アメリカン・スウィートハート(2001年アメリカ)

America's Sweethearts

理想的なカップルと称され、結婚生活を送り、映画でもカップルを演じれば
その映画は例外なくヒットしてきたハリウッド俳優同士のカップルが妻の浮気により別居し、
夫は嫉妬に狂い様々なトラブルを起こし、奔放な妻は相変わらずワガママを通す。

ところが離婚のキッカケとなった妻の浮気が発覚した夫婦共演作の完成が危ぶまれ、
ようやっと開催されることになったマスコミへの試写会へ向けて、戦々恐々とする2人を何とかして出席させ、
マスコミへの映画の売り込みにあらゆる手を尽くす敏腕プロモーターの姿を描いたラブ・コメディ。

公開当時、まだジュリア・ロバーツのネーム・バリューがあった時代で、
本作もそこそこヒットしていたはずなのですが、これはあまり褒められた出来の映画ではなかったですね。

難しい問題ですが...
やっぱり僕は映画界の内幕を描いた映画ってのは、どうしても好きになれない。
いや、それだけじゃなくって、根本的にこの映画はあらゆる面でしっかりと機能していない。

まず、キャスティングで大きな問題を抱えていて、ジュリア・ロバーツがキャサリン・ゼタ=ジョーンズの
妹を演じるという発想はさすがに無理があるのではないだろうか。このギャップも上手くカバーできていない。

それからストーリー的な発想の面で、映画撮影の裏側を見せるという結末が致命的なほどにつまらない。
これは本編を観れば分かりますが、あんなことをやったら間違いなく、ハリウッド追放ものでしょう。
いくら新時代感覚の映画とは言え、あんなゴシップを映画にしたって、映画ファンが喜ぶわけがありません。
(確かに実録ドキュメンタリーというジャンルはあるが、あれは意味合いが全く違います)

それから感覚的な部分で言えば、コメディ・パートが悪い意味で中途半端で、“押し”の弱さが目立つ。
ビリー・クリスタルの脚本ですから、いつもこんな感じと言えばそれまでですが、本作は特に歯切れが悪い。
映画の中盤でも砂漠地帯にあるホテルのプールで、ジョン・キューザック演じるエディが覗き見していたところ、
フェンスから落下してしまい、サボテンに股間から落ちてしまい“大惨事”になってしまうというエピソードも、
おそらくコメディ・パートとして扱いたいんだろうけれども、流れが悪くってイマイチ面白くない。

肝心かなめな恋愛エピソードにしても、ジュリア・ロバーツ演じるキキの描き込みが足りなくって、
これでは全く盛り上がらず、彼女にしてもただ情緒不安定な印象しか残らないのは残念。

正直言って、いろんな回り道をしている映画なんだけれども、
もっと脚本の段階から練って、ポイントを絞った内容にすべきだったと思うんですよね。
コメディにしても、恋愛にしても全体的に散漫な印象しか残せないのは、映画にとって致命的と言っていいだろう。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズはまだブレイク真っ最中の頃で、さすがに彼女に勢いはある。
すっかり貫禄があるように感じられはしますが、奔放に生きる性格にはどことなく若々しさも感じさせます。
(劇中、彼女がタップダンスを踊るシーンは、思わず次作『シカゴ』のリハーサルかと思いました。。。)

やっぱりこういう作品を観ると、映画に於いても如何に企画が重要かということを実感しますね。

ある意味で本作は、映画のプロデューサー業の難しさにも触れているのですが、
自分で投資して、自分で撮ってしまうならともかく、多くの場合は多額の投資をして他の監督が撮るわけで、
一般的な株式会社で言う、株主と代表取締役の関係と一緒なわけで、そりゃ投資する側から見れば、
映画の撮影の進捗状況や、映画の出来、マスコミの評判などが気にならないわけがありません。
場合によっては莫大な資産を生みますが、場合によっては破産させられてしまうからです。
(だからこそ、企画を持っている業界人は、自身の企画の売り込みに必死なわけだが・・・)

監督のジョー・ロスの演出は無難な感じではありますが、
やっぱり全体の構成バランスを見直して欲しかったですね。これではあまりに見せ場が無さ過ぎます。
それは各パートが機能していないから、と厳しい見方をされても僕は仕方ないかと思いますね。

そういう意味で上映時間がタイトだったのは正解でしたね。
正直言って、これ以上長かったら、更にひじょうに厳しい結果となっていた可能性が高いものと思われます。

99年にアルバート・ブルックスが『ハリウッド・ミューズ』を撮って、
ハリウッドの内幕を強烈に皮肉っていますが、いずれも成功だったとは言い難い作品でした。
本作にしても、『ハリウッド・ミューズ』にしても、一人の映画人が業界の裏側で動き回るという内容ですが、
いずれにしても「この業界はこんなに大変なこともあるんですよ」と言われてるみたいで、共感し難いかも。

そりゃ確かに・・・映画業界が一番、彼らの近いところに存在していますから、
ネタとして描き易いという気持ちはよく分かりますが、こういった内部事情は何処にでもありますからね。
こうして観てしまうと、あたかも映画業界だけが特化しているように見えて、共感は生みにくいかもしれません。
(まぁ・・・銀幕のスターが強烈にワガママという設定は、現実にもあるのでしょうが・・・)

それにしても、もうチョットは映画の出来が良ければ救いもあるのでしょうが、
繰り返しになりますが、本作のこの出来では厳しい感想しか出てこないですね。
日本でも大PRして劇場公開された結果、評判は芳しくなかったことによく反映されていると思います。

こうなってしまうと、せっかくのクリストファー・ウォーケンも狙い過ぎなキャラクターに思えてしまって、
どうしても僕の中で出来上がってしまったイメージが払拭できなかったのも、残念でなりません。。。

(上映時間103分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ジョー・ロス
製作 スーザン・アーノルド
    ビリー・クリスタル
    ドナ・ロス
脚本 ビリー・クリスタル
    ピーター・トラン
撮影 フェドン・パパマイケル
編集 スティーブン・A・ロッター
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ジュリア・ロバーツ
    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
    ジョン・キューザック
    ビリー・クリスタル
    ハンク・アザリア
    クリストファー・ウォーケン
    スタンリー・トゥッチ
    セス・グリーン
    アラン・アーキン