ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007年日本)

05年に公開された第1作の大ヒットを受けて製作された第2弾。
今回は少しだけ時間が進み、東京オリンピック開催が決まり、街が劇的に変貌を遂げる直前が舞台。

まぁ僕も前作は昨今の日本映画の状況を考えると、
この手の規模の大きな映画として考えれば、かなり良く出来た作品であり、楽しめたのですが、
だからこそ続編である本作は正直言って、心配でした。こういうのは成功させるのが、凄く難しいから。

おそらく映画の作り手もそうとうに苦労したでしょう。
そのせいか、必死にエピソードの量を増やしてカヴァーしようというのが、分かります。

映画の焦点は、駄菓子屋を営みながら執筆活動を続ける茶川が、
本気で芥川賞を目指して、純然たる新作を書き始めることにあるのですが、
最初に敢えて苦言を呈するならば、故意にエピソードの量を増やし過ぎたせいか、
どれも散漫になりがちで、今一つ本来的に中央に置くべき要素にフォーカスし切れなかった印象はあります。

ただ、これは許容範囲。
あからさまにつまらなくなることを回避するための、方針としてであれば理解できる範囲です。
特に前作と同じような流れを汲む内容になるのは至極当然ですので、これは仕方のないことだろう。

強いて、改善すべき点としては全体的な尺が長く、少し映画の中盤でダレていることでしょうか。
まぁこれはエピソードを減らせば解消するんだけれども(笑)、全体的に演出のテンポが悪いかも。
前作より各エピソード、少しずつダラダラやってしまう悪い癖が付いているような感じで、
特に野良犬との交流など、子供たちのエピソードは全てに於いて冗長な傾向にあるのは気になりますね。

でも、繰り返しになりますが...
これは別に致命的なミステイクとは言えず、あまり目くじらを立てるほどのことではないと思います。

前作の時点で凄く感動しましたけど、
街中を縦横無尽に走る都電を再現した映像表現は相変わらずですが、
今回は前作では蒸気機関車だった鉄道で、何と東京〜神戸を結んでいた「特急 こだま」を再現。

自分でも、何でそんなことを思うのか訳が分かりませんが(笑)、
鉄道好きなら、誰もが「チクショウ、やりやがったな...」と思わずニヤリとさせられる演出ですね。

今でこそ、関東地区と関西地区の移動は新幹線がメインですが、
それまでは如何にしてスピードアップを図って、日帰り出張を可能にするかというのが問題でした。
そりゃ飛行機はありましたけど、飛行機を利用できたのは当時、ごく僅かなビジネスマンだけ。

そこで登場したのが1958年、「特急 こだま」でした。
最高時速110km、停車駅をできるだけ割愛することによって、東京〜大阪を6時間50分で結び、
あくまで時刻表上では、東京・大阪の滞在時間をそれぞれ2時間とし、日帰り出張を可能としました。
結局、東京オリンピック開幕に合わせて、新幹線が完成しましたので、交通インフラ整備により、
日本のビジネスは飛躍的な進化を遂げましたが、その過渡期の一翼を担ったのが「特急 こだま」だったのです。

僕も写真やテレビ、模型などでしか見たことはありませんが、
この映画を観て、「特急 こだま」で使用されていた国鉄181系の特徴的なヘッドのデザインを見て、
この忠実な映像再現に、映画とは別の意味で感動してしまいました(笑)。これは前作もそうでしたが。。。

いずれにしても、この映画の作り手、そうとうな“鉄ヲタ”です(笑)。

そりゃ街の情景の再構築にも凝ってはいるけど、
いやいや前作といい、鉄道に関するこだわりは半端じゃなく、これはそうとう好きな証拠です(笑)。

そういえば、この映画を観て、もう一つビックリしたのは、
CGとは言え、当時の東京国際空港(羽田空港)を忠実に再現しているシーンがあって、
これもまた当時は知らないけど、あまりに現実味を帯びていて、ビックリしてしまいましたね。
やっぱり、この続編も決して中途半端な気持ちでは作っておらず、かなり研究していますね。

数多くいる出演者陣の中では、相変わらず小雪がいい。
今回はかなり出番が限られていて残念。個人的には小雪をもっと見せて欲しかった(笑)。

第1作と本作、両方観て思ったことなのですが...
これらはシリーズというよりも、2本通して1本の映画と考えた方がいいかもしれません。
そういう意味ではズルい映画だとは思うのですが、連続的に観れば、続編の良さも分かるような気がします。

それを強く意識したのは、映画のラストのシュークリームの“くだり”で、
この帰結を観て、思わず「あぁ、なるほどね」と納得してしまいましたね。これは上手かったと思います。

思わず、映画の冒頭のゴジラが暴れ回るシーンを観て、
「あぁ、この映画もやっちゃったか...」と失望しかけていたのですが、
これはこれで高度経済成長期の日本を象徴する重要なキャラクターですものね。
半ばヤッツケ仕事ではないかと心配していた続編の企画ではありましたが、全然、そんなことはありません。

あまり過度な期待さえしなければ、これは十分に楽しめる、優秀な続編だと思う。

(上映時間146分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 山崎 貴
製作 三浦 姫
    亀井 修
    島谷 能成
    平井 文宏
    島本 雄二
    西垣 慎一郎
    大月 昇
    島村 達雄
    高野 力
原作 西岸 良平
脚本 山崎 貴
    古沢 良太
撮影 柴崎 幸三
美術 上條 安里
編集 宮島 竜治
音楽 佐藤 直紀
照明 水野 研一
装飾 龍田 哲児
録音 鶴巻 仁
出演 吉岡 秀隆
    堤 真一
    小雪
    堀北 真希
    もたい まさこ
    三浦 友和
    薬師丸 ひろ子
    須賀 健太
    小清水 一輝
    マギー
    温水 洋一
    神戸 浩
    飯田 基祐
    ピエール 瀧
    渡辺 いっけい
    小日向 文世
    小木 茂光
    吹石 一恵
    福士 誠治
    貫地谷 しおり
    平田 満
    手塚 里美
    上川 隆也