偶然の恋人(2000年アメリカ)

Bounce

いやいや、誰も聞いてないだろうけど、実は私、こういうのに弱いのよ(笑)。。。

まぁ映画の出来は平凡なのですが、ひじょうに微妙な感覚を上手く映画の中で成立させた、
前向きでも後向きでもない恋愛映画として、僕はそんなに悪い映画ではないと思う。

確かに主人公2人の数奇な運命から始まる恋愛は、
奥深さや訴求する内容ではなく、もっともっと掘り下げることはできた作品かもしれません。
いつからあれだけ傲慢だったバディが心を入れ替えて、アビーを愛し始めたのかもよく分からないし、
2人の感情が盛り上がっていく過程も明確とは言えず、思わず“一時の恋心”なのではないか?と疑いたくなる。

野球観戦のエピソードがあって、ここから2人の恋愛が動き始めるという設定なのですが、
個人的にはもっと、バディにとってアビーでなければならないとする理由、
そしてアビーにとってバディでなければならない理由を、明確に描いて欲しかったですね。
(まぁだからこそ、“偶然の恋人”なのかもしれませんが、これでは2人の恋愛に説得力がない気がする・・・)

そういう意味で、この映画、僕はラストのあり方に納得性が無いと思う。
ハッピーエンドというほどではないにしろ、お互いに歩み寄る良いラストではあるのですが、
ホントに“偶然の恋人”であれば、長続きするとは到底思えぬ関係で、にわかに胡散臭い。
ましてやアビーには子供がいるわけで、アビー自身の気持ちも中途半端なら、尚更のことなんですけどね。
というわけで、2人の“決意”の深さが不明瞭になってしまっているのが、ひじょうに苦しいところなんですね。

バディという男を見ると、確かに難しい立場なんですよね。
それが運命だったとは言え、自分が渡したチケットの航空便に搭乗して、事故死してしまったグレッグ。
彼が死んでしまったことに対する呵責の念から、バディはアルコール依存症に陥り、
その依存症から脱却するためにと、バディはグレッグの家族と会い、罪の意識を拭う決心をするのです。

これって、たぶん賛否両論な行動なんですよね。
遺族の立場から見れば、これはマスタベーション以外の何物でもないと断罪されるかもしれません。

それでもバディは、おそらくこうでもしなければ、もっと精神的に追い込まれていたでしょうし、
答えの出ない人生の迷路に迷い込んで、ずっともがき苦しんでいたのかもしれません。
でも、最初っから真実を知っていれば、アビーは拒絶していたことは間違いないでしょうね。
それを考えると、どう行動しても、彼らは過去を振り払うことができなかったでしょうね。

但し、それを言い訳にして人生を前に進ますことができないのは、
今の僕の個人的な意見から言えば、やはり短い人生を無駄にしているだけという気がしちゃうんですよね。
(それでも当事者になれば、そう簡単に割り切ることはできないのが現実でしょうが...)

まぁただ・・・アビーを演じたグウィネス・パルトロウが良かったですね。
この映画、実に彼女に救われています。20代にして、この未亡人の空気を表現できたって、凄いっすわ(笑)。

確かに男性(バディ)の主観で見ると、思わず支えたくなる、そんな気持ちにさせられます。
いや、それは僕個人の趣味というだけかもしれないけど(苦笑)、ホントに上手かったと思いましたけどね。
ひょっとすると、彼女がオスカーをもらった『恋におちたシェイクスピア』よりも良かったかも(笑)。

バディは自分がどんなにイヤな奴であったかを悟りますが、
映画の冒頭のシカゴの空港のバーでのシーンで、ナターシャ・ヘンストリッジ演じるミミをナンパしようとして、
グレッグと話すシーンでのバディのイヤな奴っぷりは半端じゃなく、いくら酔っ払ってたからとは言え、
よくまぁ如何にもモテそうなミミをナンパするのに成功したもんだと感心してしまうぐらいだ。

僕はあまり映画を男性向き、女性向きと定義することは好きじゃありませんが、
この映画は恋愛映画とは言え、男性よりも女性からの支持の方が集めにくいかもしれません。
前述した、アビーの境遇を見て、彼女を「支えてあげたい!」と思っちゃった世の男なら(笑)、
この映画はそこそこ楽しめるでしょうし、むしろ女性の目線から見ると、「何、甘ったれてんのよ」となるかも。

但し、僕はこの映画、あまり演出面で面白味に欠けるのが気になりますね。
バディとアビーがお互いに交流を深め、愛し合うまでの過程はもっとキッチリ描いて欲しいし、
本来はひじょうに大事であったはずの野球場でのシーンやその後のカフェでのシーンなどが、
ひじょうにアッサリと“流して”しまったかのようで、これは映画として勿体ないことだと思う。
監督のドン・ルースはシナリオも書いているわけで、映画の主導権を握っていたはずですから、
もっと脚本の段階から工夫の余地はあったはずで、全体的に当たり障りの無い描写に終始したのは気になる。

それと、バディとアビーはお互いに想いを寄せる雰囲気は出してても良いんだけど、
もっとプラトニックな恋愛関係を引っ張ったほうが、映画に説得力が出たと思いますね。

あと、ビックリしたのは映画の冒頭のタイトルバックで、
シカゴの市街地を旅客機が飛ぶシーンを、合成映像で表現するのですが、
これが本作製作の1年後に発生した「9・11」を想起させる描写で、かなりビックリしてしまった。
(ひょっとすると、本作の公開があと1年遅れていたら、あのシーンは修正されていたかもしれません・・・)

まぁ大ヒットする類いの映画とは言えませんが、
どこか脆く、もどかしさが目立つ恋愛劇が好きな人にはオススメしたい作品ですね(笑)。

(上映時間106分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ドン・ルース
製作 スティーブ・ゴリン
    マイケル・ベスマン
脚本 ドン・ルース
撮影 ロバート・エルスウィット
音楽 マイケル・ダナ
出演 ベン・アフレック
    グウィネス・パルトロウ
    トニー・ゴールドウィン
    ジョー・モートン
    アレックス・D・リンツ
    ナター・シャ・ヘンストリッジ
    ジェニファー・グレイ
    ジョニー・ガレッキ