氷の微笑2(2006年アメリカ)

Basic Instinct 2

まぁかなり前から、企画自体は噂されていましたが、
時が過ぎるにつれて、次第にその企画が真実味を帯びていって、
「マジでホントに撮るの?」と疑問に思っていた本作、よせばいいのに観ちゃいました。

前作はポール・バーホーベン独特の猥雑さと貪欲さに加えて、
意外にも(?)真剣にサスペンスを撮ろうとする姿勢が功を奏して、そこそこ見応えのある作品に
仕上がっており、製作から約15年が過ぎた今も尚、議論を呼んでいるのが、納得できる作品でした。

まぁあまりに有名な作品の続編ですし、半ば失敗覚悟のこの企画をよく実現させたものだと感心しましたが、
やはり予想通り、映画の出来は手放しで喜べる代物ではなかったですね(苦笑)。

マイケル・ケイトン=ジョーンズの映像作家としての傾向は分かるのですが、
この人の生真面目さはこういうタイプの作品にとっては邪魔なだけですね。
ハッキリ言って、プロダクションはディレクターの人選を間違えているとしか思えない。
もっと登場人物の動きを本能的かつ流動的に描ける人でないとダメですね。
そうでなければ映画が盛り上がらないし、前作を凌ぐインパクトは出ませんね。

ポール・バーホーベンは無理にしても、もっと他に適任者がいたと思うんです。
せっかくシャロン・ストーンがCGを駆使して(?)までも、大胆な演技をしているだけに、
どことなく中途半端に終わってしまった勿体なさは、ひじょうに残念に思いますねぇ。

傑作とは呼べないにしろ、そこそこ楽しませてくれた前作との違いは、
サスペンスの盛り上げ方に他ならない。とにかく本作のサスペンスの盛り上げ方はイマイチなんです。
深みにハマって、どうあがいても抜けられない泥沼に溺れてしまうかのような感覚は皆無だし、
そもそも画面作りに緊張感が感じられない。これでサスペンス劇を盛り上げるとは、どだい無理な話しである。

世の男たちが心配で夜も眠られなかった(笑)、シャロン・ストーンのお色気シーンはそれなりにありますが、
さすがに色々と気を遣っていたためか、その頑張りが功を奏しているように思いましたね。
ただ前作ほどの悪女としてのカリスマ性は、さすがにありませんね。

前作のキャサリン・トラメルと比べると、女性としての危うさが薄れていたのが残念でしたね。
やっぱりこのシリーズは彼女の魔力でもっているようなシリーズですからね、
彼女自身のキャラクターに魅力がないと、正直、映画としては苦しいところですね。

そんなキャサリンに果敢に対抗する精神科医マイケル・グラスを演じたのは、
『コレリ大尉のマンドリン』のデビッド・モリッシー。役名がマイケル・グラスとは、当初、出演のオファーをしていた
マイケル・ダグラスへの当て付けなのか(笑)、どうも不自然な偶然だ(笑)。
ちなみにマイケル・ダグラスは脚本を読んで、オファーを正式に断ったそうだ。
(とは言え、おそらくマイケル・ダグラスが読んだ脚本もボツになっている・・・)

まぁデビッド・モリッシーもどうしても前作のマイケル・ダグラスと比較されがちなので、なんだか可哀想ですね。
シャロン・ストーンが熟女パワーで、驚異的な頑張りを見せているだけに、
尚更、彼女に欲望をぶつける精神科医としての“器”の小ささが際立ってしまうのです。
これでは正直、ただ単にキャサリンに遊ばれた男というだけで終わってしまう。
しかし、そうではないんですよね。少なくとも前作はそうではなくって、男女の危険な駆け引きだったのです。
それが残念ながら、本作からは一切感じられません。最初から最後まで、2人が対等になれないのです。

簡単に言ってしまえば、本作のマイケル・グラスって年上でお色気ムンムンのキャサリンに誘惑されて、
ただ単にもてあそばれて終わりって感じなんですよね。これだけってのは、チョット芸が無いなぁと思うわけです。

それと話しの組み立ての問題なのですが、
前作ってあくまで誰が犯人なのかは、ボカしながら作って最後の最後まで分からないんですよね。
確かに演じたシャロン・ストーン本人が真犯人の存在を公言してますから、その正体は明白なのですが、
本作はそういったミステリー性が全く感じられないのは残念ですね。

このミステリー性の欠如は、結果としてサスペンス劇が一向に盛り上がらなかったことの原因だと思いますね。

日本は勿論のコト、本作はあの『氷の微笑』の続編ということもあり、
話題性が大きかったというのに、散々な興行成績で終わってしまいました。
オマケに内容が内容なだけに、レイティングの対象となり更に興行的苦戦を強いてしまったようです。

そういえば、女性精神科医ミレーナとして懐かしのシャーロット・ランプリングが出ていましたね。
個人的には彼女をもっと活かして欲しかったですねぇ。ハッキリと言ってしまえば、
キャサリンのバイセクシャル的ニュアンスを強調させるキャラクターとして活用して欲しかったですね。

まぁシャロン・ストーンは驚異的と言っていいぐらいキレイですので(←デジタル技術の恩恵?)、
そんな彼女が観たいという人は外せない一本でしょう。。。

(上映時間114分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[R−18]

監督 マイケル・ケイトン=ジョーンズ
製作 モリッツ・ボーマン
    マリオ・F・カサール
    ジョエル・B・マイケルズ
    アンドリュー・G・ヴァイナ
脚本 レオラ・バリッシュ
    ヘンリー・ビーン
撮影 ギュラ・パドス
音楽 ジョン・マーフィ
出演 シャロン・ストーン
    デビッド・モリッシー
    シャーロット・ランプリング
    デビッド・シューリス
    ヒュー・ダンシー
    インディラ・ヴァルマ

2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 受賞
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(シャロン・ストーン) 受賞
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(マイケル・ケイトン=ジョーンズ) ノミネート
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(デビッド・シューリス) ノミネート
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(レオラ・バリッシュ、ヘンリー・ビーン) 受賞
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞 ノミネート
2006年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト続編賞 受賞