バットマン フォーエヴァー(1995年アメリカ)

Batman Forever

89年に劇場公開向け映画が製作された、
人気アメリカン・コミックスの映画シリーズの第3弾で、今回はスタッフが一新されました。

あまり強く後向きな意見は言いたくはないんだけど...
やっぱ、この作品を観て思ったのが、「このシリーズはティム・バートンの方が良かったかなぁ」ということ。

まぁ経済的な問題と、イメージを一新したいという製作会社の意図から、
ティム・バートンからジョエル・シューマカーに監督が交代して、映画のカラーが完全に変わりましたが、
何回観ても、視点を変えても、どうもシックリきませんね。それは、おそらく僕の固定観念もあるのだろうけど。。。

そりゃ常にシリーズを進化させていかなければならないし、
いつも同じパターンでは、映画はすぐに飽きられてしまうので、同じことをやり続けるわけにはいかない。
そこでイメージの刷新を図ったのですが、もう少し映画を撮るにあたって、精査して欲しかったですね。
一番、方向転換するときに大事なのは、僕は「仕分け」という作業だと思いますね。

正直、この作品を撮るにあたって、その「仕分け」があまり上手くいっていない。
その「仕分け」とは、“変えるべきところ”と“変えてはならないところ”を区分することで、
厳しい言い方をすれば、何でも変えればいいってものじゃありません。それだけなら、誰でもできるのです。

実のところ、この「仕分け」をキッチリと上手くやることが本質的には凄く大事なところで、
まず初めに「今までやってきたことを全てだと思うな」という、前提に立つことがとても大切で、
極端な言い方をすれば現状を否定します。それはこのシリーズが、契約上の問題からティム・バートンから
ジョエル・シューマカーに交代することがキッカケだったのですが、問題はここからでしたね。

今までのシリーズが何故、ウケたのか?
そして、今までティム・バートンが構築してきた、シリーズの良さって何だったのか?ってことなんですね。

この分析をキッチリやって、それをどう踏襲するか、ということを考えなければならないのですが、
この映画は分析したのか否かは分かりませんが、結局、ほとんど踏襲しないことを選択したのです。
つまり、完全にティム・バートンが作ったイメージを捨てたわけなのですが、この選択が良くなかったですね。
やはり良い部分は残すべきでした。それは本作を観て、強く感じる、「随分と大衆的になった」という印象ですね。

完全にイメージが変わったということなのですが、これが決して良い方向に機能しなかったということですね。

このシリーズの根底を作っていた、ダークな世界観を残すべきでしたね。
どうしても原色を活かしたカラフルな色使いは、このシリーズには馴染みませんでしたね。
観ていて、ずっと気になったのですが、この何とも言えない違和感が最後まで拭えませんでしたね。

今回はトミー・リー・ジョーンズが異様なハイテンションで演じたトゥー・フェイスと、
ジム・キャリーが持ち前の超人的な動きで表現したリドラーの2人の悪役キャラクターを立てましたが、
もう一つ、本作で致命的だったのは、この2人があまりに弱過ぎる悪役キャラクターだったことですね。
(トゥー・フェイスに関しては、08年の『ダークナイト』で再びクローズアップされますが・・・)

やはりこういうのを観てしまうと、1作目でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーや、
2作目でミシェル・ファイファーが演じたキャットウーマンがいかに強烈だったかということを悟ります。

それに対抗するように、バットマンの相棒として、今回から家族をトゥー・フェイスに殺されて、
復讐を誓うサーカス団の青年として“ロビン”というキャラクターが立って、少し焦点ボケを起こしてしますね。

せっかくニコール・キッドマン演じる精神科医チェイスとバットマンの恋愛が描かれるのですが、
これも色々なキャラクターを打ち立てたせいか、散漫になってしまい、印象に残りませんでしたね。
個人的にはもう少し局所的に注力するエピソードを作って、散漫にならないように工夫して欲しかったですね。
(いっそのことニコール・キッドマンにもコスプレさせて、闘わせた方が面白そう・・・)

まぁジョエル・シューマカーはもっと規模の小さな映画を撮っていた方が、
良質な映画が撮れてる気がしますねぇ。こういうのは、あまり合っていない気がします。

ここまで強いことを言っておきながらナンですが...映画自体はヒットしています(苦笑)。
但し、ハッキリしているのは、僕のようにティム・バートンが撮ったシリーズのダークさが好きな人には、
どうしてもこの映画はノレないだろうということで、エンターテイメントを追求する方なら、楽しめるかもしれません。
ですから、やはり従来の『バットマン』シリーズとは別物と考えた方がいいでしょうね。

しかし、このヒットが悪い方向へと向かう拍車をかけたような形で、
結局、4作目は売れ線路線へシフトしてしまったかのようで、結果的に失敗に終わってしまいました。

個人的にはもう少しティム・バートンがこのシリーズを続けて欲しかったのですが、
最近のティム・バートンは完全に低迷しているように思いますので、もう一度、このシリーズを撮って欲しいですね。
色々と回り道をしておりますが、この映画のスタイルがティム・バートンを復活させる要素はあると思います。

ただ、惜しいのは、ジム・キャリー演じるリドラーですね。
トゥー・フェイスのキャラが弱く、彼の方が目立つ感じだったのですが、ブルースへの復讐心を燃やす
経緯をしっかり描いたせいか、彼に関しては比較的、堅実に描けていただけに、
もう少しプッシュすれば、もっと強いインパクトを持って彼を描けたかもしれませんね。

あと、バットマンを退治しようと、ブルースの家まで乗り込んでいって、
ブルースを気絶させて、何故かチェイスを誘拐して、ブルースは放置していったのですが、
あそこでブルースを連れていけば、全て解決したのに、放置したがために反撃の余地を与えてしまうという
お間抜けささえ無ければ、リドラーの賢さももっと強調できていただろうと思えるだけに、勿体なかったですね。。。

(上映時間121分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ジョエル・シューマカー
製作 ティム・バートン
    ピーター・マクレガー=スコット
脚本 アキバ・ゴールズマン
    リー・バチェラー
    ジャネット・スコット・バチェラー
撮影 スティーブン・コールドブラット
音楽 エリオット・ゴールデンサール
出演 バル・キルマー
    トミー・リー・ジョーンズ
    ジム・キャリー
    ニコール・キッドマン
    クリス・オドネル
    ドリュー・バリモア
    マイケル・ガフ
    パット・ヒングル
    デビ・メイザー
    ジョン・ファブロー

1995年度アカデミー撮影賞(スティーブン・ゴールドブラット) ノミネート
1995年度アカデミー音響賞 ノミネート
1995年度アカデミー音響効果編集賞 ノミネート