ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー(2024年アメリカ)
Beverly Hills Cop : Axel F
長らく噂されていた人気刑事アクション・シリーズの第4弾までもが、Netflixの限定配信かぁ・・・。
まぁ、30年ぶりの続編ということもあって、少々「何を今更・・・」と言いたくなる映画ファンもいたかと思いますが、
いやはや...これ、僕は結構面白かったと思いますよ。映画館で上映されないのが、勿体ないと思えるくらい。
90年代から第4作の製作は噂されていて、企画としては上がっていたようなのですが、
ずっとエディ・マーフィが否定的なコメントを出し続けていたので、なかなかプロジェクトが前に進まなかったのか、
噂が出ては消えを繰り返していましたけど、エディ・マーフィもNetflixと契約することで撮影へと進んだようです。
こういう言い方をするのも良くないですが、少なくとも第3作よりはずっと出来の良いアクション・コメディです。
少し後ろ向きな言い方をすれば、無難な仕上がりという言い方もできなくはないですが、
第1作・第2作の頃のようなノリが上手い具合に現代の時代設定でも蘇っていて、テンポ良くって心地良い。
エディ・マーフィも映画俳優として長らく低迷していた印象が強いですけど、まだまだ元気であることをアピールしてます。
以前の『星の王子ニューヨークへ行く2』もネット配信が中心でしたけど、今後はこういう方向性で活動するのかも。
まぁ、この手の数十年ぶりの続編としてはセオリーになっている、主人公の子供世代を絡めて、
ストーリーを組んでいるわけですが、それでも懐かしい仲間たちも勢ぞろいしているし、ケビン・ベーコンまで出演。
なんだかNetflixでの配信前提の映画も、やたらと豪華になってきているので、時代は完全に“こっちの流れ”ですね。
そのケビン・ベーコンは如何にもという感じの悪役で敵役ですが、想像を超える悪役でもなかったかな。
欲を言えば、真の悪党はケビン・ベーコン以外に実はいた・・・という展開の方が、意外性があって良かったかも。
それでも、まぁ・・・映画は十分に面白かったと思いますよ。冒頭からそれなりに見せ場もありましたし、
老いても尚、強引な捜査を躊躇しないアクセルがデトロイトでも健在だったという始まりで、80年代を思い出す。
本作はキャスティング的にもジョン・アシュトン、ジャッジ・ラインホルドと第1作からの面々も出演しているから嬉しい。
結局は、いわゆる同窓会的なノリの作品になってしまってはいるのですが、この手のノリの映画は最近では珍しく、
本作の場合はこれで良かったのかもしれません。やっぱり、エディ・マーフィのキャラだけではキビしいですからねぇ。
(タガートを演じたジョン・アシュトンは本作撮影終了後に他界してしまったため、本作が遺作となりましたが・・・)
ただ、ジョン・アシュトンもジャッジ・ラインホルドもそこまで出番が多かったわけではなく、
映画の中盤はほぼほぼ、アクセルの娘である弁護士とアクセルと一緒に捜査する刑事とのエピソードがメイン。
正直言って、アクセルが父親という設定自体がピンと来なかったんだけど、不和な親子関係を修復するという
“鉄板”とも言えるストーリー展開にしたことは正解でしたね。少なくともアクセルが良い父親になると思えないですし。
最近はすっかり名前を聞かなくなってしまいましたが・・・
第1作と第2作にも関わっていたジェリー・ブラッカイマーが製作に加わっていて、アクションの見せ方は健在でしたね。
21世紀に入る頃はハリウッドでも絶好調だったジェリー・ブラッカイマーでしたが、当時は結構、否定されていました。
ちなみに酷評に終わった第3作ではジェリー・ブラッカイマーは途中で降りてしまったので、関わってないのですね。
でも、良くも悪くもエンターテイメント性を追及したアクションの撮り方にかけては、ノウハウはありましたからね。
そんなジェリー・ブラッカイマーが手掛けた作品ですら、Netflixの限定配信というのは時代の変化を感じますねぇ。
20年前なら、間違いなく日本全国の映画館で拡大公開された企画だろうし、そこそこヒットもしていたかもしれません。
まぁ、同窓会的なノリになってしまうのは不可避だったがために今の時代はサブスク限定が合ってるのかも。
本作の場合はただ同窓会的なノリだけで終わってしまった映画というわけではなく、相変わらずのアクセルの
破天荒なアクションや、それに振り回される周囲の刑事たちをコミカルに描くという、シンプルな面白さをしっかりと
見せてくれたという点で、僕は優れていたと思うし、本シリーズの不変的な面白さをそこそこ強く築けていると思った。
監督のマーク・モロイもプレッシャーが大きな企画だったのではないかと思いますが、よく頑張ったと思います。
ずっとエディ・マーフィが続編の製作に否定的だっただけに、企画を前に進めることも難しかったでしょうし、
そんな中で回ってきた第4作、しかも30年ぶりとなる続編という条件は、かなりハードルが高かったと言えるでしょう。
本作のアクション・シーンの最大の見せ場は、ジョセフ・ゴードン=レビット演じる刑事が操縦する
ヘリコプターが不安定飛行を市街地で繰り返すシーンでしょう。パイロット免許は持っていると言いつつも、
ヘリの操縦には全く自信がなく、身柄を拘束された警察署から脱出するために仕方なく操縦桿を握ることになります。
一緒に乗っているアクセルも不安いっぱいな表情というのが面白いが、
これはこれでコメディ・パートをエディ・マーフィ以外に任せるという趣向もあって、なんだか感慨深い(笑)。
僕は少なくとも第3作よりも出来が良かったのではないかと思えるのは、見せ場がしっかり用意されている点で
アクション映画の醍醐味をシンプルかつ的確に表現しようとする作り手の創意工夫が見える作品になっているから。
おそらく第3作もそういう意図がジョン・ランディスにあったのだろうとは思いますが、コメディに寄り過ぎましたね。
アクション・コメディとは言え、やっぱりこのシリーズのベースにあるのは刑事アクションというカテゴリーだと思うので。
そんなある種の原点回帰とも解釈できる軌道修正を図ったことが、この第4作の良かった点だと思いましたね。
とは言え...僕の本音としては、このシリーズが好きだからこそ思うのですが、
もうこれ以上の続編は止めておいた方が良さそうだということ。どのような脚本を用意しても、もう難しいと思う。
本作もある意味で30年ぶりの続編という、“再始動”とも解釈できるコンセプトだったからこそ楽しめたという感じだ。
ここから数年空けて、次の第5作となってしまうのはかなりキツいだろう。ジョン・アシュトンも亡くなりましたし。
エディ・マーフィは若々しいので、まだまだアクションはこなせそうだけど、これ以上の続編に新鮮味は持てないだろう。
それゆえ、どうしても第4作の二番煎じになりかねない。一度、親子関係の修復というテーマも使ってしまいましたしね。
ジェリー・ブラッカイマーがどう考えているかは分かりませんが、ここからの第5作は個人的には難しいと思います。
今のところ噂は聞きませんが、この第4作はNetflix配信限定で製作されたので、次の続編も企画されかねない。
やるのであれば、かなり大胆なベクトルで映画を撮ることを考えるか、エディ・マーフィ以外の主役を立てるか、ですね。
いずれにしても、この第4作の延長線で次なる続編を考えることは、大変“危険”な道のりになってしまうように思う。
欲を言えば、第1作に色濃く残っていた高級住宅地ビバリーヒルズをもっとクローズアップして欲しかった。
本作はやはり、ビバリーヒルズで派手にアクションがあるからこそ盛り上がる作品だと思うし、その必然性が欲しい。
いくら往年の仲間の窮地を救うとは言え、べつにビバリーヒルズが舞台でなくともいいように映ってしまったのは残念。
まぁ、基本的に第1作からファンという人に向けて作った作品という感じですので、
「今の時代に合わない・・」という感想が先立ってしまう人には向かない作品だという前情報はあった方がいいと思う。
おそらくですが、エディ・マーフィも往年のファンに楽しんでもらえる脚本を待っていたということなのではないかと思う。
できればエディ・マーフィのマシンガン・トークから繰り出すギャグも炸裂させて欲しかったけれども、
さすがに彼も年齢を重ねていますから、その勢いは無いですしね。どちらかと言えば、ジョセフ・ゴードン=レビットに
見せ場を譲っているかのような部分も見られたので、エディ・マーフィ自身も本作で目立とうとしているわけではない。
でも、アクセル・フォーリーから口八丁手八丁なところを削いでしまうのは、物足りないというか、チョット悲しいですよね。
個人的には本作は同窓会的なノリにして、結果として良かったのではないかと思うし、
観る前の予想よりはずっと面白かったのだけれども、エディ・マーフィのコメディとしては“押し”の強さが無いですね。
どうでもいい話しではありますが...争いのポイントとなるツールがSDカードというのが、なんとも微妙(苦笑)。
ましてや2020年代の映画で、データをSDカードでやり取りしているというのは、セキュリティの問題なのだろうか?
かく言う私も会社で、未だにSDカードを使ってるので他人(ひと)のことは言えませんが、少々時代遅れな感も(笑)。
でも、まぁ・・・それでもセキュリティ対策したSSDとかメモリースティックですよね...普通は。
(上映時間115分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 マーク・モロイ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
エディ・マーフィ
チャド・オマン
原案 ウィル・ビール
脚本 ウィル・ビール
トミ・ゴーミカン
ケビン・エッテン
撮影 エドゥアルド・グラウ
編集 ダン・レーベンタール
音楽 ローン・バルフェ
ハロルド・フォルターメイヤー
出演 エディ・マーフィ
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ジャッジ・ラインホルド
ジョン・アシュトン
ケビン・ベーコン
テイラー・ペイジ
ポール・ライザー
ブロンソン・ピンチョット
ルイス・ガスマン