バンコック・デンジャラス(2008年アメリカ)

Bangkok Dangerous

なんで、ニコラス・ケイジがこんな映画に出演したのか、
僕にはよく分かりませんが、製作にも加わっているようで、出資もしているみたいですね。
(ということは、どうしても彼には映画化したいという気持ちの強さがあったのでしょう・・・)

なんだかバブル経済の影響で、90年代に数多く作られた、
日米合作のビデオ映画のような味わいがある作品で、低予算映画な雰囲気たっぷりなのですが、
いざ観てみても、やっぱりニコラス・ケイジがどうしてこの映画に入れ込んだのか、よく分からなかった。。。

00年のタイ映画『レイン』のハリウッド資本によるセルフ・リメークとのことですが、
せっかくのニコラス・ケイジ主演の映画であっても、これではすっかりB級映画の香りがプンプン漂ってる(笑)。

暗殺のベテランだったはずの主人公がバンコクでの新たな任務の過程で、
それまでは守れていたはずの鉄則の一部が守れず、チョットしたミステイクから窮地に追いやられるのですが、
こんな簡単に鉄則を破ってしまう主人公が、ホントに立派に職務をこれまで全うできていたのか、
思わず心配になってしまうぐらい主人公からストイックさが伝わってこないのは、いただけないなぁ。

07年の『NEXT−ネクスト−』でも、
あまりに変な髪形だったので気になって映画に集中できなかったニコラス・ケイジですが(苦笑)、
なんと本作でも同じような髪型にして、B級映画に出演してしまうという暴挙に出たあまりに失笑。
申し訳ないけど...元の髪型に戻して出演して欲しいと切に願っております(笑)。

随分と激しいアクション・シーンを幾度となく、こなしており、この辺は気合が入っていますね。
ニコラス・ケイジがここまで直接的なアクション・シーンを演じているのを観たのは、久しぶりな気がします。

タイの市街地はもとより、映画の中盤にあるボートを使ったアクション・シーンはなかなかの出来で、
さすがにアクション・シーン一つ一つの出来は悪くはなく、スピード感・緊張感ともに感じられます。
あとは映画の各エピソードのつなぎと、クライマックスまでの盛り上げ方なんですね。
やっぱり、この映画、こういった演出面でのテクニックがイマイチで、結局は力技頼りなんですよね。
特にクライマックスでのアクション・シーンは無理矢理に持っていった感いっぱいで、強引過ぎます。
この辺はハリウッド資本なのですから、もっとプロダクションが助けてあげて欲しいところですね。

厳しい言い方かもしれませんが...
『レイン』を撮り、本作でセルフ・リメークの機会を得た“ザ・パン・ブラザーズ”は、もっと研鑽が必要だと思います。
確かにタイ映画界の中ではズバ抜けた存在なのだろうし、部分的には良いモノを持っていると思います。
でも、やっぱり総合力という意味で見劣りすることは否めないですね。この辺は経験も大きいファクターです。

ですから、ひょっとしたらいずれは凄い世界的な映画監督になるかもしれません。
しかし現時点では、更なる研鑽が必要でしょうね。このままでは、やっぱり埋もれてしまうような気がします。

全編通して、ブルーを基調とした色使いで統一する映像表現も、もうありふれてますしね。
決して悪い映像感覚ではないのでしょうが、もう一工夫必要だと僕は思います。
もうこういう映像って、ここ10年のアジア映画で多用され過ぎてるんですよね(“キタノ・ブルー”の影響か?)。

劇中、薬局の店員の女性に惚れてしまった主人公が、彼女を夕食に誘うシーンがあって、
一緒にトムヤンクンなどタイ料理をつつき合うシーンがあって、このシーンはギャグに見えて仕方がなかった。
一人デレデレするニコラス・ケイジは相変わらずなのですが、このシーンだけがコメディ的で浮いてしまっている。
このロマンスはそんなに悪い雰囲気ではなかったと思うのですが、この程度なら必要性は無いかな。
ハッキリ言って、欲張って描くほどではなく、むしろアクションだけにフォーカスした方が良かったかもしれません。

ちなみにこの店員さんを演じた女優さん、
失礼ながら、おそらくそんなに若くはないと思うんだけど...キレイな人でしたねぇー(笑)。

日本でもウケにくいタイプの映画かとは思われますが、
“腕チョンパ”などショッキングな描写があるせいか、日本ではレイティングの対象になったのもマイナスでしたね。
これでヒットを望める映画ではなくなってしまったのが、アッサリ劇場公開が終了した要因の一つでしょう。

僕はまだ『レイン』を観ていないためか、この映画のラストは正直言って驚いた。
徐々に破滅的なストーリー展開になっていったせいか、ある程度の予感はありましたが、かなりの予想外。
こういう破滅的なキャラクターをニコラス・ケイジが演じたというのも、久しぶりの話しではありますね。

主人公のことを“弟子”と慕う現地人との関係もあるのですが、
こういった選択をするのは、タイという国の法制度なんかも意識してなんでしょうかねぇ〜。
と言うのも、タイの法律って、詳しくは知らないんだけど、やたらと犯罪に対する処罰が厳しいイメージがあって、
闇組織の暗殺者なわけですから、逮捕・拘束されてはいけないのですが、こういった決断をするというのは、
タイという国の警察を相手にしては外国人では太刀打ちできないと判断したのかもしれませんね。

それを考えたら、トムヤンクン食べてイチャイチャしてる場合じゃなかったですねぇ。
僕も辛い料理はトコトン苦手ですが、何故かこのトムヤンクンは少しだけなら食べてみたいかも。
そんな不思議な国、タイをアピールする側面も担って欲しかったのでしょうが、
映画のタイトルが『バンコック・デンジャラス』ですから、ニコラス・ケイジにはそんな気、サラサラ無かったのかも。

それでもタイには、行ってみたいなぁ〜(笑)。

(上映時間97分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[R−15]

監督 オキサイド・パン
    ダニー・パン
製作 ジェイソン・シューマン
    ウィリアム・シェラック
    ニコラス・ケイジ
    ノーム・ゴライトリー
脚本 ジェイソン・リッチマン
撮影 デーチャー・スリマントラ
編集 マイク・ジャクソン
    カーレン・パン
音楽 ブライアン・タイラー
出演 ニコラス・ケイジ
    チャーリー・ヤン
    シャクリット・ヤムナーム
    ペンワード・ハーニー
    ニラティサイ・カルジャルック
    ドム・ヘトラクル
    クリス・ヒービンク
    ジェームズ・ウィズ