続・猿の惑星(1970年アメリカ)
Beneath The Planet Of The Apes
68年に製作されたカリスマ的なSF映画であった『猿の惑星』の続編。
『猿の惑星』が世界的に大ヒットとなったことが理由で続編を作ろうということになったらしいのですが、
どうやら『猿の惑星』で主人公のテイラーを演じたチャールトン・ヘストンが続編製作に後ろ向きな意見だったらしく、
本作への出演を熱心に説得されたものの、本作が最後であることと、出番を大幅に減らすことを条件に出演したらしい。
まぁ、そんなチャールトン・ヘストンのご意見はもっともだったようで、これはやらない方が良かったタイプの続編。
やっぱりどうしても、カリスマ的な存在となり、強烈なインパクトを残したラストで映画を終わった『猿の惑星』としては、
あれはあれで完結していて、あそこからの続編となると少々キツい。本作のストーリー自体も、無理矢理ですものね。
とは言え、まったく魅力がない映画かと言われると、決してそんなわけでもないかなとは思います。
チャールトン・ヘストンが出演しているという系譜なのかもしれませんが、70年代に流行するカルトSF映画の
先陣を切るかのような良い意味でチープな雰囲気を持った作品になっていて、この時代のSF映画が好きなファンには
たまらない映画だろうし、この後も更に3作品の続編が製作された本シリーズの中では、比較的マシな出来だろう。
監督は、何故に本作の監督を任されたのかは分かりませんが、『奴らを高く吊るせ!』などイーストウッドとの
仕事で知られるテッド・ポストで、後にも先にもこのタイプのSF映画を撮ったのは本作だけという貴重な監督作品だ。
まぁ、結局は地球は人間たちの欲にまみれた行いのおかげで荒廃してしまって、
それを立て直そうと統治する猿たちと、地下に潜った人間の生き残りが攻防を繰り広げていて、
実は人間たちが残して大切に保管していた、秘密兵器が何もかもをブチ壊す破壊力を持って、最後まで争うという
文明社会批判ではお決まりのストーリー展開となっていて、後年のSF映画でも数多く描かれていたような内容だ。
そういった作品たちのパイオニアとして観れば面白くないこともないのですが、少々クドいように感じられるかも。
個人的にはもっと前作にあったエンターテイメントを追求する姿勢があっても良かったと思うし、
やはりチャールトン・ヘストンが続編製作に反対していたという時点で、この企画を前に進めるのは無理があったと思う。
どうしてもテイラー役のチャールトン・ヘストンのインパクトには勝てない。彼の出番を増やせないものだから(?)、
テイラーと同じ宇宙飛行士ブレント役として、若いナイスガイのようなジェームズ・フランシスカスが登場してきますが、
まぁ頑張ってはいるけど、前作の二番煎じになってしまうし、違う俳優が同じことを“なぞって”いるだけに見えてしまう。
そもそもブレントが突如として登場したことで、彼が何をしていたのかが分からないまま映画が進んでしまう。
おそらく行方不明になったテイラーを探しに来た宇宙飛行士なんだろうけど、その割りに未知の時代に来た反応が薄く、
猿たちが支配する世界に辿り着いた困惑が無いのは違和感でいっぱい。力技で作った続編はやっぱりダメですね。
このジェームス・フランシスカスという俳優さん、決して悪い仕事ぶりだとは思わないのですが、
やはりチャールトン・ヘストンと比べると存在感が圧倒的に弱い。それは何が違うのかと考えると、それは男っぽさ。
出番が少ないとは言え、本作にもテイラー役でチャールトン・ヘストンが出演しているので、どうしても比べてしまうけど、
前作でも画面いっぱいに横溢するチャールトン・ヘストンが放つセックス・アピールに強さが、彼からは感じられない。
どちらかと言えば、クールガイで爽やか路線。彼も悪くはないんだけど、やっぱりチャールトン・ヘストンと並ぶとツラい。
僕は前作もチャールトン・ヘストンが主人公を演じていなければ、あそこまで魅力的な映画にはならなかったと思う。
やっぱりチャールトン・ヘストンみたく画面いっぱいに体臭が充満するくらいのムサ苦しさがないと
どうしてもルックスのインパクトで負けてしまいますね。猿の軍団と対決するからには、あれくらい野人的でないと。
ジェームズ・フランシスカスもこの時期はSF映画を中心に頑張っていたみたいですが、もっと強い個性が欲しかった。
これでは続編としても、本作の立場は苦しかったと思うし、映画のエンジンがなかなかかからない。
そうならば、端っから妙にメッセージ性が強い部分は捨ててしまって、生き残った人間vs統治しようとする猿みたく
対決構造を真正面から描いて、SFアクションにシフトしてしまった方が、作り手の狙いもハッキリとさせられたと思う。
どうしても、こういう内容になってしまうと、映画がエキサイティングなものにはならないし、
前作とまともに比べられてしまって既視感からか、見劣りしてしまうので大きなハンデを前提としているように見える。
これは勿体ないことだなぁと思うので、続編を製作するコンセプトというのはもう少し見直して欲しかったなぁと思う。
前作に続いてテイラーと一緒に逃げていたノバ役でリンダ・ハリソンが相変わらずの薄着で出演していますが、
変わらず喋れないという設定であるせいか、本作でも微妙な感じなのですが、この添え物感は賛否が分かれるだろう。
元々、核戦争で荒廃した未来を舞台にしたというコンセプトが前作『猿の惑星』でしたから、
まともに続きを描けば、こういう内容になってしまうことは明らかでした。監督もフランクリン・J・シャフナーからの
交代が免れなかったということもあって、前作と何か違うことをやってやろうとする気概が薄くなってしまっていました。
地下で生き残った人間たちはテレパシーのような不思議な能力があって、その異音にブレントらが耳を塞ぎ、
実はマスクを被って宇宙人のような外見になっているという設定は興味深かったけど、テレパシーで人の心が読める
という特殊能力があって知能が高いのかなと思いきや、荒廃した地上から地下に持ち込んでいたコバルト爆弾を
救世主と崇めて、それを猿たちを撲滅させるために使おうと、意味不明な儀式のようなことをするというのが謎過ぎる。
この宇宙人のような外見をしているという設定なのは、どうやら核戦争の影響だという設定のようでして、
被爆の影響を示唆するデザインなのですが、これはこれで結構キワどい表現だったような気がしますけどね・・・。
テッド・ポストも決して力のないディレクターではないと思うのですが、こういう謎な展開の映画を撮ってしまうあたり、
本作自体が企画段階から『猿の惑星』がヒットしたことで、続編を作るということだけが目的化してしまったために、
企画段階から中身が練られないまま、ほぼ見切り発車のような形でスタートしたのではないかと邪推してしまう。
(まぁ・・・それでも、監督を引き受けて実際に撮ったテッド・ポストに、ある程度の責任はあると思いますが)
挙句の果てにはクライマックスは秘密基地化した地下で、猿と人間の銃撃戦でコバルト爆弾の奪い合い(苦笑)。
このチープさが良いという人には楽しめると思うけど、これが『猿の惑星』の続編だったという事実がなんとも寂しい。
やっぱり、こういうのを観ちゃうと安易に続編を作るべきではないよね、と実感します。まぁ、仕方なかったのだろうけど。
個人的にはどうしても続編をやるなら、小難しいテーマを一切捨てて、迷い込んでしまった人間と猿の
サバイバル戦にフォーカスしても良かったのではないかと思えるし、その方がエンターテイメント性も出せたと思う。
70年代の映画なので、映像技術の水準は高くはなかったとは言え、地下に潜らず地上戦ならもっと上手く出来たはず。
どうしてもチープさが際立っちゃっていて、アクションのエキサイティングな感覚が前に出てこなかったですね。
前作の良さって、やっぱり世紀末感のあるラストシーンにあって、どことなくアメリカン・ニューシネマっぽさもありました。
それから目的がなんだかよく分からないまま猿たちが人間を捕獲しに来て、身柄を拘束されるという恐ろしさ、
それが映画の醍醐味につながっていたと思うのですが、そういった良さが本作から完全に無くなってしまったのが残念。
本作のクライマックスなんて、どっちかと言うと、チャールトン・ヘストンの意向だけを尊重したラストという感じですしね。
テッド・ポストにとって本意だったのか不本意だったのかは分かりませんが、
本作の後もプロダクションでは続編を製作しようという話しになりましたが、テッド・ポストは本作だけ監督しました。
まぁ本作の後に、73年の『ダーティハリー2』を監督してますから、この手のSF映画は懲りたのかもしれませんが・・・。
僕の中では、やっぱり『猿の惑星』は第1作で完結した映画だと思っています。
同じように感じている人には、決してオススメできる続編ではありませんが、70年代のカルトSF映画の先駆けとして
『猿の惑星』の後日談を拝借して作られた作品として観れば、少々中身的には“珍品”扱いかもしれませんが、
それなりに楽しめるところはあると思います。それにしても、もっと続編の構想段階で映画の前提は練るべきでしたけど。
この続編の失敗は、猿たちのことを描くことをほとんど放棄してしまって、生き残った人間たちの奇異さを
描くことに終始してしまったことにあると思います。やっぱり『猿の惑星』のシリーズなのだから、猿も描くべきなのです。
(上映時間94分)
私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点
監督 テッド・ポスト
製作 アーサー・P・ジェイコブス
原案 モート・エイブラハムズ
ポール・デーン
脚本 ポール・デーン
撮影 ミルトン・クラスナー
編集 マリオン・ロスマン
音楽 レナード・ローゼンマン
出演 ジェームズ・フランシスカス
チャールトン・ヘストン
キム・ハンター
リンダ・ハリソン
ビクター・ブオノ
ポール・リチャーズ