氷の微笑(1992年アメリカ)

Basic Instinct

それにしても・・・ベッドシーンに始まって、ベッドシーンに終わる映画って...(笑)。

劇場公開されるや否や、シャロン・ストーンが尋問されるシーンで足を組みかえる時に・・・とか、
成人指定を受けることを一切恐れない(笑)、過激なベッドシーンが・・・とか、
まぁ色々とセンセーショナルな話題を巻き起こし、世の男たちが一斉に劇場に駆け込んだ話題作(笑)。

何はともあれ、下世話なネタの話題で先行しがちなのは分かりますけど、
本作は僕が観る前の予想よりも、遥かにまともなサスペンス映画なんですね(苦笑)。

「オイオイ、お前はどんな内容を想像してたんだよ!」とツッコミの一つでも入りそうですが、
まぁこれはこれでミステリー性を上手く強調させ、映画に面白味を付加した作品と言えるのではないでしょうか。

ポール・バーホーベンの映画ですから、そりゃどうしたって猥雑な描写は避けられないのですけど(笑)、
少なくとも駄作と呼ばれるほど、映画の出来が悪いとは僕には到底、思えないですね。
あまり高く評価されるほど、褒められた出来ではありませんが、そこそこ楽しめる内容です。

まぁ見事なハマリ役となった、
マイケル・ダグラスとシャロン・ストーンの2人を主演にキャスティングできたことが大きいのですが、
微妙にトリッキーな展開を採り入れたシナリオも含めて、作り手たちも真剣に作り込んでいることは確か。
そこに開き直ったかのようなポール・バーホーベンの過激な性描写や殺人シーンがマッチして、
映画は絶妙な世界観を構築できていると言っても過言ではないと思いますね。

それにしても、本作に限った話しではありませんが、
マイケル・ダグラスって泥沼にハマっていく、暴走中年オッサンを演じさせると、とてつもなく上手いですねぇ(笑)。

まぁポール・バーホーベンのことですから、そんなに真面目にサスペンス映画を撮ろうとは
考えていなかった可能性が高いですが(笑)、それでもそこそこ健闘はしていると思いますよ。
サンフランシスコ郊外の山肌を走る道路でキャサリンが運転するスポーツカーを追跡するシーンなど、
予想外にスリリングなシーンが連続しており、映画の見せ場を作ろうとする意図はうかがえますね。

さすがはポール・バーホーベンの映画なだけあって、相変わらずグロいですね。
冒頭のアイスピックを使った殺人シーンでは、かなり生々しくアイスピックで顔を突き刺したりしてますから、
血生臭い描写が苦手な人には、かなりキツいシーン演出でしたね。

それにしても確かにこの映画のシャロン・ストーンはかなりアブない雰囲気を出しており、
男が破滅に導かれるのを分かっていながらも、敢えて彼女の誘惑に乗ってしまうという気持ちが
何となく分かってしまうという彼女の“押し”の強さ(笑)。まぁ90年代を代表する悪女でしょうね。
そう言わせられるぐらい、本作での彼女のインパクトは絶大なものなわけです。

このインパクトを達成できただけでも、この映画は成功だったのかもしれませんね。
半ばポール・バーホーベンの願望を映像化しただけみたいなとこはありますから(笑)。

チョット、ゴシップ的な話題ではありますが、本作でシャロン・ストーンがヌード・シーンの一部を、
撮影当時「使わない」とポール・バーホーベンから言われていたシーンも、無断で採用され、
それを試写会で初めて知ったから激怒したと報道されていましたから、本人はそうとうにご立腹だったと思いきや、
06年に続編が製作され、随分と積極的に製作に加わっていて、正直、驚かされましたね。
やはり本人も、自身の当たり役で出世作であることは認識しているみたいですね。
(まぁ・・・『氷の微笑2』はデジタル処理の恩恵をかなり受けた内容ではありましたが...)

それと、この映画はファム・ファタールを描いた作品としての雰囲気を上手く表現できていると思う。
主人公のニックがキャサリンの家に行くシーンに統一感があって良いですね。

ただ、アルコール依存症に陥ったニックの過去に関する描写がほとんど無いのが不満ですね。
できることなら、具体的な映像として表現すべきで、ニックの描写に甘さが出ていると思いますね。
一種の病とも言える、ニックの精神的な破綻を表現する意味でも、僕は必要だったと思いますね。

まぁシャロン・ストーンのセクシー演技だけが先行した映画ではありますが、
精神科医ベスを演じたジーン・トリプルホーンもかなり頑張っていますね。
彼女の頑張りが無ければ、映画はここまで光らなかったかもしれませんね。
ベスは本作の中で、キー・マンの一人ですからね。上手く演じることができていると思います。

確かに映画の出来としては傑作とは言い難いけど、
下世話な話題しか上らなかったにしては、意外にもサスペンス映画として健闘しています。

それにしても最近、ポール・バーホーベンの名前を聞かなくなったなぁ。
『インビジブル』でチョット話題になったけれども、映画の出来はイマイチで何だか残念でした。
もう一回でいいから、『トータル・リコール』や『スターシップ・トゥルーパーズ』みたいな映画を観たいなぁ。

まぁひょっとしたら、『氷の微笑3』でも撮ろうとしてるのかもしれないけど(笑)。

(上映時間128分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ポール・バーホーベン
製作 アラン・マーシャル
脚本 ジョー・エスターハス
撮影 ヤン・デ・ボン
美術 テレンス・マーシュ
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 マイケル・ダグラス
    シャロン・ストーン
    ジーン・トリプルホーン
    ジョージ・ズンザ
    レイラニ・サレル
    ドロシー・マローン
    ウェイン・ナイト

1992年度アカデミー作曲賞(ジェリー・ゴールドスミス) ノミネート
1992年度アカデミー編集賞 ノミネート
1992年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(マイケル・ダグラス) ノミネート
1992年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(ジーン・トリプルホーン) ノミネート
1992年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト新人賞(シャロン・ストーン) ノミネート