マンハッタン花物語(1995年アメリカ)

Bed Of Roses

良く言えば、まずまず無難な仕上がりの恋愛映画。
悪く言えば、これといった特徴のない新鮮味がまるで感じられない恋愛映画。

まぁ僕も本作は大それて出来の良い映画だとは思わないけど、
ナンダカンダ言って、手堅い仕上がりになっており、そんなに出来の悪い映画だとは思わない。
良くも悪くも、インパクト。そして“押し”の弱い作品であることは否定できませんね。

そしてこの映画で驚異的とも言えるのは、実に経済的な上映時間だ。
内容的にはもっと充実させて2時間近い内容にはできたとは思うのですが、
なんと本作は1時間30分にも満たない尺の長さで、映画自体もアッサリと終了してしまう。
おそらくこの点は賛否両論だとは思うけど、僕はこれが良い点でも悪い点でも機能してしまったと思う。

まず、良い点を挙げれば、それは勿論、映画のクドさを削いだ点だ。
コテコテのラブ・ロマンスとも言える内容なだけに、ヒロインの恋愛をアッサリ描くことに成功している。
ウダウダ、捻じれた構図を描かなかったことによって、作り手が描きたいことのみ盛り込んだ感じで、
映画の中で存在していたかもしれない、ありとあらゆる無駄を徹底的に省く結果となりました。

悪い点で言えば、そのウダウダ、捻じれた構図こそが映画をかき乱す要素となったのに、
その恋愛映画の面白さの一角を完全に捨て去ってしまったことになるでしょう。
これを無駄と言うか否かが、大きな分かれ道であるこは確かなのですが、
こういったスタンスが本作に対する物足りなさを生む要因となってしまっていることは、否めないと思います。

話しの流れと言う点では、もの凄く強引で、
花屋に勤めるルイスが夜中にニューヨークの市街地を散歩するのが趣味で、
たまたま立ち止まった街角から見えたアパートの一室の窓際で悲しそうな表情をしていたリサが気になって、
彼女に元気を出して欲しいと一念発起し、彼女の職場に一方的に花束を贈りつけるというストーカー行為(笑)。

そこからもっとありえないのは、「僕が君に贈ったんだ」と白状したルイスは、
「君に見せたいものがあるんだ」とリサに言い、のこのことルイスの部屋に上がりこむリサ。
ワーカホリックなキャリアウーマンで、自分の心を開くことに障害を感じる女性という設定の割りには、
このリサは随分とフットワークが軽くって(笑)、ルイスに積極的に近づいていきます。

そしていくらルイスの屋上庭園が美しかったからとは言え、
アッサリと衝動的にルイスにキスを迫ってしまうリサ。ここまでは本作、もの凄く強引な引っ張り方です。

まぁ言ってしまえば、御伽噺なんですよね。
でも、僕はこの辺を批判するつもりはありません。これぐらいの強引さがあってこそ、
本作のタイトな仕上がりというものが生まれたわけで、作り手のアプローチに一貫性があるからです。

ヒロインのリサを演じたのは、87年の『恋しくて』のヒロインに抜擢されてブレイクした、
メアリー・スチュアート・マスターソンですが、本作あたりから、めっきり活躍の場が無くなってしまって、
なんだかフクザツですね。また戻ってきて欲しいなぁ〜、まだまだキレイな女優さんなのに。。。

相手役のルイスで出演したのは、クリスチャン・スレーター。
この頃は私生活でも荒れていたことで有名ですが、彼が登場するファースト・カットでは、
何となく彼の顔色が良くないのが妙に印象的です(笑)。まぁ言ってしまえば、精彩が感じられないですね。

監督は本作がデビューとなったマイケル・ゴールデンバーグ。
演出自体は手堅い感じで、僕はそんなに悪くないと思います。花の使い方なんかは、まずまずの上手さ。
2人の恋愛の結論を急ぎ過ぎた感はありますが、映画の致命傷となるほどではなかったですね。

一つだけ、どうしても描いて欲しかったのは、
映画の冒頭でリサの同棲相手であり、証券会社に勤めていると思われる男性との関係だ。

詳細は映画の中で描かれてはいませんが、
リサがルイスと恋人関係となることにより、この男性との関係は変わってしまうわけで、
リサが同棲生活を解消するために彼に別れを告げなければならないわけで、ここでドラマが作れたはず。
別に大きな“山”を作る必要はありませんが、ここだけは工夫して欲しかったですね。
映画の冒頭で、彼と特別な存在として紹介したのですから、彼の存在を切り捨てるというのは支持できません。

観る前は、「変な邦題だなぁ〜」と思っていましたが、確かにこの本編を観て納得してしまいました(笑)。
確かにマンハッタンの街並みと、数多くの花々が画面に中央に据えられた映画といった感じです。
(まぁ・・・それでもこの安っぽいB級映画みたいな邦題はセンスがないけど...)

まぁ、ひじょうにアッサリとしたタイトな映画ですので、
言ってしまえば、恋愛映画が苦手な人なら、意外とサクッと観れてしまう恋愛映画ですかね。
むしろ本作なんかは、恋愛映画が好きな人からの支持は得にくい内容かと思います。
やっぱり恋愛映画を面白くさせる要素をも、削いでしまったのが明らかにマイナスに機能しているからです。

それと、もうチョット、2人の距離が縮まっていく過程は、繊細に描いて欲しかったかな。

(上映時間87分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 マイケル・ゴールデンバーグ
製作 アラン・ミンデル
    デニス・ショウ
脚本 マイケル・ゴールデンバーグ
撮影 アダム・ミンデル
音楽 マイケル・コンヴァーティノ
出演 クリスチャン・スレーター
    メアリー・スチュアート・マスターソン
    パメラ・シーガル
    ジョシュ・ブローリン
    アリー・ウォーカー
    ブライアン・タランティナ