ラスベガスをぶっつぶせ(2008年アメリカ)

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正直言って、細かい理屈はよく分からないのだけれども...
映画のテンポの良さに助けられてか、まずまず面白かったと思いますね。

映画はMITの学生が、かつてラスベガスで“カード・カウンティング”というテクニックを駆使して、
大儲けした過去がある大学教授ミッキーの研究チームに加わって、チーム・プレイと“カード・カウンティング”を
駆使して、絶対的優位に立つときにデカく投資して、大儲けすることをテーマに実践研究する姿を描き、
一方で禁忌とされるルールを侵すことによって支払う羽目になる、代償の恐ろしさも描いています。

別にラスベガスに行ったことがあるわけではないので、
ブラックジャックの駆け引きの面白さなど、フルに味わったとまでは言えないと思うのですが、
映画の概略はおおむね、カード・ゲームが分からない人にも理解できる作りにはなっています。

どちらかと言えば、カード・ゲームの駆け引きを楽しむ映画というわけではなく、
若さゆえに、禁忌を破ったことによって、痛い代償を払って、成長する姿に主眼を置いているようで、
言ってしまえば、これはこれで青春映画なんですね。お世辞にもピュアな映画とは言えませんが(笑)、
痛い目に遭って成長するという観点からは、オーソドックスながらも優れた映画と言うことができると思います。

しかし、チョット残念なのは青春映画が流行した80年代半ばの頃の映画なんかと比べると、
イマイチ勢いがないことですね。良い題材の映画なんだろうけど、他の映画に波及する影響力はないですね。

勘違いしてはならないのは、この映画はギャンブルの楽しさを描いているわけではないということ。
映画の中盤でミッキーが語っていますが、「賭けるな」ということで、あくまでシステマチックに興じて、
ほぼ100%勝てるという段階で大きく投資するわけですから、これはもう“賭け事”ではなくなっているんですね。

そしてミッキーは学生たちに「感情に流されるな」と忠告します。
これらは全て、計算通りにカード・ゲームを進めるため、個人の暴走を止めるためです。
全て参加者がコントロールするゲームになりますから、必然的に勝率は高くなります。
ミッキーはゲームを確率論の見地から、自分たちに有利に進めるための最善の策を講じています。

これでブラックジャックで勝ち続けて、大儲けするわけなのですから、
絶対的な法則を導き出そうとしているわけで、学術的にこの研究は価値があるのかもしれません。

但し、そりゃカジノの経営者にとっては、
そんなことでいとも簡単に客に儲けを取られては面白くありませんから、
当然のように“カード・カウンティング”が分かる警備員を雇っており、常に監視しているわけです。
映画は、学生たちのチーム・プレイがカジノ側に如何に見破られないかもポイントにしています。

若干、この映画の弱い部分として、説明が少なくて分かりづらい部分があるのですが、
それでもカジノ経営者vsギャンブラーという、構図的な面白さが本作を支えており、
人生の大きな代償を払ったという教訓から、個人が成長するという展開に上手くつなげていますね。

ただ強いて言えば、もう少しゲームの内容を分りやすく描いて欲しかったし、
もう一つ言えば、ブラックジャックって駆け引きのカードゲームだと思っていたのですが、
そういった駆け引きが生む緊張感がフィルムに吹き込まれていなかったというのが残念ですね。
映画全体が主人公のドラマに注力したためか、緊張感が希薄になってしまった気がします。

監督のロバート・ルケティックは『キューティー・ブロンド』の成功で、
ハリウッドでチャンスを得た映像作家ですが、まだまだ良くなっていくような気がします。

まぁ『キューティー・ブロンド』も確かに面白かったんだけれども、
勢い半分で撮ってしまったような印象がある『キューティー・ブロンド』と比べると、
本作は随分と設計感のある映画に仕上がっており、より好感の持てる作りになってしますね。

ちなみにこの映画は実際に起こった出来事をモデルにしているそうなのですが、
実際はマサチューセッツ工科大学に在籍していたアジア系の学生を中心としたグループだったらしく、
“カード・カウンティング”を考案したのも、日系人だったらしく、本作でも伝説のギャンブラーとして語られている。

この“カード・カウンティング”は自体はネバダ州以外では、
違法行為ではないようなのですが、ラスベガスをはじめ、ほとんどのカジノでは禁忌とされていたらしく、
やはりほとんどのカジノでは警備員を配置して各プレイヤーの動きを監視しているらしい。
確かにトランプ・ゲームって、絶対的な法則があるはずで、もっと言えば、確かに全てのカードをカウントして、
残りのカードを推測して、記憶することができれば、かなり高い確率で勝てるはずなんですね。

一つだけ僕がこの映画を観ていて疑問だったのが、
ケビン・スペイシー演じるミッキーが主人公を冷たく扱うシークエンスがあるのですが、
あまりミッキーも大学に対しては警戒感なく、“カード・カウンティング”のチームを進めていたミッキーですから、
主人公がミッキーに復讐心を燃やすなら、大学に告発すれば良かったのでは?と思えること。

おそらく数多くの証拠と、ミッキーの過去が暴かれるはずですから、主人公に勝算はあったかと。。。
(そんなこと言ったら、この映画のストーリー自体を否定することになりかねないですがね...)

まぁ少しだけ変わった青春映画という意味では、
そこまで出来が悪い映画というわけではないですし、手堅い作りで好感が持てますね。
特にカード・ゲームが好きな人には、オススメしたい作品の一つでもあります。

どうでもいい話しですが...
98年にテリー・ギリアムが『ラスベガスをやっつけろ』という映画を発表したのですが、
どうせ邦題を付けるなら、紛らわしいから、何か別な邦題に代えて欲しかったんですけどねぇ〜(苦笑)。

(上映時間122分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ロバート・ルケティック
製作 デイナ・ブルネッティ
    ケビン・スペイシー
    マイケル・デ・ルカ
原作 ベン・メズリック
脚本 ピーター・スタインフェルド
    アラン・ローブ
撮影 ラッセル・カーペンター
編集 エリオット・グレアム
音楽 デビッド・サーディ
出演 ジム・スタージェス
    ケイト・ボスワース
    ケビン・スペイシー
    ローレンス・フィッシュバーン
    アーロン・ヨー
    ライザ・ラピラ
    ジェイコブ・ピッツ
    ジョシュ・ギャッド
    サム・ゴルザーリ
    ジャック・マクギー
    ヘレン・ケアリー