ROCK YOU
A Knight's Tale
一風変わった、中世ヨーロッパ劇なのですが、これはおそらく賛否両論でしょう。
中世ヨーロッパで流行していた貴族しか参加できない馬上槍突き大会をテーマに、
飢えに苦しんでいた従者たちが、自らを平民と偽って大会に参加して優勝してしまったことから、
血気盛んな若者ウィリアムを先頭に立たせ、平民を味方に付けての活躍を繰り広げる青春活劇。
新感覚の歴史劇であったせいか、劇場公開時、大きく話題となり、
日本でもそこそこヒットしていたのですが、映画の出来自体はそこまで秀でているという感じはないですね。
08年、惜しくも他界したヒース・レジャーが初めて大々的に注目され、
主役に抜擢された作品であり、確かにこれからガンガン前へ出てきそうな匂いがプンプン漂っています。
『ブロークバック・マウンテン』、『ダークナイト』と順調にキャリアを積んでいただけに、彼の早世は凄く残念ですね。
監督のブライアン・ヘルゲランドは97年に『L.A.コンフィデンシャル』の脚本で評価され、
98年の『ペイバック』で監督デビューし、本作が監督2作目にあたるのですが、
今回は随分と活き活きとした勢いのある映画に仕上がっており、カラーを替えてきましたね。
こういう仕事ができるというのは、映像作家としても器用な部分があるということなんですね。
但し、この映画、長すぎですね。
正直言って、この内容で2時間を大きく越えてしまうのは、いくらなんでも冗長ですね。
もっと余分なエピソードを削ぎ取って、全体的にタイトな映画にする必要があったと思いますね。
どちらかと言えば、これまで硬派な映画を撮ってきたブライアン・ヘルゲランドですから、
この手の映画は試行錯誤しながら撮っていたのかもしれませんが、例えば晩餐会でのダンスのシーンなど、
散見される余分なシーンはかなりカットできる部分はありましたし、もっと要領良く映画を撮れたと思いますね。
まぁ映画の要点としては、身分を偽って馬上槍突き大会に出場して、
思いのほか勝ち上がるものだから、賞金稼ぎに丁度良いと勤しんでいたところ、
身分違いの女性に恋してしまったがために、彼女に求婚していた槍突き大会のライバルを怒らせてしまい、
怒りに震えるライバルが主人公が貴族の出ではないことを暴き、窮地に追いやられるということ。
それを考えれば、このストーリーはオーソドックスな内容なのに、2時間12分という上映時間は極めて長い。
如何にこの映画が時間を無駄に費やしてしまったのかが、よく分かる尺の長さと言っていいだろう。
せっかく全体的にコミカルに描き切った作品なのだから、とくに映画の前半はテンポ良く乗り切って欲しいし、
槍突き大会のライバル、アダマーが一旦、フランスに帰って戦争に出征するなどは、無駄なエピソードだと思う。
確かにアダマーがフラストレーションを溜めて、クライマックスに再び、ウィリアムと壮絶な対決を繰り広げるという、
ある意味でセオリー通りの展開ではあるのですが、冗長な傾向のある映画で、このエピソードは余計でしたね。
これらは、やはり脚本の段階で解消すべき障害だったわけで、
脚本も執筆したブライアン・ヘルゲランドが何とかすべき問題だったと思いますね。
クイーン≠竍スライ&ザ・ファミリーストーン≠ネど、中世ヨーロッパには存在しなかった、
ポピュラー・ミュージックをガンガン使って、これまでの映画には無かった雰囲気を作り出したという意味で、
一つの功績はあったとは思いますが、これだけでは映画の強みとしては、不足な気がしますね。
もう一つ、敢えて注文を付けさせてもうと、
貴婦人ジョセリンを演じたシャニン・ソサモンがこの映画のヒロインになるはずなのですが、
あまりに目立たない存在で終わってしまうというのは、いささか感心できませんね。
特に本作はウィリアムとジョセリンの恋愛はメインだったはずなのに、彼女が目立たないというのは可哀想だ。
これもまた、ブライアン・ヘルゲランドがもっとケアしなければならない点だったと思いますけどね。
だって、せっかく規模の大きな映画でシャニン・ソサモンもヒロインの座をゲットしたわけで、
それがこんなに目立たない役どころに終わってしまったというのは、凄く可哀想なことじゃないですか。
(事実、シャニン・ソサモンは本作以降、あまり出演作に恵まれているとは言い難い・・・)
個人的には、どうせならミュージカル映画にしてしまえば良かったのに・・・と思うんです。
勿論、本作にはその要素があって、前述したダンスのシーンにしても、どちらかと言えば無駄なのですが、
一見すると、ミュージカル・シーンに発展しそうな空気が漂っていて、ホールで全員が楽しそうに踊っています。
映画の冒頭にある、クイーン≠フWe Will Rock You(ウィー・ウィル・ロック・ユー)に合わせて、
槍突き大会の会場で、戦いの瞬間を観客が待つシーンの雰囲気なんかも、決して悪くはありません。
そうなだけに、いっそのことミュージカル映画にしてしまって、
映画の流れに勢いを持たせるなど、若干、強引とも言えるアプローチがあっても良かったと思いますね。
それにしても、ヒース・レジャーはこの頃、まだ初々しい感じなのに・・・
この僅か8年後に薬物の過剰摂取で亡くなってしまうとは、とても残念ですね・・・。
オーストラリア出身の若手俳優のホープとして、この頃から一気に注目される存在だったのですが、
本作と同じく、01年に出演した『チョコレート』では、どことなく破滅的な役柄だったせいか、
何とも言えぬ“陰”の部分を感じさせる若手俳優で、これからが楽しみな役者の一人だったのですがね。。。
ちなみにウィリアムたちと同行する、作家志望のチョーサーを演じたポール・ベタニーの存在は良い。
槍突き大会にて、ウィリアムをプレゼンテーションばりに紹介して、大会を盛り上げる役目を負っていて、
これまでの例えば中世ヨーロッパで繰り広げられていたコロシアムなどでの競技大会での選手紹介とは違って、
完全に観客を煽るようなプレゼンなためか、現代的な感覚をフィクスしていて、実にユニークだと思いましたね。
僕は映画の価値を上映時間だけで決めるようなことはしませんが、ただ評価指標としては当然、
ある程度のウェイトを占めているわけで、本作の場合は、あと20分ぐらい短縮できていれば、
もっと映画にスピード感を与えることができたはずで、映画の印象ももっと良くなったはずだと思いますね。
やはりブライアン・ヘルゲランドが映画監督としての経験が浅いせいか、今後の克服課題だと思いますね。
「内容の割りに、映画が長いなぁ・・・」と感じたのは、おそらく僕だけではないはずです(笑)。
(上映時間132分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 ブライアン・ヘルゲランド
製作 トッド・ブラック
ブライアン・ヘルゲランド
ティム・ヴァン・ヘリム
脚本 ブライアン・ヘルゲランド
撮影 リチャード・グレートレックス
音楽 カーター・バーウェル
出演 ヒース・レジャー
マーク・アディ
ルーファス・シーウェル
シャニン・ソサモン
ポール・ベタニー
アラン・テュディック