エイリアン2(1986年アメリカ)

Aliens

これは映画史に残る、見事な続編作品。まるでお手本のようですね。

79年にリドリー・スコットの手によって製作された第1作がセンセーショナルな作品としてヒットし、
約7年経ってから、今度はジェームズ・キャメロンの手によって続編が製作されることになりましたが、
これはこれで企画の段階から凄く難しかったはずで、ジェームズ・キャメロンもそうとうなプレッシャーだったでしょう。

第1作では得体の知れないエイリアンが限定された空間内で襲いかかってくる恐怖を
緊張感いっぱいに撮ったスリラー映画としての様相を呈していましたが、どこか独特な雰囲気がありました。
それはリドリー・スコットの作家性であったという見方もできるかとは思いますが、本作は完全なエンターテイメントだ。

ジェームズ・キャメロンも84年の『ターミネーター』の後だっただけに、
第1作のような路線を踏襲することもあったとは思うのですが、映画の路線としては方向転換しました。

本作では、一気に娯楽色を強めて、まるでシューティング・ゲームのような感覚で
迷路のように張り巡らされた艦内のあらゆる通路を辿って、容赦なく襲いかかってくるエイリアンの襲撃を
命からがらかわしながら、エイリアンに反撃しつつも宇宙空間へ逃げようとリプリーは孤軍奮闘します。

クライマックスの死闘なんかも、高層階と低層階がある宇宙船内で
上下左右の空間を縦横無尽に攻め立てるエイリアンに対して、なんとかして逃げつつも
反撃するタイミングをうかがうリプリーとの攻防は見応え十分で、この描き方はホントに上手いですね。

こういうゲーム感覚で追い詰められていく描き方は、数多くの映画で採用されており、
例えばレニー・ハーリンが撮った『ディープ・ブルー』なんかは、本作のスタイルを踏襲した感じに見える。

映画の設定としては、前作から57年間も人工睡眠の状態で宇宙空間をさまよい続けていたリプリーが、
宇宙ステーションによって回収され、今度は宇宙ステーション内で尋問された挙句、かつてリプリーがエイリアンに
襲われるキッカケとなった惑星に入植した家族を助けに行く任務を「顧問」ということで与えられ、再び惑星へ。
何故か気合と根性で乗り切ろうとする海兵隊の連中と一緒に惑星へ行きますが、あえなくエイリアンの襲撃にあいます。
相変わらず得体の知れないエイリアンとの闘いの中、惑星で一人生き延びていた少女を救出することに成功し、
リプリーはなんとか少女を惑星の外へと助け出そうとするものの、海兵隊を次々と餌食にしたエイリアンの魔の手が
リプリーらの逃げ道を次々と塞いでいきます。映画はその過程をジェームズ・キャメロン流のアプローチで構成しています。

前作と同様にリプリー役にはシガニー・ウィーバーをキャスティングしていますが、
さすがに前作の生き残りがリプリーだけだったということもあり、前作からキャスティングは一新しております。
本作は何と言っても、最も印象に残るのは、救助隊に同行するアンドロイドを演じたランス・ヘンリクセンでしょう。

映画のクライマックスでエイリアンの襲撃に晒されてしまいますが、
このクライマックスの攻防でのランス・ヘンリクセンの姿は、ある意味で感動する部分がある。

相変わらずエイリアンの気持ち悪さを表現した美術スタッフの仕事ぶりが素晴らしい。
この辺の映像表現はリドリー・スコットのヴァージョンを踏襲しており、お約束の宿主に寄生したエイリアンが
人間の腹の中を突き破って出てくるショック描写は健在で、当時、このインパクトはやはりスゴかっただろうと思う。

第3作以降は、また独特で個性的な続編の路線となったために、
この第2作がシリーズで最も娯楽色の強い、アクション映画の感覚で観れる、比較的万人ウケする感じだ。
本作で個人的に印象に残ったのは、シガニー・ウィーバー演じるリプリーが救助した少女ニュート≠ゥら
「ママ!」と呼ばれるほど、リプリーからは母性を感じさせる側面があって、単に本能的に生き残ろうとする姿と、
それに加えて、まるで母親のような感覚でリプリーが少女を守って逃げる姿が、シリーズでも異彩を放っている。

それから、この第2作で描かれるエイリアンは前作に比べて、アップデートしたかのように
少々賢くなったように見える。どこまで意志を持って行動しているのかは不透明ですが、
人間を宿主として寄生することで、エイリアンは増殖していくという設定なので、増殖するための本能として、
人間を襲うという設定は前作と同様なのですが、果てしなく広い艦内の上下から襲いかかったり、
天井裏の点検口から逃げる海兵隊を挟みうちにするなど、知能的に行動している側面が描かれている。

ただ単に本能的かつ、目的が不明瞭な感じで人間を襲っていく前作と比較すると、
本作でジェームズ・キャメロンが描いたのは、少しだけ進化したエイリアンというコンセプトだった気がします。

その辺が本作をより魅力的な続編にさせた要因だったのかもしれません。
要は前作の良さを踏襲して、エイリアンの襲撃から逃げるという基本コンセプトは不変でありながらも、
エイリアンの描き方のアプローチは少しずつマイナーチェンジさせながら、工夫して描いています。
そして人間の逃げ方の描き方も、よりエンターテイメントらしくすることで、映画にスピード感が与えられましたね。

リプリーが「顧問」として同行する救助隊として派遣された海兵隊も
気合と根性だけで「エイリアンなんて朝飯前!」ぐらいの勢いで行ってしまう連中というのも面白い。
そのせいで、エイリアンの血液は金属を溶かすほどの強烈な酸性だから、返り血を浴びてはダメだと言うのに、
まるで聞く耳を持たずに、たいした防護服も着用せずに戦いに行くという安直さが、なんとも・・・(苦笑)。

リプリーからすると、エイリアンとの闘いがどういうものなのか分かっているから、
前向きにエイリアンと闘う気になどならないのですが、エイリアンの正体すらキチッと認識していない人々からすると、
どれだけの備えが必要なのか分からず、通常の戦争に行くぐらいの感覚で準備していて玉砕されるのが歯がゆい。

本作はお手本のような続編で、ジェームズ・キャメロンがシリーズ作品が上手いと評される、
キッカケとなった作品である。前述したようにエンターテイメント路線にシフトチェンジしたものの、
決して前作のファンの期待を裏切る内容ではなく、難解なメッセージ性も無く、実にビジネスライクな作品でもある。

但し、本作のようなストーリー展開であるのなら、
リプリーと他に、強いリーダーシップをとる指揮官が登場しても良かったと思います。
基本、リプリー以外の隊員に頼りがいが無く、何人か印象的なキャラクターが登場するのですが、
結果としてリプリーが全員頼りにならないと判断して、自ら判断を下さなければ映画が進まない展開になるという状況は
この手のアクション映画としては賛否両論でしょうね。得てして、こういう続編は魅力的なキャラクターが加わることを
求められることが多いわけで、それがランス・ヘンリクセン演じるアンドロイドだというのは、少々無理があると思った。

この辺はジェームズ・キャメロンのビジョンもあったのだろうとは思うのですが、
せっかく『ターミネーター』で活躍の場を与えたマイケル・ビーンもキャストしたのに、なんだか勿体ない役どころ。

ちなみに本作は、91年に「完全版」として15分ほど追加収録されたヴァージョンがVHSとして発売されました。
この中で、前作で再会を待ちわびていたリプリーの愛娘アマンダが、50年以上にも及ぶリプリーの人工冬眠の間に、
先に他界していたこと聞かされショックを受けるなど、オリジナル劇場公開版を補完する内容になっています。

ここまでくると、SFホラー映画という枠組みを大きく超越した内容なっていますが、
シリーズを継続させるためには、必要な方向転換であったと個人的には思います。その転換を成功させた、
ジェームズ・キャメロンの功績は凄く大きなもので、彼自身が大きなブランドのような存在になりましたね。

色々な意味で、本作の誕生は布石となった作品であると言えると思います。

(上映時間137分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ジェームズ・キャメロン
製作 ゲイル・アン・ハード
脚本 ジェームズ・キャメロン
撮影 エイドリアン・ビドル
特撮 スタン・ウィンストン
編集 レイ・ラブジョイ
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 シガニー・ウィーバー
   マイケル・ビーン
   キャリー・ヘン
   ランス・ヘンリクセン
   ビル・パクストン
   ポール・ライザー
   ジャネット・ゴールドスタイン
   ウィリアム・ホープ
   アル・マシューズ

1986年度アカデミー主演女優賞(シガニー・ウィーバー) ノミネート
1986年度アカデミー作曲賞(ジェームズ・ホーナー) ノミネート
1986年度アカデミー美術賞 ノミネート
1986年度アカデミー視覚効果賞 受賞
1986年度アカデミー音響賞 ノミネート
1986年度アカデミー音響効果編集賞 受賞
1986年度アカデミー編集賞(レイ・ラブジョイ) ノミネート
1986年度イギリス・アカデミー賞特殊視覚効果賞 受賞