ポイント45(2006年アメリカ)

.45

トンデモないDV男を彼氏に持つヒロインが、
ソーシャルワーカーに保護されるうちに、彼女なりの復讐にでることを決意する姿を描いたサスペンス映画。

確かに本音を言えば、映画の出来は褒められたものではない。
ヒロインを演じたミラ・ジョボヴィッチもかなりハイリスクな役にチャレンジしていますが、
映画の出来がイマイチなせいか、どうも彼女のチャレンジが成功したという印象は受けない。

しかしながら、僕はこの映画、どうしようもない部類の映画ではないと思う。

と言うのも、DV問題に悩まされる被害者側の心理を上手く表現できているという点があるからだ。
暴力を振るわれ、罵声を浴びせられ、自分の言い分も聞いてもらえない。
そんな一方的な構図を前に、被害者はいち早く抜け出したいと切望するものの、そう簡単に抜けられない。
何故なら報復を恐れているからだ。結局、「面倒事を起こしたくはない」という心理が働くのです。

それからもう一点。ある種の“ストックホルム症候群”のように、
加害者に対して同情的な気持ちに仕向けられるという症状が伴うことも、また事実だと思う。

まぁつまりは、一筋縄にはいかない難しい社会問題に対して切り込んだ映画という意味では、
本作は決してどうしようもない部類の映画だとは思わないですね。それなりに意義のあった作品であり、
従来の映画にはない感覚を持った作品として、本作の優位性はあると思いましたね。

監督は本作がデビューのゲイリー・レノンということなのですが、
上手くやればもっと上手い映像作家になると思いますねぇ。デビュー作としては、まずまずだと思います。
映画の発想として、やや安直に感じちゃう面があることは否めないけど、それでも見どころはあると思う。
こういう映画が日本ではヒッソリと劇場公開され、挙句、下世話なキャッチコピーと作られるなんて悲しいなぁ。
(まぁ・・・そうでもしなきゃ、本作のような映画は購買意欲を刺激できないからなのかもしれないけど...)

確かにあわや、ビデオスルーになってもおかしくない映画ですから、
ギリギリのラインとは言え、日本劇場未公開作扱いされずに済んだのは良かったとは思うけど、
配給会社のことを考えると、これぐらいの映画が一番、扱いに困るでしょうね(苦笑)。

敢えて注文を付けると、インタビュー形式で映画を進めていくのですが、
僕はこのアプローチがどうしても好きになれない。できることなら、もっと堂々と進めて欲しかったですね。
僕はもっと正攻法でストレートなアプローチでも、十分に映画は構成できたと思うのです。
何が嫌って、本作の場合はこのインタビュー形式に何一つ意味がないことなんですよね。

ましてや、善と悪の構図や関係性も、本作は映画の終盤になってくると変化してくるのですが、
このインタビュー形式をとると、その変化がインタビューによって明らかになってしまうんです。
さすがに、これでは映画の魅力がフルに出てこないと思うんでしょね。もっと示唆的であって欲しいなぁ。

『バイオハザード』シリーズで知られるミラ・ジョボビッチがこういう役で演じているというのもショッキングですが、
ひょっとしたら彼女よりも久しぶりに観たスティーブン・ドーフがあまりに情けない方が、ずっとショックかも(笑)。

ミラ・ジョボビッチはできることなら、もっとPOPな映画に出て欲しい気持ちもあるんだけどなぁ〜。。。
何だか出演映画の選球眼がイマイチで、キャリアを少し損しているような印象があるんですけどねぇ。
(ひょっとしたら、彼女なりのこだわりがあるのかもしれないけど・・・)

そして本作の中では彼らよりも、
荒くれDV男を演じたアンガス・マクファーデンという俳優さんの怪演が圧倒的に強烈ですね。
キャリアもそんなに長くないし、あまりメジャーな映画には出演していないようですけど、
本作ぐらいのパフォーマンスができるならば、もっと規模の大きな映画でも活きると思いますけどね。。。

彼が演じたアルは街を歩けば、やりたい放題。他人には迷惑をかけて生きるスラム街のワルだけど、
セコい犯罪にしか手を染めず、恋人への拘束力は凄まじく、気に入らないことがあれば暴力も。
彼の友人も基本的には彼の言いなりだが、全ての友人たちが彼のことを快く思っているわけではない。
ある意味では憎まれ役なんですが、元の彼は小物の悪党。それが徐々にエスカレートしてきます。

あと、タイトルになっているけど、45口径の銃の映画の中での位置づけが高くはないのも気がかりですね。
タイトルの付け方も、もうチョット気を配って欲しいですね。この辺に作り手の経験不足が露呈しています。

日本ではレイティングの対象になった作品ではありますが、
本作の場合は、性描写よりも凄惨な暴力描写と言葉の表現の過激さがあってのことだと思います。
さすがにこの台詞は凄まじいまでに美しくない(笑)。少なくとも、英会話の教材にはなりませんね(笑)。

まぁこの辺も本作をプロモーションしづらくしてしまった要因の一つだと思いますね。

ただ、繰り返しになりますが、褒められた出来じゃないけど、そんなに悪くはありません。
ゲイリー・レノンの次の監督作は期待していきたいところですね。

(上映時間97分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[R−15]

監督 ゲイリー・レノン
製作 デビッド・バーグスタイン
    ガイヤー・コジンスキー
    タッカー・トゥーリー
脚本 ゲイリー・レノン
撮影 テオドロ・マニアチ
編集 ウィリアム・M・アンダーソン
音楽 ジョン・ロバート・ウッド
出演 ミラ・ジョボビッチ
    アンガス・マクファーデン
    スティーブン・ドーフ
    アイシャ・タイラー
    サラ・ストレンジ
    ヴィンセント・ラレスカ