ビバリーヒルズ・コップ2(1987年アメリカ)

Beverlyhills Cop U

84年に大ヒットとなった、デトロイト市警の刑事アクセルが
アメリカ西海岸の大都市ロサンゼルスに出張して大活躍する姿を描いたアクション・コメディ。

本作は前作のマーチン・ブレストに代わって、トニー・スコットがメガホンを取ったせいか、
前作よりもエンターテイメント色の強い、尚且つアクション映画としての側面が強い映画に仕上がっている。

おそらく製作当時、本作の作り方は難しかっただろうと思います。
それはシリーズものの宿命ではありますが、何より大ヒットした前作と常に比較される存在だからです。
オマケに監督が交代しているためか、映画のカラーが大幅に変わってしまうと、前作での成功をフイにしてしまう。
そして前作のヒットを支えていたのは、ほぼ間違いなくエディ・マーフィという主演俳優のキャラがあったからだ。

それを考えると、本作のトニー・スコットの仕事は難しかっただろうと思います。

そこで本作が凄いところは、そんなハードルをまるで軽々と乗り越えたかのように、
実にアッサリと素晴らしいエンターテイメントへと昇華させてしまった点で、やはりこういうのを観ると、
トニー・スコットって86年の『トップガン』でもそうでしたが、当時はノリに乗っていたのでしょうね。
この手の映画を撮らせると、正に職人芸を発揮するという、良い意味で如何にもハリウッドらしい映像作家と言えます。

映画の冒頭から市街地の宝石店を襲撃するシーンから、いきなりストイックな雰囲気で始まります。
更に襲撃犯のリーダー格であるブリジット・ニールセン演じるカーラが、ロニー・コックス演じるボゴミル警部を
銃撃するシーンにしてもジョン・ウーばりのスローモーションを駆使した編集に、思わず驚かされる。

それにしても、ボゴミル警部は随分と派手に撃たれてしまうので、
あれだけ撃たれても一命を取りとめて、必死に治療するという展開が信じ難いんだけど・・・(苦笑)。

ある意味でトニー・スコットは自分のスタイルにはできずとも、かなり先取りした演出をしている。

とは言え、本作で今一つになってしまったことは、エディ・マーフィのギャグかもしれません。
相変わらずの調子で展開していくのですが、正直、前作のインパクトが強いせいかパンチに欠ける。
どこか、なんでもかんでもエディ・マーフィにギャグを言わせなければならないとする雰囲気を作ったのが失敗だと思う。

半ば、エディ・マーフィが力技でギャグを繰り出すのですが、その一つ一つに無理を感じてしまう。
やはりトニー・スコットにアクションとコメディの両立というのは、難儀だったのかもしれませんね。

それと、ストイックなアクションは良いんだけど、
映画のクライマックスにある、主人公らが悪党の本拠地を突き止めて突入していくという
ハイライトとなるアクション・シーンはまるで、『フレンチ・コネクション』のクライマックスのよう(笑)。

っていうか、ホントによく似ている気がする。
これはパロディなのかもしれないけど、ジャッジ・ラインホルドがショットガンをブッ放して、
廃屋から結集していた悪党たちが次から次へと降参するかのように出てくる様子なんか、
ホントに『フレンチ・コネクション』にソックリな光景で、これはパロディと言われても不思議ではないぐらい。

ただ、これもスゲェ出来が良いというほどではない。全てが合格点レヴェルな感じ。
でも、本作でトニー・スコットの職人芸のような側面を感じるのは、こういった合格点レヴェルなものを並べて
映画全体を構成できている点で、どこか大きな難点を抱えている状態ではなく、しっかりとエンターテイメントとして
成立させているところが、トニー・スコットの監督作品の良い意味での安定感というところだろう。

80年代はハリウッドもバブリーだったせいか、こういうアクション映画がよく製作されました。
トニー・スコットもその潮流に乗っていたディレクターなだけに、本作も時代を象徴する作品と言えるでしょう。

音楽にしても、アカデミー賞にノミネートされたボブ・シーガーの Shakedown(シェイクダウン)や、
一方でラジー賞にノミネートされた、ジョージ・マイケルの I Want Your Sex(アイ・ウォント・ユア・セックス)など、
如何にも80年代のノリや雰囲気丸出しな選曲で、今観ると異様に懐かしい気分にさせられる(笑)。

続編ということもあって、本作は難しかったと思うのですが、
前作ではジョン・アシュトン演じるタガート刑事が堅物で、アクセルと捜査を共にする中で
如何にお互いに打ち解けて協力関係を築いていくかという点が一つの焦点であったのに対し、
本作ではジャッジ・ラインホルド演じるローズウッド刑事が、アクセルに影響されて更に陽気かつ豪快に行動する
刑事にパワーアップしているという、続編なりの特徴を出すことによって、新たな魅力を引き出そうとしている。

あまり大きな点ではありませんが、ベースとなるトニー・スコットのカラーを生かしながらも、
しっかりとシリーズの特性を見極めて、脇役キャラクターを大切にしようとしている点は好感が持てますね。

ちなみに強盗団の女性リーダー、カーラを演じたブリジット・ニールセンは撮影当時、
シルベスター・スタローンと結婚していて、86年の『コブラ』のヒロインで注目されていたモデル出身の女優で、
本作まではハリウッドで勢い良く活動していましたが、すぐにスタローンと離婚して干されてしまいました・・・。

僅かに前作に及ばぬ出来ではあるかもしれないけど、
シリーズ化の難しさを考慮すれば、エンターテイメントとしては十分な機能を果たしており、
本作自体は十分に成功した作品と言っても過言ではないように思います。コンパクトにまとまっていて、悪くはないです。

欲を言えば、今回もロサンゼルスを舞台にする意義を示して欲しかったですね。
前作はデトロイト市警の刑事が出張して捜査するというアイデアの面白さがあったと思うのですが、
一転して本作はアクセルの個人的な感情だけで、ビバリーヒルズに乗り込んでくるので、全体的に動機が弱い。
いくらローズウッドらに電話で呼ばれたからといって、ここまでやるというのは無理矢理な感覚が否めない。

おそらくエディ・マーフィの映画俳優としてのキャリアも本作あたりがピークですかねぇ。
本作の後は、徐々にヒット作に恵まれなくなってしまった気がしてなりません。

そういう意味でも、本作は一つの分かれ道を示す作品なのかもしれません。

(上映時間103分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 トニー・スコット
製作 ドン・シンプソン
   ジェリー・ブラッカイマー
脚本 ラリー・ファーガマン
   ウォーレン・スカーレン
撮影 ジェフリー・L・キンボール
音楽 ハロルド・フォルターメイヤー
出演 エディ・マーフィ
   ブリジット・ニールセン
   ジャッジ・ラインホルド
   ジョン・アシュトン
   ロニー・コックス
   ユルゲン・プロホノフ
   アレン・ガーフィールド
   ディーン・ストックウェル
   ポール・ライザー
   ギル・ヒル
   クリス・ロック

1987年度アカデミー主題歌賞 ノミネート
1987年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主題歌賞 受賞