ブラッド・ダイヤモンド(2006年アメリカ)

Blood Diamond

激しい内戦を繰り返すシエラレオネで、
アフリカで育った白人男性アーチャーが現地の大佐からダイヤの密輸の手口を習い、
単独でロンドンの宝石会社に販売していた中で、拘留された牢獄の中で偶然に聞いた、
大型のダイヤモンドに目を付け、それを発見したとされる村人を相棒にして、ダイヤを捜索するサスペンス・アクション。

監督は『グローリー』などのエドワード・ズウィックですが、
スケールのデカい臨場感溢れる戦闘シーンを交えて描いていて、なかなか迫力ある映像だ。

後述しますが、トータル的には映画の出来は及第点レヴェルかなという印象なのですが、
こういう映画をエンターテイメントに味付けして、アッサリ作れてしまうあたりが、ハリウッドの底力に感じる。
中には、こういう題材であれば徹底した社会派な映画に仕上げるのだろうが、本作はどこかエンターテイメントだ。

この頃から、単身でワイルドに活躍する姿を演じるようになったディカプリオですが、
こういうキャラクターがよく似合う。本作の後の『ワールド・オブ・ライズ』といい、どこか危険な男がよく似合う。
相棒役となるジャイモン・ハンスウは、本作でオスカーを獲得しましたが、確かによく頑張っています。

映画で描かれるのは、西アフリカのシエラレオネが舞台で、
反政府武装勢力のRUFと呼ばれる武装集団の蛮行に始まります。RUFは政府組織を指示したり、
平穏に暮らしている集落を次々と襲撃し、虐殺行為を繰り返していました。その中で、労働者として使えそうな者は
奴隷として、戦士として使えそうな者は洗脳と訓練をして、虐殺行為に加わる戦士として“育て”上げます。

一方で政府軍は政府軍で理不尽な戦闘を繰り返し、一般市民を巻き添えにしています。
そこに政府軍が協力を欧米の民間軍事会社に依頼し、入り乱れた戦闘状態が泥沼化し、大変な状況になっていました。

遠く離れた欧米でも、シエラレオネの惨状をどこか他人事のように見ていたかもしれませんが、
一方で欧米の市場に流通するダイヤモンドは、ダイヤの採掘がないシエラレオネの隣国リベリアが、
実は多くの輸出をしているなど、不可解なデータがあり、実は内戦の地シエラレオネから密輸されたものと判明しました。

しかも、そのダイヤの採掘には現地人を奴隷化し強制労働させた産物とも言われており、
更にロンドンのダイヤモンド取扱業者が市場での陳腐化を防ぐ目的で、多くのダイヤの流通を制限し、
市場を支配するといった行為が平然と行われることを、女性ジャーナリストのマディが突き止めていました。

そこでシエラレオネからのダイヤの密輸に際して、主導的に動いていたのがアーチャーというわけで、
幻のピンクに輝くダイヤモンドを求めて、内戦の最中のシエラレオネで命がけの争奪戦を展開します。

映画の冒頭の目を背けたくなるようなRUFの虐殺行為の凄惨さや、
誘拐した子供たちを洗脳し、訓練して戦士に仕上げるトレーニング・シーンなどは実に衝撃的で、
映画のスタートから一気に緊張感MAXの出だしで、いきなりエンジン全開な感じでビックリさせられます。

この辺は同じエドワード・ズウィックが撮った映画という意味でも、
例えば03年の『ラスト サムライ』とは大違いなぐらいにペース配分の異なる映画の出だしで、
少々、面喰う部分もあるくらいでした。そして、ディカプリオ演じるアーチャーをメインに描くようになってからも、
次から次へと襲いかかる危機の連続に、息つく暇ないくらいのスリリングさで、実に良く出来ていると思う。

個人的には、エドワード・ズウィックのベストな演出というくらい気合の入った良い出だしで、
「これは!」と高鳴る期待を抑え切れない、とても大きな期待を抱かせる映画のスタートでした。

映画も中盤までは結構良かった。紅一点的ではありますが、女性ジャーナリストのマディを演じた、
ジェニファー・コネリーはやはり目を引く存在感だし、一時的な感情の高ぶりはありながらも、
しっかりと抑えに抑えた男女の感情の交錯を表現した部分は、イージーにならなかった作り手の冷静さが光る。
(いつものエドワード・ズウィックは、こういう展開になるとロマンスを優先して描いたイメージがあります)

しかし、僕の中では映画の終盤に差し掛かったあたりから感じ始めていたのですが、
どこか悪い意味で冗長というか、ヴォリューム感のあるエピソードが多くなったせいか、
どこか詰め込み過ぎてしまい、チョット気後れするぐらいに「長いなぁ・・・」という印象が強くなってしまったのです。

それでも上映時間は3時間コースだったわけでもないので、
後から振り返って考えると、きっと映画をスリムにできるポイントが何箇所もあったのではないかと思う。

作り手も、おそらく史実に忠実に描くということを前提に、アフリカの現実を描きたいという
意図がもの凄く強かったのではないだろうかと思うのですが、全体的に詰め込み過ぎてしまったように感じます。
その意気込みは決して間違いではなかったのですが、もう少し映画全体のバランスを考えて欲しかったかな。

それと、映画の終盤、ジャイモン・ハンスウ演じるソロモンに関する後日談であるかのように、
何点かエピソードが紹介されるのですが、これが僕には完全に余計なシーンとしか思えなかった。
勿論、これはこれでノンフィクションなのだろうし、映画で描かれた事柄に間違いがあるわけでもない。
ただただ、映画全体で考えると、明らかに映画をスリムにできるポイントであろうと思えるということです。

息つく暇ないくらいに連続するピンチが続くアクション映画として、
余韻を楽しむかのように、ホッとするシーンを僅かに描くくらいの塩梅が丁度良いと思うのですが、
これが「まだまだ続きますよ」と言われているくらいに、ロンドンに渡航してからのシーンが続きます。

これが本作の特徴という意見もあるのかもしれませんが、僕には完全に余計なシーンにしか思えなかったですね。

この終盤のシークエンスで、僕の中での印象は一気に落ちてしまったのですが、
これを除くと、「エドワード・ズウィックの監督作としてはベストでは?」と思えるぐらいの臨場感と緊張感だ。
これはそうそう簡単に出来る仕事ではなく、ロケ地のロケーションも素晴らしく、実に映像が生々しい。

ちなみにアーチャーは模範的に生きてきた人間ではない。
しかし、ソロモンと行動を共にし、ダイヤを探したという事実は彼なりの友情の証だったのでしょう。
映画の序盤に語られていますが、彼は半ば武器商人としても暗躍していたようで、
政府軍にも反政府軍にも、内戦で使われる武器は彼が仲介して、組織に供給されていたわけで、
武器商人が暗躍する限りは、戦争に終わりはないという事実を、突きつけられたような思いにさせられる。

アーチャーの本音は分からないが、戦争での悲劇は日常の“風景”と化し、
戦争もビジネスチャンスであると思っているがゆえに、危険な地域に単身で乗り込み、武器を供給する。

それもあってなのか、ディカプリオ演じるアーチャーを過剰にヒロイックに描くことを避けており、
やはりワイルドかつハングリーに生きる白人男性という位置づけで描くに留めている。
だからこそ、僕には映画の終盤にあるような、アーチャーが絶景の地で電話するシーンなんて、
「なんで、こんなにセンチメンタルな空気で描くんだ?」と、少々、場違いな空気に感じられてしまったんですよね。

この辺も含めて、僕の感覚とは少しずつ合わない部分が積み重なって、
映画トータルとして考えたときに、どうしても良い出来の作品とは思えなかったというところですね。。。

(上映時間143分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 エドワード・ズウィック
製作 ジリアン・ゴーフィル
   マーシャル・ハースコビッツ
   グレアム・キング
   ダレル・ジェームズ・ルート
   ポーラ・ワインスタイン
   エドワード・ズウィック
原案 チャールズ・リーヴィット
   C・ギャビー・ミッチェル
脚本 チャールズ・リーヴィット
撮影 エドゥアルド・セラ
編集 スティーブン・ローゼンブラム
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 レオナルド・ディカプリオ
   ジャイモン・ハンスウ
   ジェニファー・コネリー
   マイケル・シーン
   アーノルド・ボスルー
   カギソ・クイパーズ
   デビッド・ヘアウッド
   ベイジル・ウォレス

2006年度アカデミー主演男優賞(レオナルド・デイカプリオ) ノミネート
2006年度アカデミー助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) ノミネート
2006年度アカデミー音響編集賞 ノミネート
2006年度アカデミー音響調整賞 ノミネート
2006年度アカデミー編集賞(スティーブン・ローゼンブラム) ノミネート
2006年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度ラスベガス映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度ワシントンDC映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度セントルイス映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞