50回目のファースト・キス(2004年アメリカ)

50 First Dates

98年、『ウェディング・シンガー』でコンビを組んだアダム・サンドラーとドリュー・バリモア。
この2人が6年ぶりに再び共演し、『ウェディング・シンガー』と同様にラブコメに調理しました。

まぁかなり映画界での活動という意味では、
おとなしい芸風に変化してきたアダム・サンドラーの映画ということもあってか、
僕はこの映画、まずまず堅実な側面があって、キチッとした出来で好感を持ちましたね。

残念ながら、日本で劇場公開された際は、あまり大きな話題とはなりませんでした。。。

不慮の交通事故で一晩寝ると、
必ず事故前日までの記憶しかない状態に戻るヒロインを、何とかして救おうとする水族館に勤務する獣医師。
映画はいつしか恋に落ちた2人のロマンスを描いているのですが、主演コンビの呼吸が見事ですね。

つまりはヒロインの周囲の人々は通常通り、時間が経過していて、
ヒロイン自身も当然、年齢を重ねていくけれども、ヒロインは毎日、事故当日を繰り返しているというわけ。
そんなヒロインの障害を悟らせないためにと、周囲は何とかして事故当日の一日を再現させようとします。

ここで登場するのは水族館で獣医を勤めるヘンリーというわけなのですが、
彼はヒロインに恋した以上、彼なりの一途な愛を貫くため、何度も彼女の記憶を呼び起こそうと尽力します。

それは毎日、朝から何度も何度もヘンリーがヒロインにアタックして、
一日で2人の関係がどこまで進むかをビデオに記録することにより、そのビデオを事故当日の朝のつもりでいる
ヒロインに見せ続け、徐々に短期記憶を長期記憶へと変換できるようにトレーニングしていくのです。
まぁ映画の序盤でヘンリーはかなり女性関係にだらしないモテ男みたいな描写がありましたから、
どうして突如としてヒロインを一途に愛し続けるのか、よく分からない部分はありましたけど、
映画の後半はヘンリーの献身的な姿を映し続けたせいか、まずまずの仕上がりに収まりましたね。

本来的に本作はコメディ映画ですし、アダム・サンドラー主演の映画でしたから、
もっとドタバタさせることが可能だったとは思うのですが、意外に映画の後半は慎重な作り方をしましたね。

やたらと騒がしい内容になったり、無意味にギャグを連発させることを控え、
純粋な恋愛映画となるよう、改めて映画の後半は立て直す方向に転換することに成功しましたね。

監督のピーター・シーガルはこれまで、コテコテのコメディ映画しか撮ってこなかったから、
こういう方向性を持って、コメディ映画としての色合いを弱めたというのは、大きな決断だったはずです。
これで映画の前半も何とかできていたら、映画で描いた純愛の説得力はもっと高まったはずなんですけどね。。。

どうやらドリュー・バリモアがアダム・サンドラーとの再共演を望んでいて実現したとのことで、
ホントは本作の企画はベン・スティラーとキャメロン・ディアスのコンビで進んでいた企画だったとのことです。
(まぁ・・・あくまで結果論ではありますが、このキャスティングの変更は正解だったかも・・・)

残念ながら『ウェディング・シンガー』ほどの面白さとまでは言えませんが、
ただ単に可愛らしい恋愛を演じた『ウェディング・シンガー』の頃と比べると、本作はまた違った味わいがある。

何故、この映画の舞台でハワイが選ばれたのかはよく分かりませんが、
映画のアクセントにするという意味では、確かに正解だったのかもしれませんね。
意外にもドリュー・バリモアみたいなタイプの女優さんでも、ハワイがよく似合っている。
ヘンリーが水族館に勤めているという設定や、ゴルフを楽しむという設定もこれで活きてくるのは事実です。

但し、毎日のように何度も同じ恋愛に挑戦し続けるという設定は93年の『恋はデジャ・ブ』と一緒。
しかも残念ながら恋愛映画としての優位性も『恋はデジャ・ブ』の方にあると僕は思います。
そういう意味で本作は、やや苦しいかもしれません。どうせなら毎日同じ状況を作ることの苦労なんかを、
もっとたくさん描けば、ロマンチック・コメディとしての魅力は出せたのかもしれません。

チョット意地悪な言い方をすれば、純愛をストレートに描き過ぎたがゆえ、優等生映画に見えてしまうかな。

まぁそんな風に恋愛をストレートに描いたからこそ純愛は光るものだし、
同時にそこが本作の特徴であり、良さでもあるのだけれども、本来的に目指していた方向性は
僕は『恋はデジャ・ブ』で描かれたような、エポックメイキング(画期的)な映画ではないかと思いますね。

コメディ映画としての側面を捨て切れなかったのはロブ・シュナイダー演じる鮫に腹を噛まれた男の存在だ。
彼は彼でアメリカではかなり有名なコメディアンなのに、この中途半端な扱いはあまりに可哀想だと思う。
彼が繰り出すギャグの大方は中途半端な感じで終わってしまい、映画の空気に合っていない。

この辺がどうしても、映画のカラーを決め切れなかった作り手の苦しさがあると思う。

それと、どうでもいい話しではありますが...
『シックス・センス』のオチを知りたくない人は、あまり本作を観ない方がいいと思います。
なんせ・・・ビックリするほど、思いっ切りネタバラししてますから(苦笑)。

(上映時間99分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ピーター・シーガル
製作 ジャック・ジャラプト
    スティーブ・ゴリン
    ナンシー・ジュヴォネン
脚本 ジョージ・ウィング
撮影 ジャック・N・グリーン
編集 ジェフ・ガーソン
音楽 テディ・カステルッチ
出演 アダム・サンドラー
    ドリュー・バリモア
    ロブ・シュナイダー
    ショーン・アスティン
    ダン・エイクロイド
    ルシア・ストラス