エニイ・ギブン・サンデー(1999年アメリカ)

Any Given Sunday

まぁ、とにかく目まぐるしく展開するスポ根映画ですが...
この熱っぽい語り口が、如何にもオリバー・ストーンらしくて、しっかり楽しませてくれる内容だ。

30年以上にもわたってマイアミのアメフト・チームのコーチを務めるトニーが、
チームの不調の中、オーナーであるクリスティーナの執拗なまでの介入に悩みながら、
抜擢した新人ウィリーが自身の戦術に従わず、チームワークも乱れ始め、
更にトニーの苦悩が深刻化しながらも、如何にして誇りを取り戻すかを描いています。

スポーツとはエンターテイメントであり、今となっては商業性も伴っていることは否定できないだろう。

日本で言えば、馴染み深いプロ・スポーツとしてプロ野球が挙げられますが、
毎年、観客動員数などに悩んでいるのは周知の事実であり、如何に球場へ観客を呼ぶかがポイントです。
プロ・スポーツはスポンサーあっての状態であり、当然、オーナー企業が儲からない限り、
選手たちへ報酬を分配することができません。ただでさえ、スポーツ選手の給与が高騰していますから、
オーナー企業としては安定した高い収益性を確保し、永続的な発展を期することが大きな目標なのです。

ですから、僕は本作で描かれた全てを否定する気はありませんし、
チーム采配までにも介入したくなるクリスティーナの“気持ち”は理解できます。
ところが、実際に口を挟んで介入してしまうと、それはそれで問題になってしまいがちです。
オーナーはあくまで、実際にプレーする選手や指揮官の気持ちを鼓舞する環境を整えなければなりません。

本作にはオリバー・ストーンらしい、ジャーナリストとしての見地があって、
スポーツとエンターテイメント、そしてスポーツと商業性の双方を分析的に論じているんですよね。

かなりヴォリュームのある映画で、実に2時間30分にわたって汗にまみれた男の世界を堪能できるのですが、
オリバー・ストーンのグイグイと力強く引っ張る演出のおかげで、その長さはあまり感じないかもしれません。
MTV感覚の映像処理はあまり感心できないけれども、迫力のアメフト・シーンなど、特筆に値する部分はある。

やっぱり、こういう仕事ができるのはオリバー・ストーンしかいないと思うんですよね。

アル・パチーノの十八番である(笑)、大絶叫演技も相変わらず絶好調(笑)。
特に映画の終盤でチームを鼓舞するために披露される、大演説は本作最大の見せ場だろう。
「無駄に生きるな、熱く死ね!」とは過激な台詞ですが、チームプレーを周知する姿が勇ましいですね。

そんなアル・パチーノ演じるトニーの采配を、幼い頃から父親の陰から見てきたという、
若く美しい女性オーナーのクリスティーナを演じたキャメロン・ディアスは、実に堂々たる熱演ですね。
ベテラン俳優のアル・パチーノと堂々と渡り合っている感たっぷりに、上昇志向強いオーナーを見事に体現。
正直言って、オリバー・ストーンも彼女がここまでの存在感を出すとは、いささか意外だったのではないだろうか。

プロ・スポーツのビジネスとしての駆け引きの表現は彼女なしでは成立しえなかったですね。
実に数多くのスターが出演した本作の中で、最も大きな収穫だったのは紛れも無く、彼女でしょう。

ただ、チョット狙い過ぎな部分があって、
プレーヤーの不屈な精神などを『ベン・ハー』とクロスオーヴァーさせようとしている部分があって、
事実、映画の終盤で今は亡きチャールトン・ヘストンが出演していたりするのですが、
これが全くと言っていいほど訴求せず、失敗に終わってしまっているのが、何とも残念ですね。
さすがにサブリミナル効果のように、『ベン・ハー』のコロシアムでの名シーンを挿入するのは、やり過ぎだと思う。
オリバー・ストーンの主張も理解はできるし、合理性はあるんだけれども、表現が悪かったと思いますね。

それにしても、デニス・クエイド演じるベテラン・プレーヤーの“キャップ”の描写が印象的だ。
常に第一線のクォーターバックとして、体を張ってきたベテラン・プレーヤーで、
所属するチーム「マイアミ・シャークス」の功労者であり、トニーからも息子同様の扱いを受けますが、
絶えない怪我、そして体に走る激痛の嵐、そして徐々に衰えてきた気力を前に引退を考えます。

もう若くはない年齢で、経済的には家族を養えるだけの財力は手にした。
そこで「実は引退しようと思ってるんだ」と妻に告白すると...妻からは、怒りのこもったビンタ一発。

「何甘ったれたこと言ってんのよ! アンタはプレーヤーとして、まだ2、3年はやれるじゃない!」

一番、大きな問題なのは、アメフト選手として活躍することが“キャップ”だけの問題ではなくなっているいて、
妻にとってもスター選手の妻としてのアイデンティティが確立されてしまっていたということなんですね。
確かにこれはありえることです。莫大な報酬を手にするプレーヤーであり、マスコミからもチヤホヤされます。

しかし、ここで見誤ってはいけないのは、自分の体は自分が一番、よく分かっているということ。
あらゆる側面から、プレーヤーとしての引き際を悟った時ってのは、真の意味での引き際なんですね。
そのおかげで周囲は肝を冷やすこととなり、危うくトンデモない悲劇を招くリスクを冒してしまいます。

オリバー・ストーンがどこまで、こういった周辺のエピソードに比重を置いて演出していたのか、
正直言って、よく分からない内容ではあるのですが、サブ・エピソードとは言え、よくケアしていると思いますね。

まぁクドい、そして騒がしい映画が苦手な人には合わないかもしれませんが、
オリバー・ストーンが撮った映画が好きな人なら、おそらく無条件的に大満足の一本だろうと思います。
ただどうでもいいけど、一気に観通すにはそれなりの気力・体力が必要な映画で、少しマイるなぁ〜(笑)。

(上映時間150分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 オリバー・ストーン
製作 ローレン・シュラー・ドナー
    クレイトン・タウンゼント
    ダン・ハルステッド
原案 ダニエル・パイン
    ジョン・ローガン
脚本 ジョン・ローガン
    オリバー・ストーン
撮影 サルヴァトーレ・トチノ
編集 トム・ノートバーグ
    キース・サラモン
    スチュワート・ワクス
音楽 ロビー・ロバートソン
    ポール・ケリー
    リチャード・ホロウィッツ
出演 アル・パチーノ
    キャメロン・ディアス
    デニス・クエイド
    ジェイミー・フォックス
    LL・クール・J
    ジェームズ・ウッズ
    マシュー・モディン
    アーロン・エッカート
    ジム・ブラウン
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