探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点(2013年日本)

全国的な大ヒットとなった、『探偵はBARにいる』の続編。

東映のもはやプログラム・ピクチャーと化した感はあるが、
安定してヒットが見込めるシリーズが皆無になった昨今の映画界に於いては仕方のないことだろう。
どうやら、既に第3作の製作が決定しているらしく、また札幌が舞台となる予定だそうだ。

前作と同様に我が街、札幌がこのような形でフィルムになっていることは嬉しく、
続編である本作にしても、見慣れた風景が舞台となっているので、ワクワクしながら観たものです。

映画の出来としては、前作とほぼ同レヴェルか、若干、落ちる出来かな。
大倉山ジャンプ場でのピンチから始まる冒頭は面白いが、全体的にアクションを重視し過ぎたせいか、
探偵映画であるという前提が崩れてきているし、どこか荒唐無稽な展開が目立つようになり、
映画の印象が悪い意味で荒っぽくなってしまった気がする。これは第3作があるなら、是非とも改善し欲しい。

決してつまらない映画ではないし、作り手の工夫も感じられるのですが、
個人的にはもっとミステリー路線を追及して欲しいし、前作よりも落ちたかなぁと感じるところは、
夜の歓楽街すすきのをメインにした映画であるにも関わらず、その雰囲気作りが弱くなっていること。

やはり前作の大ヒットのおかげで、必然的にハードルが上がりましたかね。

おそらく東映からのプレッシャーもあったのでしょうし、
かなり札幌市の協力も得て、大々的に撮影されていたようですから、
興業的にヒットさせなければならないというプレッシャーは強かったのでしょう。

そのせいか、作り手も半ば無理矢理にエンターテイメント性を追求しようとしていますね。
映画の前半からは、随分と派手なアクション・シーンが幾度となく挿入されていて、
観客にも息をつかせぬ展開という様相で、前作に僅かに残っていたハードボイルド性の代わりに、
アクションを置き換えたような感じで、これが結果的に本作にとっては良くなかったような気がします。

まぁ、こういうシリーズ化を目指した作品の新たな挑戦やスタイル・チェンジって、
明らかなギャンブル性を帯びていて、何でもかんでも挑戦すりゃいいってもんじゃないですからねぇ。

当然のように、前作のヒットを受けて、本作を観る人もいるわけで、
原作のファンもいたり、それら観客の最大公約数をとらないと、第2作が大ゴケなんてことはよくありますからね。
で、大ゴケして、その失敗を取り返すチャンスがあればいいのですが、映画界はそういうわけにはいきません。
興業的なヒットが期待されていた企画で、商業的に大ゴケしてしまうと、その時点でシリーズ化が頓挫し、
大きな借金を作って終わり、プログラム・ピクチャーではなくなってしまいますからねぇ。

おそらく本作の撮影にあたっても、そういったギャンブルをすべきか否かで、
そうとうに迷ったのだろうと思うし、ギャンブルに出て、その全てが失敗だったとは思わない。
むしろ本作の場合は、そのギャンブルに出た割りに、映画を壊さずに上手く乗り切った方かもしれない。

ただね、さすがに第3作を製作するのであれば、次はもっとよく考えなければならないとは思うんですよ。
個人的には好みの問題もありますけど、もっとハードボイルド性は残しておいた方がいいと思うし、
コミカルな部分とシリアスな部分は、もっとしっかりと対立させて描いた方が映画は良くなると思うんですよね。

そういえば、本作は2013年5月に日本全国で一斉に封切となりましたが、
実は僕、本作の撮影していた頃をよく覚えていて、あれは2012年の秋だったと記憶しています。
この年の秋は異常に残暑が厳しく、かつてないほど暑い9月だったんですよね。
いつもなら、北海道の夏って、お盆を過ぎると、どの地域もだいたいは寒くなっているもんなんですが、
この年の9月は平気で最高気温が30℃を越える日があったし、最低気温も高かったはずです。

そんな中、映画の中盤にある市電の中で、主人公2人が命を狙う市民グループに囲まれ、
住宅街を走る市電の中で大格闘になるなんてシーンがあったのですが、このシーンを撮影していたんですね。
いっぱいエキストラがいて、1台の市電にビッシリ人が乗って撮影していた現場を車で通りかかりました。

さすがに撮影自体は通行止めにして、夜中に撮影していたようですから、
その様子までは見れませんでしたが、初めて映画の撮影現場の雰囲気を見れて興奮したものです。
(ってか、その撮影現場が自分の家のすぐそばだった・・・)

このシーンは実際に映画に収められていて、確かに嬉しかったが(笑)、
前述のように、こういったシーンばかりが続く印象で、悪い意味で単調になってしまう。
特にニューハーフバーで市民グループが暴れまくるところを主人公2人が救出に行くシーンあたりからは、
似たようなパターンで繰り返されるピンチの連続に、少し食傷気味になったような感があったのは事実。

この辺は映画に何を求めるかの違いもあるでしょうけど、
最も僕が大切にしたいのは、その映画のベースが一体どういったものなのかが大切なんですね。

僕もピンチが連続する映画は嫌いではないし、アクションが多いことが悪だとは言わない。
しかし、それが探偵映画でやる必要はないのではないかということですね。探偵を描く必要性が問題なんです。
ひょっとしたら、この映画の作り手は『探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!』あたりを参考にしたのかもしれませんが、
それにしても、この手の映画に何が必要なのか、そういった観点からの研究が足りない気がします。

とは言え、変な甘さを映画に残さなかった点は良い。
映画のラストのテイストとしては、前作は甘過ぎたように感じたので、本作ぐらいが丁度良い。

尾野 真千子演じるバイオリニストの目的は、結構、映画の早い段階で分かりかけてしまうのですが、
前作の小雪の扱いと比べると、本作の彼女の扱いの方があまり甘くし過ぎない感じで、丁度良いですね。

いずれにしても、第3作の製作が実現するのであれば嬉しいのですが、
映画のベクトルを今一度見直して、本作のベースとすべきものが何なのかは再考した方がいいと思いますね。
札幌がこういう形でフィルムに残ることに関しては歓迎したいだけに、尻すぼみで終わって欲しくないんですよね。

どうしたって注目度が高い作品ともなれば、観客の要求は高度なものになってきますしね。。。

(上映時間119分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

日本公開時[PG−12]

監督 橋本 一
製作 白倉 伸一郎
    平城 隆司
    木下 直哉
    日達 長夫
    畠中 達郎
    鈴井 亜由美
    香月 純一
    村田 正敏
    樋泉 実
    岩本 孝一
    山本 晋也
    大辻 茂
    笹栗 哲朗
    早川 浩
原作 東 直己
脚本 古沢 良太
    須藤 泰司
撮影 田中 一成
美術 福澤 勝広
編集 只野 信也
音楽 池 頼広
出演 大泉 洋
    松田 龍平
    田口 トモロヲ
    尾野 真千子
    波岡 一喜
    池内 万作
    佐藤 かよ
    ゴリ
    松重 豊
    篠井 英介
    矢島 健一
    筒井 真理子
    渡部 篤郎
    近藤 公園