アナライズ・ユー(2002年アメリカ)

Analyze That

これはいろんな意味で苦しい映画ですね。

99年にヒットした『アナライズ・ミー』とハロルド・ライミスが再び、
同じキャストを集めて、調子に乗って続編を撮ってしまったという感じのコメディ映画。
ハロルド・ライミスはコメディを専門に創作活動を繰り広げてきた映像作家ではありますが、
さすがに本作は撮影途中からキツかったのか、どうも映画の流れが良くないまま進んでしまいます。

別にそんなわけではないでしょうが...
半ば勢いだけで決まってしまった続編のような気がしてしまうだけに、
やはり企画の段階で、もっとキッチリよく練ってから、撮影を進めた方が良かったですね。
これはさすがに企画だけが先行してしまったような作品という気がしてなりません。

そりゃ、デ・ニーロも既に前作のヒット、『ミート・ザ・ペアレンツ』の世界的な大ヒットなど、
本作が劇場公開される頃には、既に多くのコメディ映画に出演していたせいか、
ビリー・クリスタルとの掛け合い演技にしても、前作よりは更にナチュラルになった印象が残ります。

まぁこういう映画に出会ってしまうと...
つい「デ・ニーロも仕事をよく選んで欲しい」なんて贅沢を言いたくはなるのですが、
逆に言えば、こういう作品に企画が持ち上がる度に出演を決断するあたり、
本人もこういうのが好きなのかもしれません。ビリー・クリスタルとのコンビネーションも今やバッチリです。

但し、この映画はとても苦しいですね。
それはやはり続編とするほどの勢いは前作の時点でなかったせいか、どうも魅力が感じられないんですよね。

デ・ニーロ演じるマフィアのボス、ポールにしても前作で彼のキャラが出てしまっているせいか、
ビリー・クリスタル演じる精神科医ベンとの位置関係も映画が始まった時点で見えてしまっていて、
当然のことながら新鮮味は無いわけなのですが、この映画にはそれをカバーする面白さが無い。
これではさすがに続編を製作してまでも、シリーズ化させることの意味を持たせることができていないかな。

まぁポールが刑務所に入ってまでも、ベンのセラピーを受け続けていて、
今度は命を狙われることの恐怖と闘い続けていて、結局、やたらとポールはベンに依存して、
しつこく電話をかけまくって、SOSのサインを出し続けるという出だしは、そんなに悪くはない。

でも、それからポールがベンの助けを受けるために刑務所から脱出する経緯なんかは、
デ・ニーロは楽しそうに演じていたけど、個人的にはそこまで面白いギャグだとは思えなかったなぁ。
どうせ、この映画は元々、ブラック・ユーモアもあったわけですから、もっとブラックな笑いでも良かったと思う。

それをカバーするために、幾度となく一般社会で働こうとするポールを描いたのだろうが、
カー・ディラーをやって、すぐにケンカをふっかける姿を見ても、笑わせてくれるというほどではなかったですね。

監督のハロルド・ライミスの腕からすれば、これは明らかに失敗作だと思う。
彼ぐらいの実力と経験があれば、最低でももっと面白い映画にはできたはずだ。
おそらく色々な部分で、前述したように企画が先行してしまい、内容がしっかり練られず、
何をどう撮るか、ハッキリとさせられないまま、撮影がスタートしてしまった感が強く残っているように思いますね。

そのせいか、ベンの婚約者を演じたリサ・クドローの存在感が弱いという、
前作での弱点を相変わらず埋められておらず、せっかくのチャンスなのに、なんだか彼女が可哀想ですね。

結局、前作での反省を活かすという観点なく、企画が進んでしまったせいか、
ハロルド・ライミスとしても前作のアウトラインをなぞるだけのアプローチに終始してしまい、
結果として出来上がったものは、前作のコピーに近い内容とになってしまい、これでは手落ちな仕事ですよね。

別に、僕はもっとキッチリ作り込めていれば、続編を製作するこは悪くはなかったと思う。
ましてや前作はそこそこヒットしているわけで、ファンの期待に応えるという目的もあったはずだ。
これは人によって解釈の分かれるところだとは思いますが、僕は本作の場合、前作の二番煎じではダメだと思う。

確かに映画界には二番煎じでも許されるシリーズというのは、存在します。
でも、それらは何故、二番煎じで許されるのか?ということをしっかり考えて欲しい。

僕が思う、その答えは二番煎じでも通用する面白さ、魅力といったものが映画にあるからだと思う。
で、前作『アナライズ・ミー』にそこまでの面白さがあったかというと、僕はそれは大きな疑問ですね。
だからこそ、僕は本作の場合は二番煎じの面白さでは、とても通用するものではなかったと思うんですよね。
その点に製作をプッシュしたビリー・クリスタルやバリー・レビンソンらが、気づいていたかが問題ですね。
(本作にはバリー・レビンソンが製作総指揮として参加している)

こうなってしまうと、エンドロールのNGシーン集にしても、あまり楽しめない。
デ・ニーロのNGシーンなんて、あまり観られるものじゃないのですが、どうも全てが空回りしてしまいますね。

まぁ・・・残念ながらノリだけで作ってしまった映画の失敗の好例となってしまった感がありますね。
キャストを見ても分かりますが、そこまで低予算な映画ではないだけに、これは凄く勿体ない気がします。
もう少し工夫するだけで、おそらく映画の印象は大きく変わっていたと思えるだけに尚更なんですよね。

強いて言えば、この映画の締めくくりは悪くない。
半ば、「続編は今回だけだよ」と言わんばかりのエンディングなのですが、自然体な感じで良いですね。

ちなみにポールの腹心を演じたジョー・ヴィテレッリは04年に他界しましたので、
残念ながら本作での姿が、最後の勇姿となってしまいました。そう思って観ると、このラストも味わい深いなぁ。

(上映時間96分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ハロルド・ライミス
製作 ジェーン・ローゼンタール
    ポーラ・ワインスタイン
撮影 ピーター・スタインフェルド
    ハロルド・ライミス
    ピーター・トラン
撮影 エレン・クラス
編集 アンドリュー・モンドシェイン
音楽 デビッド・ホームズ
出演 ロバート・デ・ニーロ
    ビリー・クリスタル
    リサ・クドロー
    ジョー・ヴィテレッリ
    キャシー・モリアーティ
    ジョン・フィン
    カイル・サビー
    キャリー・ソーン
    ジェームズ・ビベリー