーリー面を重視する人には向かない映画かもしれません。
個人的に本作のロケーションの素晴らしさは特筆すべきと考えておりますので、
思いのほか、本作は視覚的な映画であると言ってもいいと思いますね。
ついでに言えば、ジョン・トールの美しいカメラもとても映画に対する貢献度が大きいと思います。
まぁケファロニア島の美しいロケーションと、過酷な戦争の歴史を描いた映画という意味では、
そこそこ評価に値する内容と思いますし、映画の出来も及第点は越えていると思います。
同じジョン・マッデンの監督作としては、
個人的には『恋におちたシェイクスピア』よりも好感が持てる内容ですね。
(上映時間128分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 ジョン・マッデン
製作 ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
マーク・ハッファム
ケビン・ローダー
原作 ルイ・ド・ベルニエール
脚本 ショーン・スロヴォ
撮影 ジョン・トール
音楽 スティーブン・ウォーベック
出演 ニコラス・ケイジ
ペネロペ・クルス
ジョン・ハート
デビッド・モリッシー
クリスチャン・ベール
イレーネ・パパス
パトリック・マラハイド
2001年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ペネロペ・クルス) ノミネート