あなたにも書ける恋愛小説(2003年アメリカ)

Alex And Emma

00年に『あの頃ペニー・レインと』でブレイクし、一躍、ハリウッドの人気女優となった、
ケイト・ハドソンがラブコメのヒロインに抜擢され始め、映画自体も日本をはじめ、
世界各国で劇場公開されるような規模の大きなものになってきた頃の1本。

同年、彼女は『10日間で男を上手にフル方法』に出演していましたが、
僕は同作はかなり面白いと感じ、本作も同じようなノリで観たのですが、
映画の出来や充実ぶりに関して言えば、『10日間で男を上手にフル方法』の方がずっと良かったですね。

本作の監督は89年に『恋人たちの予感』を撮って、
バブル期に恋愛映画のリーダーみたいになったロブ・ライナーだったのですが、
最近はめっきりダメですね。本作なんかも、ひじょうに歯切れが悪く、映画のテンポも悪い。
せっかくのケイト・ハドソンもラブコメのヒロインとして、上手に活かされているという感じがありませんね。

主人公2人の恋愛描写も甘さが目立ち、成就していく過程に説得力が持てていない。
これは厳しい言い方ではありますが...恋愛映画としては極めて致命的としか言いようがありません。

この辺は、もうチョット、ロブ・ライナーは上手いと思ってたんだけどなぁ〜。
本作なんかは思わず「えっ!? それだけで恋しちまうんだ」と思ってしまう典型的な例ですもんね。
別に何でもかんでも、しつこく描くべきだなんて思わないけど、主人公2人の恋愛を成立させる、
重大なエピソードが、何か一つでいいから、キチッと描いて欲しいですね。この辺が物足りないですね。

どうやら本作は文豪ドストエフスキーが『賭博者』を書き上げたときのエピソードを
モチーフにしているらしいのですが、それにしてももう少し上手く創作して欲しかったなぁ。

それと、この映画の大きな難点として...
例えば『10日間で男を上手にフル方法』のように、設定の面白さ、奇抜さがない点だ。
確かにスランプに陥った小説家が語るストーリーに“合いの手”を入れながら、小説を速記していき、
終いにはその小説家と恋に落ちるという設定自体に、旨みが無いとは言えないけれども、
少なくとも実体験をモチーフに小説を書いていくというスタンスは、よくある話しだと思う。

結果だけを見れば、小説が現実世界とシンクロした映画なのですが、
まだ逆なら、もう少しは魅力的なお話しになったかもしれません。
つまり、現実世界が小説の内容とシンクロするように展開すれば、寓話性も出たような気がします。

ケイト・ハドソンが当時、ノリにノッていたということは知っていますが、
少なくとも本作での彼女は、主人公と恋に落ちてからはまずまずでしたが、それまでは凡庸そのものです。

あまりに創意の感じられない平坦な描写に、彼女のファンもガッカリするのではないでしょうか。
もっとメイクも含めて、何かしら魅力的に映る部分があるヒロインでなければ、映画は輝かないと思いますね。

それと同じことが言えるのは、我らがフランスの女王こと、ソフィー・マルソー!(笑)
たいへん申し訳ない言い方だけど、これはソフィー・マルソーの無駄遣いだ。
そこまで評判は悪くなかったようですが、僕はこの映画での彼女の扱いを観て、大きく失望してしまいましたね。
(本来であれば、彼女はもっとヒロインの恋の強敵として描かれなければならないはず・・・)

そうなってくると、まるで輪にかけたように気になるところが噴出してきます。
主人公のサラ金に脅される小説家にしても、まるでどうしようもない男に見えるのは残念。
僕はこういう部分を観ると、ロブ・ライナーがホントにこの内容に愛着を感じているのか、疑問に思えてならない。

具体的にどういう部分かと言うと...
ウソで塗り固めたというところまでは、許容して観ていられる余地はあったけれども、
元恋人とオープン・テラスで夕食を一緒に食べながら楽しそうにしている場面を目撃されたにも関わらず、
必死に弁解しようと、ヒロインにしつこく電話しまくり、挙句、強く拒絶されながらも直接会おうとする。
この連続に正直言って、ウンザリさせられる気持ちを観客に持たれた時点で、この映画はダメですね。
僕の頭が固いだけなのかもしれませんが、僕には憎めない男の頑張りというよりは、
懲りない情けない男が必死こき過ぎて、ストーキングになってしまっている行動にしか見えなかった。

もう少し、作り手に映画を輝かせようとする心があれば、良い意味で変わっていたと思いますね。
一見すると破綻なく作っているように見えるが、これは明らかに細部がメチャメチャになっている好例だ。

まぁ上映時間が短い分だけ、比較的、観易い内容ではあります。
従って、あんまり大きな期待をしなければ、そこまで悪い印象は残らないかもしれません。
いかんせん僕はケイト・ハドソン主演のラブコメという枠組みに、少し期待をかけ過ぎましたね(苦笑)。

オマケに久しぶりにソフィー・マルソーを観れるということで、気合が入り過ぎてしまいました。
最高のキャスティングをしておきながら、全く活かし切れなかったというは許し難い暴挙なのですが、
ロブ・ライナーの復調は是非とも期待したいものです。少なくとも、もっと出来るディレクターであることは、
例えば『恋人たちの予感』や『ア・フュー・グッドメン』を観れば、明らかなことですから。

そういう意味では、本作の内容って、
ややスランプ気味とも解釈できる、最近のロブ・ライナーとシンクロしているのだろうか?(←オイオイ)

(上映時間95分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ロブ・ライナー
製作 トッド・ブラック
    アラン・グライスマン
    ジェレミー・ピヴェン
    ロブ・ライナー
    エリー・サマハ
脚本 ジェレミー・ピヴェン
撮影 ギャヴィン・フィネイ
美術 ジョン・ラレナ
編集 アラン・エドワード・ベル
    ロバート・レイトン
音楽 マーク・シェイマン
出演 ケイト・ハドソン
    ルーク・ウィルソン
    ソフィー・マルソー
    デビッド・ペイマー
    ジョーダン・ランド
    ロブ・ライナー