ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月(2004年アメリカ)

Bridget Jones : The Edge Of Reason

うーーーん...これは“やっちゃった”ねぇ。

01年に世界的に大ヒットしてレニー・ゼルウィガーをトップ女優に押し上げた、
『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編で、まぁまぁヒットしていた記憶があったのですが、これが全くノレなかった。
前作の勢いを感じる内容の作品でもなく、相変わらずレニー・ゼルウィガーの役作りはスゴいとは思うけど、
映画の中身が全く付いてきていない。前作の良さも失われてしまったようで、どうにも苦しい内容に見えてしまった。

監督は95年の異色作『3人のエンジェル』で評価されたビーバン・キドロンでしたが、
もう少し上手くコメディを撮れるかと期待していたけど、ヒュー・グラント演じるダニエルの扱いが決定的に上手くない。
そう、この映画はヒュー・グラントがポイントだと思う。彼がかき乱すからこそ面白くなるのに、なんだか中途半端だ。

しれっと映画の途中で、再びヒロインのブリジットとイイ関係になりかけるんだけど、そこで終わってしまう。
中途半端に絡んできてアッサリと退場させてしまうのは、あまりに勿体ない。これは作り手に問題があると思う。

確かに第1作と同じことをやっていてはダメな続編にしかならないんだけれども、
その第1作のどういったところが支持を受けていたのか、もっと作り手は研究して欲しかったですね。
少々前のめり気味に頑張り過ぎちゃうブリジットとお堅い弁護士のマークが絶妙な具合にすれ違っちゃったり、
そこに色男のダニエルが加わって、ドンチャン騒ぎになるコミカルな面白さがあるはずなのに、本作はパンチが弱い。

どれどころか、タイでの薬物騒ぎでブリジットが身柄を拘束されるとか、チョット笑うに笑えないネタを使ってしまう。
この辺が原作通りであったとしても、もっと見せ方自体を工夫して欲しい。この辺は第1作の方がずっと上手かった。

劇場公開当時も大きな話題となっていましたが、主演のレニー・ゼルウィガーが
まるで“デ・ニーロ・アプローチ”かの如く、体型を変えてまでヒロインのブリジットを演じていることに驚かされます。
まぁ、第1作のときよりも増量して撮影に臨んでいますね。こういうタイプの女優さんだとは思わなかったので、
当時も驚きましたけど、かなり役作りを外見からも取り組む女優さんなんですね。正にハマリ役だと感じいたのでしょう。

まぁ、レニー・ゼルウィガーは30代の女性の等身大を演じたということなのかもしれませんが、
そのコンセプトは前作から変わらず、本作での彼女は更にパワーアップした感じで、より力が入っている。
その分だけ本作ではヒュー・グラントと、ブリジットの恋人ダーシーを演じたコリン・ファースも今一つ目立たない。

この中途半端さが、終始、悪い方向に機能してしまったようで、
それでブリジットが“キレそう”だったのかな・・・と余計な皮肉を言いたくなるほど、前作とのギャップはデカい。

そして映画の後半に、お約束のヒュー・グラントとコリン・ファースの取っ組み合いのケンカもありますけど、
これも前作ほどのヒートアップ感もないので、映画を盛り上げるほどテンションが上がらずに、むしろ盛り下がる・・・。
やっぱりコリン・ファースみたいな真面目そうな役者さんは、もっと思い切って“振り切れちゃう”芝居がないと、
コメディ映画では映えないし、ヒュー・グラントに至っては彼なりの持ち味を出す前に終わってしまうのが勿体ない。

そもそもが、ダーシーの同僚弁護士レベッカとの関係性もさすがに無理がある展開だったと思う。
どうせなら、ダーシーがレベッカとブリジットの間で揺れ動くくらいの設定の方が面白くなったと思うのですが、
映画の最後にタネ明かしがあって、思わず「さすがにそれは無理あるだろ」とツッコミの一つでも入れたくなるほど。

前作の良さって、やっぱりどんなにブリジットがドジ踏んでも自虐的なギャグをやっても、
彼女がダーシーと結ばれるためにひたむきな姿を見せたり、健気な姿があったことに最大の魅力があったはず。
それがドタバタ劇で笑わせることに終始してしまったことで、前作にあった良さがほとんど失われてしまったのが残念。

そうじゃなきゃ、ダーシーがブリジットとの交際を続けること自体に説得力が持てないし、
お互いに遠回りしながらも、空回りしながらも、収束する方向に向かわないと映画が成り立たないですからね。
ダーシーはダーシーで第1作から、どこか煮え切らないところがある男性なのですが、ブリジットに一目惚れしたのか、
どんなにブリジットがやらかしても寛容に構えているし、ありのままのブリジットが好きだという感じですからねぇ。

冷静にこの第2作を振り返ると、タイトルにあるような“日記”を読んでいるような感覚は無いんですよね。
この辺はビーバン・キドロンのヴィジョンがどうだったのかは分かりませんけど、もっと大胆に脚色して欲しかった。
個人的には第1作のときにあったような、自らツッコミを入れてしまう部分は残して、“日記”感は出して欲しかった。
ヘレン・フィールディングの原作は大ヒット小説だったのでファンも多かったでしょうが、映画らしさは追求して欲しい。
(まぁ・・・ヘレン・フィールディング自身が脚本に加わっているので、大きく改変する気はなかったのでしょうけど・・・)

正直、続編を製作するという企画自体、少々無理があったのではないかと言わざるを得ないし、
レニー・ゼルウィガーの気合の入った役作りは素晴らしいものがあるけど、それでもカバーし切れてはいないなぁ。

やっぱり、この手の恋愛映画って「大方の予想通りの展開で、ハッピーエンドを迎える」ということ自体が
ある種のセオリーのようではあるので、そのセオリーを外すことは難しいし、外すと映画として崩れることが多い。
それでいながら、分かり切ったストーリー展開でありながらも、恋愛映画の醍醐味をポイント外さずに盛り込んで、
しっかりと楽しませて、最後は観客に幸せな気持ちになってもらうということで、実はハードルが高いものだと思う。
これだけ映画の歴史を重ねれば、数多くの条件で恋愛映画が作られてきているので、それは尚更のことです。

それでも、この原作を映画化するとプロダクションが決断したわけですから、
第1作の良さを踏襲しながらも、新しいブリジットの魅力が描かれるのかと思いきや、そうはならなかったのが残念。

もう一つ感じたのは、前作はブリジットの父親との交流も一つのキー・ポイントだったと思う。
暴走する母親をよそに、家族で唯一の味方がブリジット。そして、ブリジットの最大の理解者は父親だった。
そんな親子愛がベースにあっただけに、第1作の中でも“清涼剤”のような役割だったはずなのに、本作は皆無。
この親子愛はもっとしっかり描いても良かったなぁ。せっかく前作に続いて、ジム・ブロードベントが出演したのに・・・。

本作を2010年代前半に初めて観ていて、当時からこれ以上のシリーズ化は止めた方がいいと思っていたのですが、
どうやら2016年に第3作『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』が製作されたんですね。
しかも、2025年には第4作も劇場公開される予定で、正にレニー・ゼルウィガーのライフワークなシリーズです。

それだけ、ヘレン・フィールディングの原作も根強い人気があって、映画化も成功だったということでしょう。

ただ、個人的に本作は第1作の良さを上手く踏襲できなかった時点で、どうしても支持できませんね。
企画自体に無理があったのか、監督交代が響いたのかは分かりませんが、いずれにしても見劣りする続編だ。。。
(でも、不思議なことにシリーズの第3作監督は第1作のシャロン・マグワイアなんですよねぇ・・・)

レニー・ゼルウィガーの気合の入った役作りで、独身女性の等身大を演じた作品として、
2001年に劇場公開された第1作は世界中で大ヒットした作品となっただけに、本作期待値の高かった続編でした。
コメディに思い切ってシフトした感じですが、やはり第1作のインパクトを超えることは難しかったようですね。

正直、この映画を観ていて物足りないものは一つではないと思うけど・・・
本作で最も足りなかったのは前述したようにブリジットのキャラクターを引き立たせることだったと思います。
さすがにタイで麻薬に関するトラブルに巻き込まれるブリジットというのは笑うに笑えないし、収束方法も雑に見えた。

それでいて、ブリジットとダーシーの恋も盛り上がらないまま映画が進行していくせいか、
映画全体の勢いが生まれず、せっかく第1作で作り上げた本シリーズの良さが踏襲されずに終わってしまった。

前作に続いて、原作者のヘレン・フィールディングにリチャード・カーティスが脚本を担当していますけど、
脚本先行型の作品でシリーズを何作も重ねていくことは、とても難しいですね。もっとオリジナリティを作らないと。
この辺は企画の段階でどういう方向の映画にしていくか、という点でコメディに偏重しようということになったのだろうが、
結果的にこれが上手くいかなかったとい思う。やはり本シリーズはブリジットの恋愛をメインにしなければならないのだ。

スゴい不安だけど...いつかは第3作を観てみようと思います(笑)。
ブリジットが年齢を重ねていく中で、彼女にとって節目となる恋愛を10年置きとかで描いていくのでしょうかね?

(上映時間107分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ビーバン・キドロン
製作 ティム・ビーヴァン
   ジョナサン・カヴェンディッシュ
   エリック・フェルナー
原作 ヘレン・フィールディング
脚本 ヘレン・フィールディング
   アンドリュー・デイビス
   リチャード・カーティス
   アダム・ブルックス
撮影 エイドリアン・ビドル
衣裳 ジェイニー・ティーマイム
編集 グレッグ・ヘイデン
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演 レニー・ゼルウィガー
   コリン・ファース
   ヒュー・グラント
   ジム・ブロードベント
   ジェマ・ジョーンズ
   ジャシンダ・バレット
   サリー・フィリップス
   シャーリー・ヘンダーソン