ボールズ・ボールズ(1980年アメリカ)

Caddyshack

まぁこれは・・・シュールなギャグが連続する、
スラップスティック・コメディ映画といった感じなので、正直言って、日本人の感覚には合わないかも。。。

とは言え、部分的には結構、面白くって、
チェビー・チェイスやビル・マーレー、そして本作の監督のハロルド・ライミスもそうなのですが、
当時、全米を代表するTV番組だった『サタデー・ナイト・ライブ』の延長線上にあるようなギャグの連続で、
彼らに加えてロドニー・デンジャーフィールドまで大暴れして、金持ちのゴルフ遊びを徹底して風刺します。

映画はゴルフはなかなかの腕前を持ちながらも、
賭けゴルフのように金のためにゴルフに興じるつもりはないというチェビー・チェイス演じるタイと、
ゴルフ場の管理主任を目指して、頻繁に出没する野モグラ退治に必死になるビル・マーレー演じるカール、
そしてゴルフ遊びに興じる判事にやたらと挑戦的な態度をとる不動産王アルらを中心的に描き、
最終的には4万ドルを賭けたゴルフ対決に発展するまでを描いているのですが、
物語そのものはたいした物語ではなく、いろんなエピソードを紹介して、無理矢理、映画を引っ張ります。

一見すると、ゴルフ選手を目指しながら、ゴルフ場でキャディをする青年を
メインに描いているのかと思いきや、映画を最後まで観て思ったのですが、
あまりこの青年の物語に関しても、強い意味を持たないということなんですね。

おそらくハロルド・ライミスは本作を撮るにあたって、
ホントに主張したかったメッセージなんて、何一つ無かったでしょうね(笑)。

いや、僕は別にそれを否定したいわけじゃなくって、
言ってしまえば、本作の作り手はあくまで本作をコントをつなぎ合わせた作品と位置付けているのでしょう。
だからこそ、勢いに任せた映画という印象が強くって、それぞれのシチュエーションを楽しませることに
注力していることは明らかで、それぞれのギャグが単発的で、「一つ終わったら、次!」って感じですね。

特に映画の中盤にあった、プールに投げ捨てたチョコバーが
トンデモない勘違いを生み、大騒動に発展してしまうシーンなんか観たら、それは明らかですね。

チョット食事中には観たくないギャグではありますが、
現実に同じことをやったとしても、同じようなパニックが起こりそうで、想像すると可笑しい。
しかも、プールの徹底した消毒を命じられ、消毒作業を行ったカールが問題となったチョコバーを見つけ、
拾い上げて匂いを確認した上で、実際に食べて「何ともないよ!」と言い放つのも、また常軌を逸している。

でも、このギャグの数々、何一つストーリーに影響を与えません。
ここまで気持ち良いぐらいに、どうでもいいギャグに時間を費やす映画も貴重ですね。
これは究極のシュールさと言っても過言ではなく、やはり『サタデー・ナイト・ライブ』の延長線上の企画ですね。

その極め付けは、映画のラストで無理矢理、ホールを爆発劇に持っていって、
訳の分からない混乱の中でゴルフ対決を終結させるなど、強引とも言える力技でしょう。
このラストも訳が分からない、ある意味で破綻したラストではあるのですが、
野モグラ退治を半ば無理矢理に映画のラストにくっ付ける強引さが、ここまできたら気持ち良いぐらいですね。

出演女優も無意味にヌードになったりと、とにかく変なサービス精神が旺盛なのですが、
やはりこういう彼らの興味を優先した企画だったためか、まだこの映画のハロルド・ライミスから、
映画を製作する上での意図や、「設計」を感じさせる出来にはなっていませんね。これはチョット残念です。

ただ、本作のような作品で頑張ったからこそ、
ハロルド・ライミスは後にコメディ映画を中心に映画監督としての評価を上げることになり、
90年代に入って、『アナライズ・ミー』のような若干、多い予算を擁した企画も任されるようになります。

キャストの中では、やはりロドニー・デンジャーフィールドのオッサンが強烈な印象を残す。

1940年代からコメディアンとして活動してきた彼でしたが、
途中で夢破れセールスマンとして働いていたものの、やはり夢を諦め切れず、
60年代から再びコメディアンとして活躍して、全米での知名度を上げていましたが、
映画出演自体はあまり積極的ではなく、本作に59歳のときに出演したことをキッカケに
数多くの映画に出演することになり、晩年まで映画の仕事を数多くこなすに至りました。
確かに本作を観ると、そんな後日談も納得するぐらい、本作は彼のためにあるような映画でしたね。

金持ち判事を皮肉るために、その対極として登場させたキャラクターでしょうが、
彼が演じる不動産王アルもまた、近くにいたら傍迷惑なオッサンで、失礼極まりない(笑)。
ゴルフをやっても、他のプレーヤーのアプローチを邪魔するし、パーティーに行っても、
徹底して他の人々を馬鹿にする嫌な奴で、彼もまた、皮肉の対象なのかもしれません。

映画の中盤に大型クルーザーを暴走させて、大変な騒ぎになってしまうシーンもありますが、
とにかく周囲の人々も巻き込んでの大騒動で、やはり成金根性に対する強烈な皮肉を感じますね。

彼が造形したアルに比べたら、意外にチェビー・チェイスもビル・マーレーも
本作ではそこまで強烈なインパクトを残せているようには思えないですね。
特にチェビー・チェイスは同じ頃に『ファール・プレイ』や『名探偵ベンジー』などに出演しており、
他の出演作での彼の方が、良い意味で彼の持ち味を出せているように思いますね。

ビル・マーレーもある意味で、オイシイ役柄ではあったのですが、
後の出演作での彼と比べれば、全体的に不発な感じで、彼らしいパンチ力も弱い気がします。

ただ正直言って、この映画のツボを理解するためには、
やはり『サタデー・ナイト・ライブ』を楽しむとか、少なくとも彼らの笑いのツボを把握するなど、
下調べがある程度必要で、70年代後半のアメリカン・ジョークに理解が無い状態で楽しむのは無理でしょう。
(そういう意味では、僕も本作を楽しむための条件は満たしていなかったのかも・・・)

ちなみにDVD化が遅れていた作品の一つでもありましたが、
今となってはDVDはおろか、Blu-rayでも発売されており、容易に鑑賞できるようになりました。

(上映時間98分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ハロルド・ライミス
製作 ダグラス・ケニー
脚本 ブライアン・ドイル=マーレー
    ハロルド・ライミス
    ダグラス・ケニー
撮影 ステヴァン・ラーナー
音楽 ジョニー・マンデル
出演 チェビー・チェイス
    ビル・マーレー
    ロドニー・デンジャーフィールド
    マイケル・オキーフ
    テッド・ナイト
    サム・ホルコム