ブルー・ストリーク(1999年アメリカ)

Blue Streak

人気コメディアン、マーチン・ローレンス主演の刑事アクション・コメディ。

今であれば日本で劇場公開されることすら、アヤしいレヴェルの企画ではありますが(笑)、
本作劇場公開当時は『バッドボーイズ』の余波もあってか、全米では大ヒット作となった上に、
日本でも拡大公開されていた記憶があり、なかなか大きな扱いを受けていた作品でした。

監督はコメディ映画専門で活動していた、レス・メイフィールド。
90年代はTVも含めて、随分と活動的でしたが、00年代に入ると一気に衰退してしまったのか、
今となってはハリウッドでも消息不明状態で、映画を製作している話しは全くありません。

映画はロサンゼルスで宝石強盗を目論んでいたマイルズが、
仲間の裏切りにあって、目的のダイヤをビルの空調ダクトの中に隠したまま警察に逮捕され、
2年間の服役を務め上げ、いざ現場を確認したところ、そこはロサンゼルス市警のビルになっていたことから、
マイルズが偽造したIDを作成して、強盗殺人課の刑事に扮してロサンゼルス市警に潜入するも、
ひょんなことから周囲から高く評価されてしまい、麻薬捜査で大活躍してしまう姿を描きます。

お約束と言えば、そうなのですが...泥棒だったマイルズは
何故か周囲から評価されていき、やることなすこと警察にプラスなことばかり。
ダイヤさえ取り返せれば、警察に用などないマイルズなのですが、次第にそうはいかなくなってしまいます。

映画は多少のご都合主義が目立ちますが、こういったマイルズの“成功劇”を
実にテンポ良くトントン拍子で見せていくため、確かに面白いように映画が進んでいく印象だ。

日本ではそこまで知名度は高くはないけれども、
全米では人気コメディアンに駆け上がったマーチン・ローレンスの口八丁手八丁なやり取りが面白く、
80年代のエディ・マーフィの90年代版といったイメージで、とにかく彼の勢いを象徴した作品だと思います。
今になって思えば、本作が大ヒットしていれば、マーチン・ローレンスはもっと日本でも人気が出ていたことでしょう。

そう思って観ると、本作はマーチン・ローレンスにとって、一つの大きなチャレンジであったのかもしれません。

どこかありがちなストーリー展開ではあるのですが、映画の最後の最後はチョットだけ特徴的だ。
何とも不思議な爽快感すら感じさせる後味で、作り手の工夫を感じさせるエンディングにはなっている。
おそらく莫大な予算が投じられた映画というわけではないだけに、クライマックスにほとんどの予算を投じたのだろう。

かなり破天荒でご都合主義なラストなので賛否両論かもしれませんが、
あくまでコメディ映画として考えると、個人的にはこれは許容範囲内。この映画のテンポに慣れてしまったせいか、
実にすんなりと受け入れられてしまったことを考えると、なかなか悪くないラストのまとめ方だったのだと思う。

やはり日本ではマーチン・ローレンスの知名度もあってか、
例えば全盛期のエディ・マーフィの映画のように、“名前だけで客が呼べる映画”というわけではなかったのだろうけど、
それにしても、十分に映画をヒットさせるだけの魅力はある作品だと思います。これは“売り方”の問題もあります。
今となっては、すっかり忘れ去られてしまったかのような映画なだけに、凄く勿体ない結果としか思えないのですよね。

麻薬取引に保税倉庫が使われるという、妙に現実的な設定の犯罪を摘発するのに、
主人公の野生の勘というか、泥棒としての性(さが)が警察捜査にプラスに機能するというのは、
今では例えばハッカーのような、サイバー犯罪の捜査を行うために、警察に検挙されたことをキッカケに
逆に警察にスカウトされるなんて話しと似てはいますが、本作はスカウトではなく、自らダイヤを取り戻すためとは言え、
警察組織内に単身で潜入していくという設定自体は、なかなか面白い発想で、チョット斬新な内容ですね。

まぁ・・・これだけユニークな発想で、実にテンポの良い映画を撮れたわけですから、
この映画の作り手としても快心の一作だったと思うのですが、本作の後に続くものがでなかったのは残念。

そういう意味では、主人公の同僚としてやたらと彼を高く評価していた、
ウィリアム・フォーサイス演じるベテラン刑事と、ルーク・ウィルソン演じる少しドジな新米刑事、
この2人のキャラクターにインパクトが足りなかったということ、そして紅一点となるヒロインの存在が
本作の中では実質的に不在であったという、この2点が難点として大きかったのではないかと思います。

とは言え、本作はもっと評価されてもいいと思います。
ご都合主義なラストのあり方にしても、個人的には許容範囲。むしろ、上手くやった方ではないかと思います。

正直言って、日本での本作の扱いに関しては、マーチン・ローレンスの知名度の低さが
影響しているとしか思えず、過小評価に終わってしまったことが残念でなりません。
これが本作劇場公開当時であれば、仮にクリス・ロック主演であったら、また結果は変わっていたかもしれません。

おそらく当時のマーチン・ローレンスはエディ・マーフィの全盛期に対する憧れは確実にあったと思います。
本作でも随所にエディ・マーフィの口八丁手八丁な芸風に対するオマージュを感じさせる部分が多くあり、
ホントにエディ・マーフィが80年代に演じていそうな映画という感じで、悪く言えば、オリジナリティには欠けるかも。

前述の通り、日本でも拡大規模で劇場公開されておりましたが、
残念ながら今となっては完全に忘れ去られた感の強い映画となってしまいました。それにはあまりに勿体ないです。
映画のテンポは良いし、良い意味でハリウッドの安定した力が発揮された作品という印象が強いですね。
そういう意味では、レス・メイフィールドはもっと積極的に映画を撮れば良かったのに・・・という気がします。

とは言え、埋もれてしまったにも理由があって、もっとマーチン・ローレンスならではの発想があれば、
彼なりに一つの時代を築けたはずで、本作自体もヒットしていただろうし、末永く愛される映画になっていたでしょう。
やはり生かすも殺すも映画は作り手次第で、映画そのものの“武器”を明確にしなければ、映画は光り輝きません。

まぁ、素性がよく分からないにも関わらず、偽造した推薦書で簡単に信用されたり、
現実離れした部分もある内容ではありますが、これらは映画の価値を損ねるような難点とは思えない。

ただただ・・・何か一つでもマーチン・ローレンスの個性が生きて、
“オンリー・ワン”な映画にブラッシュ・アップされていれば、映画の評価は変わっていただろうと思えるだけに残念。
辛らつな言い方をすると、本作の内容ならどんな俳優でも出来そうな映画に見えてしまっているのです。
でも、絶好調の時代のエディ・マーフィって、そうじゃなかったと思うんですよね。これって、凄く大きな差です。

気軽に楽しめる分には良い映画なんだけど、なんだか残念に思える部分も大きいんですよねぇ・・・。

(上映時間94分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 レス・メイフィールド
製作 トビー・ジャッフェ
   ニール・H・モリッツ
脚本 マイケル・ベリー
   ジョン・ブルメンタール
   スティーブン・カーペンター
撮影 デビッド・エグビー
音楽 エドワード・シェアマー
出演 マーチン・ローレンス
   ウィリアム・フォーサイス
   ルーク・ウィルソン
   ピーター・グリーン
   ニコール・アリ・パーカー
   デイブ・チャペル
   グレアム・ベッケル
   ジョン・ホークス
   オクタヴィア・スペンサー