ボビー・コールドウェル/ジャパン・ツアー2016

Bobby Caldwell/Japan Tour 2016

2016年7月22日(金)[わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)]

       

01 Special To Me スペシャル・トゥ・ミー
02 Stay With Me ステイ・ウィズ・ミー
03 Sherry シェリー
04 Heart Of Mine ハート・オブ・マイン
05 Break Away ブレイク・アウェイ
06 All Or Nothing At All オール・オア・ナッシング・アット・オール
07 Let It Be Me レット・イット・ビー・ミー
08 Loving You ラヴィング・ユー
09 All Of My Love オール・オブ・マイ・ラヴ
10 Jam Session -
11 What You Won't Do For Love 風のシルエット
12 I Only Have Eyes For You 瞳は君ゆえに
13 Miami Nights マイアミ・ナイツ
アンコール
14 Mercy マーシー
6年ぶりのボビー・コールドウェルの札幌公演。
直近では2009年、2010年と札幌に来ておりますが、本人のコメントだと初来日の1979年にも
札幌に来ていたようで、その時は「雪が降って、積もっていて驚いた」とMCがありました。

ボビー本人、よっぽど日本が好きなのか、今はマーケットとして日本が主力なせいか、
ほぼ毎年、日本には来ており、ビルボード東京ではよくコンサートをやっています。

コンサートが始まったのは、ほぼ定刻の19時。
会場は8割は埋まっていたのですが、満席というほどではなかったかなぁ。

で、まずはバンドメンバーが演奏をはじめて、去年、ここでクリストファー・クロスの公演を見たときと
同じようにMCでボビーのことを紹介して、ステージの左側からコミカルな動きと、軽快なステップで登場。

すぐに Special To Me(スペシャル・トゥ・ミー)を歌い始めたのですが、ここからが大問題(笑)。

元からこんな感じなのか、それともこの日の調子が凄く悪かったのか・・・
本人も Heart Of Mine(ハート・オブ・マイン)を歌い終わった後で、「なんだか喉の調子が悪くて、お詫びします」と
MCがありましたが、そのコメント通り、凄まじく音程を外すし、とにかく声が出ていない。
ヨレヨレのシャツにジャケット羽織って登場して、落ち着きなく立ち位置をコロコロ変えて歌うし、
無理矢理、声を出そうと踏ん張るもんだから、余計に大惨事になってしまったかのようで、かなり微妙な雰囲気に。

早く終わらせたかったのか、何なのか、よく分かりませんが、
曲と曲の間も妙に短くって、特に前半はボビーの休む間が無く、喉の調子を整えるタイミングもありません。
力技でアンコールまでこなして、最後まで歌い上げたのは流石のプロ意識ですが、
あれだけコンディションが悪いなら、内容をガラッと変えるか、直前の変更が不可能なら中止かなというレヴェル。
(・・・と言うか、他のミュージシャンなら中止になっていたかもしれません)

さすがに Stay With Me(ステイ・ウィズ・ミー)なんかは、途中で咳もしてたし、かなり聴いていても苦しそうでね・・・。

Heart Of Mine(ハート・オブ・マイン)の後奏では、得意のピアニカを弾き始めて、
随分と長いセッション風になるのですが、この曲では途中から、ドラムセットの前に置かれた
飲み物の入ったコーヒーカップを持ちながら歌ったり、ヴォーカルの合間でミネラルウォーターのペットボトルを取って
歌いながら一生懸命フタを開けようとして、慌てていたらフタを床に落として転がしてしまうなど、メチャクチャでした(笑)。

私も過去、何度かコンサート行ってますけど、さすがにあんな光景は初めて見た(笑)。

ボビーは必死にプログラムをこなそうとしているのは分かるし、
おそらく途中で薬だと思うのですが、得体の知れないものをスプーンで口にしていて、
途中から若干、序盤の苦しさは無くなったようにも感じられたのですが、他のメンバーも必死にフォロー(笑)。

どうやら、いつもボビーのコンサートはそうらしいのですが、
途中でサックスのアンドリュー・ニューの圧倒的なソロ・パフォーマンスがあったりして、
まるで演歌のリサイタル・ショーみたいに会場が明るくなって、客席の間の通路に出て、練り歩きながら演奏するという
大サービスのおかげで、コンサートの序盤の悪い意味での重苦しさは、ほぼ無くなりましたね・・・。

ただ、正直言って、これでは誰のコンサートなのか、よく分からない・・・(苦笑)。

終盤になって、お約束のWhat You Won't Do For Love(風のシルエット)のイントロのサックスで
会場は大盛り上がりで、この頃にはボビーの声も更に良くはなっていた感じでしたが、
根本的なところなんだけど、結構、原曲のキーで歌おうとしていたのですが、まだ、そんな声出るのだろうか?

個人的には、無理矢理、昔のキーで歌おうとするぐらいなら、アレンジすればいいのに・・・と
思っちゃう人なので、この日のボビーの歌を聴いていて、どこか無理矢理な感じが拭えなかった。

アンコール前に、“眠らない街、ニューヨーク”のフレーズを引き合いに出して始まった、
新作からの Miami Nights(マイアミ・ナイツ)はなかなか良かったと思うし、アンコールの Mercy(マーシー)も悪くない。
こういう新作アルバムからの曲の方が、やはり今のボビーに合った“設計”になっているから、しっくりくるなぁ。

バンドメンバーが煽ったおかげで、アンコールでは無理矢理、
スタンディングで見せられましたが、ボビーはやはり早く下がりたかったのでしょうね。
挨拶もほどほどにして、急ぎ足でステージから下がって、客電が点いたのは20時30分ジャスト。
コンサートの中身自体は、正味90分ないぐらいのステージで、やや物足りなさが残りましたね。
(とは言え、あのコンディションではあれ以上の長いステージには耐えられなかっただろうけど・・・)

事前にyoutubeなどで観ていた分では、あそこまで声が出ないということはなさそうで、
おそらくコンディションが良ければ、このようなことはないのだろうけど、逆の見方をすれば、
洋楽ミュージシャンが来ること自体が著しく少ない札幌に於いては、あまりコンサートの内容が良くないと、
「もう二度と行くもんか!」と憤慨する人が多く出てしまうのではないかと危機感もなくはないのですけれども・・・。

必死に声を出そうと熱唱ポーズをとるボビーは、まるで酔っぱらいの会社の上司のカラオケを見せられてるような、
どこか妙な錯覚に陥ってしまうとことが、僕の中ではコンサートの最後の最後まで感覚が抜けなかった(笑)。

ボビーのコンディションは最悪でしたが、サックスのアンドリュー・ニューの頑張りでなんとかフォロー。
しかし、おそらくあれでは往年のファンも、たまたま行くことになった人も、ガッカリな内容でしょう。
厳しい意見かもしれませんが、僕には近所のカラオケ好きのオッサンが歌っているレヴェルと大差なく感じました。
勿論、コンディション悪い中、最後まで乗り切ったプロ意識はたいしたもんですが、もっと挽回して欲しかったです。
それが不可能であれば、賛否はあるかもしれませんが、喉が不調であると開演時にアナウンスしてもいいと思います。

Sherry(シェリー)や All Of My Love(オール・オブ・マイ・ラヴ)など、
初期の佳曲を聴けたという意味では、本来的には充実した内容になるはずだったのですが、
やはりコンディション不良が最後の最後まで祟ってしまった感じですね。おそらく数曲、当初の予定から削ったのでしょう。

どこか、ボビーの評価を下げるだけのコンサートになってしまったようで残念なのですが、
ある意味では、僕自身もプロのパフォーマーについて、よく考えることになった、良い機会になりました。