カリフォルニア・ドールズ(1981年アメリカ)
...All The Marbles
ハリウッド資本の映画としては珍しい、女子プロレスを題材にしたスポーツ・コメディ映画。
人気TVシリーズ『刑事コロンボ』で知られる名優ピーター・フォークが、女子プロレスのマネージャーに扮し、
ケンカしながら興行を続けて、紆余曲折を経てレスラーとの信頼を関係を深めていくプロセスをコミカルに描きます。
骨太な作風で知られるロバート・アルドリッチの遺作となった作品で、最後の作品が喜劇というのも、なんだか妙だ。
つまらない...とまでは言わないけど、確かに正直言って、訳の分からない映画ではあった(苦笑)。
硬派な映画で知られていたロバート・アルドリッチとしても、息抜きがてら撮ったのか真相はよく分からないが、
これまでの監督作品とカラーが違い過ぎるし、コメディと観るべきかロード・ムービーと観るべきか、なんとも微妙。
女子プロレスをまともに映画化したというのは珍しいと思うのですが、劇中に何度も描かれる
リングでのファイト・シーンも女優陣がよく頑張ったなぁと感心させられるほどで、これは撮影も過酷だったと思う。
特に映画のクライマックスで描かれる宿敵“タイガース”との一戦は、マネージャーが対立するプロモーターが
審判を買収して試合を敢行していたためか、試合が思うように進まないわけで、相手も反則しまくりのやりたい放題。
元々、ピーター・フォーク演じるマネージャーはリングサイドで「レフェリーどこ見てんだ!」と叫びまくってましたが、
このクライマックスでの“タイガース”の一戦はホントに酷い。“ドールズ”の2人がかなり痛めつけられてるように見える。
レフェリーは反則はとらないし、ルールを正しく適用しようとせず、露骨に“タイガース”の味方をするものだから、
マネージャーは頭にきて、“ドールズ”にレフェリーを攻撃するように指示するという、荒業に出るというのは面白い。
場外乱闘も含めて、プロレスの醍醐味という感じですけど、いずれにしても女優陣にとって撮影は過酷だっただろう。
そして、一つだけこの映画のアクセントとなっているのが、ビッキー・フレデリック演じるアイリスが
実はピーター・フォーク演じるマネージャーに恋しているという点で、これはホントはこの世界のタブーだと思いますが、
ある種の苦難を共にするパートナーとして心を通わせているというのが、幾度となくケンカしても離れない理由ですね。
まぁ、プロレスも興行ですから、プロモーターとの金に汚い駆け引きや、ドロドロとした人間関係もあるのだろう。
そのせいか、本作のロバートアルドリッチはシビアに生々しく、そういったことを隠さずに描き通そうとしている。
これはこれでロバート・アルドリッチの哲学でもあったのだろうし、本作で彼が最も描きたかったことなのかもしれない。
それからもう一点、興味深かったのは特にアイリスが強い信念を持つ女性として描かれており、
おそらく生活のためとは言え、決してラクな職業ではないレスラーという職業自体に誇りを持ってという点だ。
その証拠に彼女はプロレスを更にエスカレートさせて、まるで見世物のように笑い者に晒される、
泥レスリングをさせられることになり、ほとんどストリップ・ショー同然のような展開となっても続行させられるという、
彼女たちにとって屈辱的なエピソードが描かれていて、そこでアイリスが見せる悔し涙がなんとも印象に残るものだ。
この涙と、アイリスの言葉を聞くと普段はそんな感じに見せない彼女も、レスラーの仕事に誇りを持っていると分かる。
これは決して卑下する意味で言うわけではなく、「やるからにはこうありたい」という彼女の気持ちでもあり、
笑われる仕事ではなく、自分が観客を盛り上げる存在でありたいとする本音が垣間見れる。勿論、金のためなら
どんなことでもやるという安っぽさは彼女にはなく、半強制的に泥レスリングに参加させられた屈辱がなんとも痛々しい。
そんな彼女のプライドと本音を分かっているのか、分かっていないのか...なんとも判断つきませんが、
ピーター・フォーク演じるマネージャーは彼女たちを鼓舞するように盛り上げようとしますが、微妙に噛み合いません。
男の自分の視点から見ても、このマネージャーの立ち位置や言葉はなんとも軽いような気がしますが、
何故にアイリスらに愛されるのかが分からない(苦笑)。普通なら、あんなマネージャーならすぐに愛想つかれるでしょ。
だって、彼はアイリスの気持ちに応えることなく、マネージャー業に徹する男ですからね。稼げればいいというタイプ。
勿論、儲かれば彼女たちに還元する分はいいですけど、旅先でオンナは自室に連れ込むし、とにかくだらしない。
なので、本作でピーター・フォークが演じるのは敏腕マネージャーというわけでもないのですよね。
だからこそ、なんでアイリスらにそこまで愛されるのか...僕には映画の最後までよく分からなかったというのが本音。
こういう清潔感を微塵にも感じさせない、ヨレヨレのオヤジが醸し出すダンディズム(?)が惹かれるところなのかな。
こういう平凡な男をマネージャーとして堂々と描くあたりも、ロバート・アルドリッチの信念だったのかもしれない。
決して絵空事のような世界観ではなく、あくまで現実世界の感覚に即したものを劇中でも表現するという信念だ。
でも、どうしても気になっちゃうんだよなぁ。ピーター・フォークの代名詞と言った、TVシリーズ『刑事コロンボ』。
この映画を観ていても、どうしてもこのマネージャーがコロンボにしか見えないです。刑事をクビになったのかと・・・。
そういう意味では、ピーター・フォークが映画俳優として悩んでいた部分もあったのかもしれない。
確かに『刑事コロンボ』シリーズは彼にとっての当たり役となって、長く続いた名作シリーズにはなったけれども、
ピーター・フォーク自身にとってはそれが足枷になってしまった面もあったと思う。映画俳優としてはヒットに恵まれず、
結局は彼の死後も『刑事コロンボ』シリーズでしか語られない感じだし、これは彼自身の本意だったかは不明だ。
本作への出演も彼にとってチャレンジングな面があったと思うのですが、ヒットしたというほどではない結果でしたから。
映画俳優としては、やや不遇な面もあったと思います。まぁ、本作はピーター・フォークらしさを感じる部分は多いけど。
(だからこそ、娘のようなビッキー・フレデリック演じるアイリスとの恋愛を匂わせる関係性がなんとも微妙・・・)
映画の冒頭に謎の日本人がマネージャーに名刺を渡しに来るシーンがありますけど、これも謎な演出ですね。
欧米の方々もビジネスシーンで名刺を使うことはありますけど、日本ほど多用しないので映画の中で描かれるのは
珍しいと言えば珍しく、ロバート・アルドリッチも日本人を登場させるにあたって、ステレオタイプな発想もあったのだろう。
名刺に“ゲイシャ”がどうのと書かれている意味不明な名刺だったので、これは少々偏見的なニュアンスも否めない。
とは言え、この時代のハリウッド映画ですから、他作品でもこういう描写は多々ありましたからね・・・。
まぁ、色々な意味で珍しいタイプの映画であって、少々カルト的な人気を誇る作品ではありますが、
映画の出来としてはそこまで良いとは言えないかなぁ。コメディに寄るなら、もっとハッキリと寄って欲しかったし。
本格的にプロレスという格闘技の醍醐味を描きたかったとしたら、この表現では中途半端と言わざるを得ないですし。
前述したようにビッキー・フレデリックとローレン・ランドンの“ドールズ”のコンビは頑張っているけれども、
勝負の非情な部分であったり、幾多の困難を乗り越えて栄光を掴み取るといった感覚は、弱いかなぁというのが本音。
個人的には本作はコメディが得意なディレクターに任せて、もっとハッキリとコメディに寄った方が面白くなったと思う。
クライマックスのファイト・シーンはあり得ないくらい、“ドールズ”が痛めつけられますし、
買収された審判は見て見ぬフリするだけだけではなく、“タイガース”が有利になるようにしか判定しないし、
マネージャーが客席が“ドールズ”を応援するような空気感になったことを悟り、観客を鼓舞するようにカウントアップを
煽るという展開になりますが、これは本作最大の盛り上がりですね。このクライマックスの演出は良かったですね。
このクライマックスの人間の欲を満たすためであれば、手段方法は選ばないという生々しい姿を描くというのが
ロバート・アルドリッチの作家性として、これが最も強く描きたかったことだったでしょうし、ここは一貫性を感じます。
女子プロの激しさ、マネージャーとのトボけたコミカルなやり取り、チョットとしたセクシーさ、
それらをブレンドしたロード・ムービーとして描きたかったのでしょうけど、このクライマックスの盛り上がりに至るまでが
映画としては少々、中途半端に映ってしまった気がするのが勿体ない。所々、妙にシリアスになるのもアンバランス。
言わば、本作は日本流に言うところの“昭和ノスタルジー”のような映画だ。
トンチンカンな日本に関する描写も、場違いなくらいに突如としてセクシーさを出したりするのも、ハッキリ言って昭和。
べつに皮肉で言っているわけではないけど昭和って、こういうところがあったし、ハリウッドも似た感覚があったと思う。
それを実に堂々と真正面から描き切ってくれるあたりが本作の潔さと言ってもよく、
本作はそういった昭和なノスタルジーを味わいたい人には、間違いなくオススメできる作品だとは思いますが、
現代のコンプライアンスが喚起される時代には作ることができない作品でしょうね。これはこれで貴重な作品です。
(上映時間113分)
私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点
監督 ロバート・アルドリッチ
製作 ウィリアム・アルドリッチ
脚本 メル・フローマン
撮影 ジョセフ・バイロック
美術 カール・アンダーソン
編集 リチャード・レイン
アービング・C・ローゼンブラム
音楽 フランク・デ・ヴォール
出演 ピーター・フォーク
ビッキー・フレデリック
ローレン・ランドン
バート・ヤング
トレーシー・リード
ウルサリン・ブライアント
クローデット・ネビンズ
クライド 草津
ミミ 萩原