ビバリーヒルズ・コップ3(1994年アメリカ)

Beverlyhills Cop V

エディ・マーフィの大人気ぶりを過熱させた、大ヒットしたアクション・コメディの第3弾。

今回の監督は、エディ・マーフィのジョン・ランディスでしたが、
まさかまさかのエディ・マーフィ自身、「あの映画には出演すべきではなかった」とコメントするくらいですから、
映画の出来自体はシリーズでもダントツのワーストでしょうね。作り手の志向があまりに中途半端過ぎました。

まぁ、愛すべき失敗作と言えば、聞こえはいいような気がしますが、
これは確かに興行的にも失敗するわけですね。前作までの流れを上手く汲めていません。

ジョン・ランディス自身が、どちらかと言えば、コメディ映画を主体に撮ってきたディレクターではありますが、
例えば84年の『眠れぬ夜のために』など、そこそこ上手く撮ったシリアスな作品はあるだけに、
本作にしても、コメディ色は残すとしても、もっと上手い仕上げをすることはできるだけの手腕はあったはずだ。

既にエディ・マーフィも、90年代に入ると勢いが衰えを見せてきており、
徐々に出演作品もヒットしなくなってきたせいか、本作も商業的に大失敗してしまいました。

確かに前作までが何故、ヒットしたのかという点を無視するかのように、
どこか軽いタッチで自分のカラーを押し通そうとして、エディ・マーフィのコミカルさに頼ったジョン・ランディスの
責任は大きく、エディ・マーフィと幾多のヒット作を作ってきた過去があるとは言え、本作はチョット軽率でしたね。

そもそも冒頭にデトロイトの板金工場が襲撃されるシーンで、
流れる音楽に合わせて工員が踊り始めるというシーンも、どこか場違いな演出でいきなりつまづく(笑)。

この辺はジョン・ランディスも“いつもの調子”で演出したのだろうけど、
やはり本シリーズのファンからしてみれば、待望の7年ぶりの続編であっただけに大きな戸惑いがあったでしょう。
オマケにエディ・マーフィの良い意味での胡散臭さも抜けてしまい、どこか洗練された印象が拭えません。
ジョン・ランディスなりに頑張って、アクション演出も施していますが、映画自体に“波”が生じていません。
つまりは映画のテンポが凄く悪いんですね。監督が違えば、もっとマシな出来になっていたかもしれません。

「これではエディ・マーフィも後悔してて当然だわ・・・」とも思うけど、
彼は彼でやっぱり過去の栄光を忘れられないようで、アクセルというキャラクターにおんぶに抱っこ。
結局、何一つ工夫の感じられない内容で映画が終わってしまうというのは、あまりに悲しかったですね。

もう一つあるのは、前作まで登場していたジョン・アシュトン演じるタガート刑事が
いつの間にか隠居したキャラクター扱いされてしまい、人気ある脇役キャラクターを削らざるをえなくなったこと。
相変わらずトボけた持ち味で人気のジャッジ・ラインホルド演じるローズウッドは出てくるけど、
やっぱりこのシリーズはタガートとローズウッドの2人が揃わないと、どこか物足りないことは否めませんね。

ジョン・ランディスもそのことは気付いていたと思うのですが、
そこをエディ・マーフィの個性で逃げ切ろうとしたことが間違いでしたね。中途半端にヘクター・エリゾンド演じる、
退職後に警備会社への再就職を目論んでいたベテラン刑事を登場させて、火に油を注いでしまった感じです。

個人的には、やはり脇役キャラクターはもっと大切にして欲しかったですね。
タガートに匹敵するぐらいのキャラクターが出てこないと、やはりローズウッドも映えませんね。
その役割を果たすべきだったのがヘクター・エリゾンドだったことは分かりますが、どうも空振りですね。
結果的に僕にはローズウッドが孤立してしまったように見えてしまい、なんだか可哀想でした。

やはり本シリーズは基本、アクションを主体とした考え方をした映像作家の方が上手くまとめますね。
正直言って、ジョン・ランディスの起用はプロダクション側のミスでもあると思います。
正直、他のディレクターがメガホンを取っていたら・・・と思えてしまうあたりが、とてもツラい。

劇中、登場してくるロサンゼルス市内にある遊園地“ワンダーランド”はなんだか面白そうな遊園地だ(笑)。
『スターウォーズ』をモチーフにしたようなアトラクションで、地下鉄が脱線してきたり、水責めにあったりする、
動きの少ないアトラクションですが、あまり見たことがない大がかりなアトラクションで迫力がありそうだ。
(おそらくジョン・ランディスが懇意にしていたマイケル・ジャクソンの“ネバーランド”をモデルにしたのだろうけど・・・)

ジョン・ランディスがアクション演出を見せたこと自体が意外と言えば意外ですが、
やはり彼の作家性には合わないせいか、どうもシックリ来ないし、結果としてシリーズのファンを失望させてしまいます。

アクション描写にしても、映画の終盤でローズウッドが撃たれるのですが、
随分と派手に撃たれたように観えたものの、難なく生き残っており、対する悪党たちが随分とアッサリ死んでしまう。
多少のご都合主義は目をつぶるべきと考えていますが、お粗末な演出でこれも失望させる要因かもしれません。

結果として、ラジー賞にもノミネートされてしまいましたから、
劇場公開当時、評論家筋にも酷評されてしまい、商業的にも大失敗とのことで散々なものでした。
皮肉にも、これはエディ・マーフィのコメディ俳優としての人気と比例していたようにも思いますね。
90年代は『ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』がヒットしたくらいで、基本、低迷してましたから。

何故か大失敗した第3作の製作から20年以上が経過した今になっても尚、
第4作製作の噂が絶えないのですが、エディ・マーフィも本作の出来を後悔しているからこそ、
第4作への意気込みはまんざらでもないようですが、未だ第4作は現実化していません。

このシリーズは根強い人気を誇りますので、どうやら第4作を望む声は多いようですが、
ハリウッドでのエディ・マーフィの存在感が本作の頃以上に薄らいでしまったため、影響力の弱体化は否めません。

ちなみに本作のカメオ出演はとっても豪華でビックリさせられます。
遊園地“ワンダーランド”で列を横入りされて憤慨する客としてジョージ・ルーカスが出演しているのを筆頭に、
アーサー・ヒラーらベテラン映画人たちもカメオ出演しており、何故か凄い人脈で成り立った映画ですね。

これらはおそらく...ジョン・ランディスの人柄のおかげでしょうね。

(上映時間103分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ジョン・ランディス
製作 メイス・ニューフェルド
   ロバート・レーメ
脚本 スティーブン・E・デ・スーザ
撮影 マック・アールバーグ
音楽 ナイル・ロジャース
出演 エディ・マーフィ
   ジャッジ・ラインホルド
   ヘクター・エリゾンド
   ジョン・テニー
   ティモシー・カーハート
   テレサ・ランドル
   ブロンソン・ピンチョット
   ジョン・サクソン
   アラン・ヤング

1994年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ジョン・ランディス) ノミネート
1994年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 ノミネート