バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997年アメリカ)

Batman & Robin

シリーズ第3作の『バットマン フォーエヴァー』が大ヒットしたため、
よせばいいのに(笑)、今回は凄い豪華なキャストの大盤振る舞いで製作された第4弾。

が、これが見事に大失敗でしたね。
その理由は観れば分かります。これは確かに多くのファンの期待を裏切ったわけだ・・・。
こういう大失敗の序章というのは、明らかに第3作から始まっていたわけで、ある意味では当然の結果かも。。。

まぁ百歩譲って、この映画、序盤のアクション・シーンはそんなに悪くない。
前置きなしで、いきなりMr.フリーズがゴッサム・シティで大暴れして、街を凍らせていて、
それをバットマンとロビンが退治するというエピソードからスタートするのですが、
ジョエル・シューマカーが打ち出した、視覚的に派手なアクション演出を施す趣向がマッチして、
スピード感溢れるエキサイティングな仕上がりにはなっていたと思います。

が、映画はここから完全におかしな方向へと向かってしまいましたね。
そもそもポイズン・アイビーに心奪われ、バットマンとロビンがお互いに彼女を奪い合うという
展開にしてしまった時点で、このストーリーにかなり無理があると言わざるをえない。

さすがにロビンが「彼女がオレを指名したから、アンタ(バットマン)は嫉妬してんだ!」と主張して、
バットマンもまんざらではないみたいな顔してるあたりで、この映画の破綻は見えていましたね。

3代目バットマンには当時、売り出し中だったジョージ・クルーニーが配役されているのですが、
さすがにこれもイメージが合いませんでしたね。最後の最後まで違和感が拭えませんでしたね。
おそらく当時、一世を風靡していたTVシリーズだった『ER −緊急救命室−』の人気俳優だった、
ジョージ・クルーニーをワーナー・ブラザーズが引っ張ったのでしょうが、これはハッキリ言って、ミスキャスト。

僕も『ER −緊急救命室−』は今でも好きだけど、当時のジョージ・クルーニーの人気だけに
頼ったようなキャスティングで、これはあまりに安直な発想だったと製作サイドには猛省を求めたい(笑)。

確かにジョエル・シューマカーはこの映画が劇場公開当時、強烈に批判され、
「本作に失望したファンにはたいへん申し訳ないことをした。でも、そういうつもりじゃなかったんだ」と
コメントしていましたが、勿論、作り手の悪意を感じるような作りではないのですが、これは必然の結果だった。
そもそもが第3作のときに思いましたが、ティム・バートンが作ったシリーズのイメージを敢えて打破し、
アプローチを変えたのですが、この変化内容が良くなく、この失敗の序章は確実に第3作にありました。

結局、本作があまりに強く批判されてしまったがために、
製作会社もシリーズの継続に躊躇して、第5作が完成するまでに7年以上もの歳月を費やしてしまったのですが、
05年に製作された第5作では、スタッフもキャストも一新されており、一からの出直しとなってしまいました。

シュワちゃんを引っ張り出した作品としても話題となりましたが、
せっかく『ターミネーター』以来の悪役キャラクターだったというのに、これが予想以上に弱くて拍子抜け。
ユマ・サーマン演じるポイズン・アイビーも発想は悪くないが、イマイチ“押し”に欠けるキャラでしたね。

この2人があまりに弱かったため、映画が盛り上がらなかったのも残念でしたね。
前作の第3作もトゥー・フェイスもリドラーもそんなに強くないキャラクターでしたが、
今回のMr.フリーズとポイズン・アイビーもそれに輪をかけるように、更に弱いキャラクターで拍子抜け。
オマケに前作でロビンが加わった上に、更に“バットガール”も加わり、バットマンの方だけが増強されたようで、
段々とキリの無い世界に突入したためか、シリーズとしては第5作は“新シリーズ”という位置づけになり、
オマケにバットマン誕生のエピソードだったり、スピンオフ的な企画であったりと、話しは戻ってしまったようだ。
(つまり、本作以降のストーリーを新たに考える気はないらしい・・・)

そう考えると、せっかくロビン役としてヒーローを華々しく演じてスターになるはずだった、
クリス・オドネルや新キャラクター“バットガール”を演じたアリシア・シルバーストーンがあまりに可哀想ですね。
(オマケにアリシア・シルバーストーンはゴールデン・ラズベリー賞まで受賞してしまいました・・・)

Mr.フリーズをもっとプッシュしたい作品だったのでしょうが、
どうせなら、もっと彼の境遇をクローズアップして、悲劇的に物悲しく描いて欲しかった。
ポイズン・アイビーの独房でのクライマックスでは、あまりに映画として魅力的ではない。

この辺もティム・バートンが『バットマン リターンズ』でペンギンの最期を実に物悲しく、
悲壮的に描いていたのを見習って欲しい。あれぐらいの演出をしないと、Mr.フリーズが磨かれませんね。

が、見方を変えれば、あくまでB級映画として面白い映画という見方はできると思う。
Mr.フリーズも「お前ら全部、凍らせてやるぅ〜」とバズーカみたいなやつで急速冷凍させてしまうという、
凄〜くチープな武器はある意味で魅力はあるし、11分以内に融けてしまうと生き返るという、
その攻撃の脆弱さも、なんだか情けないようで可笑しい。でも、このチープさは紛れも無くB級だ。

ポイズン・アイビーも直接、格闘するわけではなく、
片っ端からキスをすれば、毒を注入して殺していくという彼女のフェロモンになびく輩にしか通用しないし、
彼女が本来的に異常なまでの環境保護論者であることと、まるで関係のない方向に走ってしまうという
ある種の“暴走”もB級映画ならではの出来事って感じで、B級映画ファンなら楽しめるかもしれません。

何はともあれ、ジョエル・シューマカーにとっても後悔の残る作品でしょう。
何せ、彼曰く、「ただファンに楽しんでもらいたかっただけなんだ・・・」とのコメントを裏付けるように、
映像は華やかで、まるでポップアートの世界。CGもたっぶり使って、大盤振る舞いの作品だったのですから。

(上映時間124分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 ジョエル・シューマカー
製作 ピーター・マクレガー=スコット
脚本 アキバ・ゴールズマン
撮影 スティーブン・ゴールドブラット
特撮 ジョン・ダイクストラ
音楽 エリオット・ゴールデンサール
出演 ジョージ・クルーニー
    アーノルド・シュワルツェネッガー
    クリス・オドネル
    ユマ・サーマン
    アリシア・シルバーストーン
    マイケル・ガフ
    パット・ヒングル
    エレ・マクファーソン

1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(クリス・オドネル) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(アーノルド・シュワルツェネッガー) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(アリシア・シルバーストーン) 受賞
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(ユマ・サーマン) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(アキバ・ゴールズマン) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト音楽賞(エリオット・ゴールデンサール) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(ジョージ・クルーニー、クリス・オドネル) ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 ノミネート
1997年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト非人道・公共破壊貢献賞 ノミネート