悪いことしましョ!(2000年アメリカ)

Bedazzled

イギリス訛りの英語まる出し、かつフェロモンをムンムン漂わせて(笑)、
ハリウッドに渡ってきたエリザベス・ハーレーが悪魔に扮して世の男の魂を頂戴しようとする姿を描いた、
『恋はデジャ・ブ』のハロルド・ライミスによる、わずかにスパイスが利いたドタバタ・コメディ。

もう、とにかくこの映画はエリザベス・ハーレーの魅力でいっぱいになった内容で(笑)、
ようやっと「ついに彼女の時代が来た」と実感しましたが、それも“気”だけだったらしく(笑)、
結果的には本作だけで終わってしまったような感じ、最近はすっかり裏方に回ってしまったようです。
(プロデューサーやモデルとしての活動にシフトしているようで、映画への出演は減っています・・・)

まぁこの映画、コメディ映画としては十分に面白いと思いますよ。
映画のテンポも良く、上映時間もタイトなので、サクッと観れてしまうあたりは強みですね。

元はと言えば、この映画は67年にピーター・クックがシナリオを書いて映画化が実現した、
『悪いことしましョ!』がオリジナルなのですが、今回の映画化ではオリジナルでは表現できなかった、
悪魔の色っぽさや、ファッション・ショーのような華やかな衣装の数々など、とにかく彩り鮮やか。

映画の序盤から、終盤までエリザベス・ハーレーによる度重なる衣装チェンジのおかげで、
ファッション・ショーのように展開するわけなのですが(...時に“コスプレ・ショー”みたくなるし...)、
この感覚が上手く活かされているので、目まぐるしく豊かな色調が画面を彩っています。
結局、これが映画を装飾することに大きく貢献できていて、明らかに彼女の配役が映画を助けましたね。

コメディ映画の手腕という意味では定評があるハロルド・ライミスなだけあってか、
映画は甘い部分も散見されるが、要所・要所ではキッチリ締められており、映画は崩れませんでした。

映画は全米ではそこそこヒットしていましたけど、あまり評判が芳しくなかったせいか、
日本でも拡大公開されたものの、長い上映期間は取らず、アッサリと上映終了になった記憶があります。
とは言え、そんな扱いはチョット勿体ない作品です。アメリカン・ジョークの連発というわけでもないため、
日本人にも十分に楽しめる内容なだけに、もっとプッシュすればヒットした可能性はある作品だと思います。
(まぁその分だけキャストの知名度が日本ではイマイチだったから、売り込みづらかっただろうけど・・・)

映画は主人公のエリオットが7つのお願いをすることを中心に構成されています。

1.ビッグマックとコーラのLサイズ
2.憧れのアリソンと結婚し、金と権力を手にした男になること
3.憧れのアリソンから愛され、繊細な心を持つ男になること
4.プロ・バスケットボールの選手となり、名声と恵まれた体格を持つ男になること
5.売れっ子小説家として有名になり、研ぎ澄まされた知性を感じさせる男になること
6.人々から常に尊敬される合衆国大統領として君臨する男になること

そして、7つ目のお願いは何だ?というのが物語の大きな焦点をなってくるのですが、
それぞれのエピソードの見せ方がまずまず上手くって、コミカルにテンポ良く見事な構成となっている。

せっかく、7つのお願いを叶えてくれるというのに、「今、食べたいから」という理由一つで、
ビッグマックとコーラのLサイズをお願いしてしまったり(...しかもポテトなし...)、
金と権力を手にした、コロンビアの麻薬王になってしまい、一転して命を狙われたり、
繊細な心であり過ぎるがゆえ、沈みゆく夕陽を眺めているだけで涙が溢れてしまう繊細さになってしまったり、
とにかく各エピソードにはそれぞれ“オチ”が付いていて、それらがコントの集合体のように構成されます。

時折、まるでチャチャを入れるようにエリザベス・ハーレー演じる悪魔が
男心をくすぐる(笑)、水着姿やコスプレ姿で登場してきたりするので、とにかく男なら飽きません(←お●カ)。

とかく今回のハロルド・ライミスは男本意の映画を撮ることに執着していたようで、
一口に理想的な男と言っても、女性からのニーズは多種多様で、女性自身も個々に考えや性格、
好みのタイプが違うので、どうしたら人々から尊敬され、女性から愛される男になるという定義が
簡単には見つけることができない、男としての歯がゆい悩みが見事に描けていると思います(笑)。

随分と豪勢に特殊視覚効果を使っていたのも印象的で、
ド派手なCGを使って、悪魔の恐ろしさを表現したり、やっぱりこういった部分はハリウッドですね。
こういう点を観ちゃうと、つくづくハリウッドの資金力の底力を見せ付けられます。

主演のブレンダン・フレーザーも冴えない男を演じさせると、上手いなぁ〜(笑)。
本作の次に出演した『モンキーボーン』なんかもそうでしたが、この手の役を演じさせると、ホントに上手い。

ただ、彼が演じたエリオットが考え方を改めて、言わば自己変革を伴った後、
映画のクライマックスで登場してきた彼は、一応、変わった後という設定になっていたのですが、
残念ながら僕には彼がどのように変わったのか、よく分からなかったのですが、
それでも映画の前半で見せた、仲間から疎外されがちな存在になってしまうあたりの流れも凄く上手い。

それにしても、この映画を最初に観た時から僕はずっと気になっているのですが、
エリオットはずっとアリソンから愛されるとか、アリソンと結婚するという一途な気持ちを変えないのですが、
例えば本作の悪魔のようなフェロモン、ムンムンな女性が自分に近づいてきたら、
「貴女の方がいいなぁ〜」って、ホイホイ悪魔に付いて行っちゃうのではないかという気がするのですがねぇ(笑)。

いや、これはよっぽど低俗かつ幼稚な男の発想なのかもしれんけど...(苦笑)。

(上映時間92分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ハロルド・ライミス
製作 トレバー・アルバート
    ハロルド・ライミス
原作 ピーター・クック
脚本 ラリー・ゲルバート
    ハロルド・ライミス
    ピーター・トラン
撮影 ビル・ホープ
編集 クレイグ・P・ハーリング
音楽 デビッド・ニューマン
出演 ブレンダン・フレーザー
    エリザベス・ハーレー
    フランシス・オコナー
    オーランド・ジョーンズ
    ミリアム・ショア
    ポール・アデルスタイン