バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年アメリカ)

Back To The Future Part V

全世界を熱狂させた、メガヒット・シリーズの最終章となる第3弾。

これは第2作と連続して撮影が敢行されており、本来は1本の作品として
シナリオが書かれていたものを、上映時間が長くなることを嫌った映画会社が、2本の映画に分けました。
ですから本作は、言わば後編です。ロバート・ゼメキスも色々なアイアが止まらなかったのでしょう。

前作では、マーティとジェニファーの息子が大変な事件に巻き込まれる2015年の未来へ行き、
なんとかマーティ一家に不幸が起きるのを止めることができたものの、未来のビフ老人が勝手にデロリアンを運転して、
1955年の若き日のビフに大富豪になる術を与えたために、過去が大きく変わってしまい、ビフ独裁の社会が
形成されてしまったことから、1955年に戻って、マーティとドクがビフが大富豪になるキッカケを潰しに行きます。

そこでチョットしたトラブルで、ドクがデロリアンに乗って1885年にタイムスリップしてしまい、
1955年に残されたマーティは、1885年にタイムスリップしたドクの“遺言”を受け取り、
1885年のドクが隠したデロリアンを発掘して、1955年のドクにデロリアンを直してもらうことにします。

この第3作は、デロリアンを直してもらうところから始まるわけですから、
1885年の西部開拓時代にタイムスリップしても違和感がないようにと、1955年のドクが独特なカウボーイ衣装を
マーティに着させてデロリアンに乗らせるのですが、このファッションがどう考えても、西部開拓時代には“浮く”(笑)。

シリーズ通して観ると、この第3作が最も破天荒な内容でしょう。
未来から持って来たホバークラフトを使って、実用化されたばかりの蒸気機関車にデロリアンを押してもらって、
何とかタイムスリップできるスピードまで上げよういう発想は、前2作以上にハチャメチャなパワーで押し切る。

もう、スピルバーグのプロダクションの力を借りまくりな企画でしたが、
ロバート・ゼメキスのアイデアも的確なもので、それを見事に映像化できたものだから、
辛抱強く続編を待った、当時の本シリーズのファンの期待に、見事なまでに応えたわけですね。

イーストウッドの『荒野の用心棒』へのリスペクトなのか、マーティは1885年の時代で
自分の名前は「クリント・イーストウッドだ」と偽名を使っているし、タネンとの避けられない対決で
マーティが『荒野の用心棒』と同じ手を使うというのが面白いのだが、これは実は前作に伏線がある。
やはり撮影自体は一気通貫で、通しでやってしまったので、ホントはもっと分かり易い伏線だったのでしょうね。

僕は映画が好きになる前から、日曜洋画劇場で何度も放送していた本シリーズの日本語吹替版が
大好きで何度も観ていたので、子供の頃から本シリーズに夢中になっていたわけです。
当時は第4作が誕生するのかもと思っていましたが、内容的にもこの第3作で打ち止めだったわけで、
まぁ・・・残念は残念ですが、それでもこんな素敵なシリーズを子供の頃から楽しめたことを幸せに思いますね。

自分の体験からとしか言いようがありませんが、
今4歳半になった子供と一緒に、あらためてシリーズ三部作を全て、僕が慣れ親しんだ日本語吹替版で
鑑賞しましたが、2021年に4歳児として生きる子供にとっても、楽しい映画に映ったようです。

やはり、良いものは時代を超えますね。いつまでもワクワクさせる、最高のエンターテイメントです。

ラストシーンの空飛ぶSLはさすがに飛躍したデザインでしたけど、
映画全体としては、よく破綻することなく、上手く収めたなぁと感心するばかりの出来です。
この辺は当時のロバート・ゼメキスの冴えっぷりが、やっぱりスゴかったのだろうなぁと実感させられます。

そしてドクが恋焦がれるクララ役として、メアリー・スティーンバーゲンというのが
『タイム・アフター・タイム』を観ていた映画ファンなら誰しも、心動かされるキャスティングだ。
メアリー・スティーンバーゲンがジュール・ヴェルヌがどうのと語っているのを観ると、なんだかSFとの縁を感じる。
このストーリーの流れで、ドクの恋愛を匂わせるというのは、作り手としても勇気が必要だったと思います。

下手をすると、映画の雰囲気をブチ壊す可能性すらあったと思います。
そこを上手い具合にソフトにドクの恋心を描き、ラストに上手く結んだストーリーテリングは見事だ。

映画の出来としては、正直、第1作や第2作と比べると、見劣りはするような気がします。
期待していたガン・アクションもそれほどではなかったし、胸躍る西部の世界を描いたという感じではありません。
とは言え、良い意味で遊び心溢れる演出に、この第3作が一番好きだというファンも実は多いのではないでしょうか。

飲めない酒と向き合い続けるドクのコミカルさも面白いが、
そこから一気にクライマックスのSLに押されるデロリアンのエピソードになだれ込む勢いが素晴らしい。
この辺はロバート・ゼメキスもシリーズの集大成とばかりに、気合の入ったところだったと思う。

もはやこの映画のクライマックスまでいくと、ジェニファーとの恋愛やマーティの家庭環境のことなど、
何もかも忘れてしまっているが、いざ1985年に戻ってきたら、マーティにとって都合の良い「現在」に
落ち着いていくというのは、正確に言えば、「過去」を変えてしまったのだが、これはご愛嬌かな。

作ろうと思えば、更なる続編を作れたとは思うのですが、
さすがのロバート・ゼメキスもその気は無かったようだし、何より主演のマイケル・J・フォックスが
90年代初頭は人気俳優として多忙だったし、パーキンソン病との闘病を公言したりと、
第4作の製作が難しい状況になっていきました。僕の記憶が確かなら、何度か続編の噂は出てたと思うけど。。。

それまでは、SF小説の難解なテーマとも解釈されていたタイム・パラドックスを、
とても分かり易いフォーマットで展開し、世界的にファンを作ったシリーズであるという事実を思うと、
80年代に製作されたSF映画としては、ひょっとしたら最も強い影響力を持った作品だったのかもしれません。

そういう意味では、本シリーズはとても偉大なシリーズであり、
ロバート・ゼメキスはこの第3作で、とても上手く、優等生的なシリーズの締めくくりができました。

第1作と似たような作りにしてしまうと、第1作のインパクトには勝てないという結論で終わってしまうし、
そのためにはロバート・ゼメキスがあらゆる工夫をしていることが、なんだか嬉しい作品ですね。
そもそも1985年から30年前に遡って「過去」に行ったので、第2作では「未来」を描きました。
第3作では思いっ切り大胆に「過去」というわけで、100年前の西部開拓時代にタイムスリップします。
丁度、その頃にジュール・ヴェルヌらのSF小説が世界的にも評価された時期ですから、上手い具合にリンクします。

まぁ・・・90年代に入ってからのロバート・ゼメキスも悪くはないのですが、
個人的には彼が映画監督としてホントに冴え渡っていたのは、一旦、本作あたりで一区切りかと。
何気に、89年の『ロジャー・ラビット』なんかも好きなんですが、本作あたりまで新しいことにチャレンジしてて、
90年代からのロバート・ゼメキスはまた違ったステージで活動し始めた・・・という印象が強いですね。
その“違ったステージ”というのも、94年の『フォレスト・ガンプ/一期一会』で頂点を迎えるわけですがね。

それにしても、このシリーズはBlu-rayになっても、
かつての日曜洋画劇場で放送したヴァージョンの日本語吹替版を収録してくれていて、実に素晴らしい(笑)。
従来のビデオで市販されていた日本語吹替版も収録されており、凄いサービスだなぁと感じています。

これはDVDボックスのみの特典かと思っていたのですが、Blu-rayになっても標準仕様のようで安心しました。

(上映時間119分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ロバート・ゼメキス
製作 ボブ・ゲイル
原案 ロバート・ゼメキス
   ボブ・ゲイル
脚本 ボブ・ゲイル
撮影 ディーン・カンディ
特撮 ILM
音楽 アラン・シルベストリ
出演 マイケル・J・フォックス
   クリストファー・ロイド
   メアリー・スティーンバーゲン
   リー・トンプソン
   トーマス・F・ウィルソン
   エリザベス・シュー
   マット・クラーク
   リチャード・A・ダイサート