2012(2009年アメリカ)

2012

いやぁーっ、これは楽しませてもらった。
さすがはローランド・エメリッヒというブランドって感じで、これは彼が思いのままに撮った、
ここ数年間の間では、最強のディザスター・ムービーと言っていいレヴェルですね。

もう「どーせやるなら、派手にやれ!」と言わんばかりに、
ありとあらゆるものを壊しまくり、情け容赦なく、人々が災害に襲われてしまう。
さすがに2011年の東日本大震災を経験した後では、より心の痛む映画ではありますが、
逆に言うと、東日本大震災前では懐疑的に観ていたかもしれない映像表現がある作品ですが、
今は「ひょっとすると、こんなことが起こるかも・・・」という気持ちで観てしまいますね。

僕もさすがに東日本大震災の津波が市街地を襲った映像に絶句させられましたが、
大地震の連続に大津波が襲うという展開は、まるで東日本大震災を予知していたかのよう。

この映画では、2012年12月21日に起こるという設定になっていますが、
もうこんな天災はしばらく経験したくないですね。地球に生きる以上の宿命と言えば、それまでですが・・・。

ロサンゼルスの住宅街が片っ端から地盤沈下し、海の底に沈んでしまったり、
ビルというビルが次々と倒壊する様子が連続するあたり、半ばローランド・エメリッヒが
まるで“ゴジラ”でも描かんとばかりに、暴れまくっているのですが、この手の映画にありがちな、
余計な人情劇やお涙頂戴的な展開には一切持っていかず、徹底して人々が見舞われる、
過酷な受難の数々に注力したのが、僕には逆に好印象でしたけどね。

2時間30分を超える大作になったのですが、
途中、ほとんど中ダルみせずに、矢継ぎ早にピンチを連続投入する作戦も見事に当たり、
映画の緊張感が最後の最後まで途絶えないテンションの高さが、また凄く良いですね。
(確かにラストのピンチは『ポセイドン・アドベンチャー』みたいで新鮮味は乏しかったけど・・・)

「誰が死んだ、怪我した」とかでグチグチやるなよ!と
映画を観ていて、感傷に浸りたくない人には、是非ともオススメしたいパニック映画で、
どんなにツラい出来事が起こっても、いちいち感傷に浸る隙を与えないというスタンスです。

言ってしまえば、ローランド・エメリッヒの方が現実的なのかもしれませんけどね。
確かに現実にこんなことが起こっても、ここまで破壊の程度が酷いかはひとまず、
自分を含め家族の命を守るためには、いちいち感傷に浸っていては、助かる命も助からないかもしれません。

とっさとは言え、一瞬の判断が大きく結末を変えてしまうということは、
今回の東日本大震災による大津波の襲来で、私たちもよく学んだはずなのです。

だから、こういう映画に対してノンキに「いやぁーっ、これは楽しませてもらった」なんて言うのも、
我ながら不謹慎な発言だとは思うんだけど、但し、これはあくまで映画というメディアとして製作されたわけで、
やっぱりエンターテイメントとして捉えざるをえない面はあると思うんですよね(←なんか言い訳がましいけど)。

映画は地球が加速度的に向っていく、大規模な地殻変動に伴う、
全世界的な大災害を世界各国の首脳陣は察知し、避難手段として大規模な避難船を開発するものの、
その乗船券は約1億ユーロという、超高額な金額で裏取引されており、生き残る権利は庶民から剥奪。
徐々に政府の不穏な動きに気づいた人々は、世紀末的な大災害を警戒し騒ぎ始めるものの、
災害は政府が予想していた以上のスピードで押し寄せ、やがて人々に容赦なく襲い掛かります。

そこで登場するのが、かつて小説家としてデビューしながらも、
今はしがないリムジン運転手となっていたジャクソンが、ひょんなことから事態の緊急性を察知し、
間一髪、別れた妻と子供たちを家から助け出し、命からがら避難する姿を描いています。

本作ではダニー・グローバーが合衆国大統領を演じているのですが、
どうせなら彼はもっとプッシュして欲しかったですね。展開が展開なだけに仕方がないのですが、
あまりに合衆国大統領の存在感が弱くって、思わず「オイオイ、こんなんで大丈夫かよ!?」と心配になるほど。
確かに最後はひじょうに勇気のある決断を下す、大統領であることは間違いないのですが、
できることなら、映画のクライマックス近くまで、メイン・ストーリーに関わる立ち位置であって欲しかったですね。

確かにローランド・エメリッヒは『インディペンデンス・デイ』との差別化を図りたかったのかもしれませんが、
僕はやはりハリウッドらしい発想の典型例と批難されようが何だろうが、合衆国大統領らしくあって欲しかった。
(まぁあくまでアメリカ中心で進んでいた内容ですからね、合衆国大統領はもっとフォーカスして良かった・・・)

本作が劇場公開された時に、少しだけ話題になっていたことですが...
今までのハリウッド映画には数少なかった展開として、中国の存在があるのですが、
中国がクローズアップされて描かれることに否定的な意見が多かったのですが、
これは僕にとってはどうでもいい。そんなことを言う人は、最初から観ない方がずっと賢明です。

色々と否定的な論調もあるだろうし、批判を覚悟で言うなら...
こういうローランド・エメリッヒのような映像作家も、一人ぐらいは必要なんだと思いますけどね。
往々にしてハリウッドは一時期、いたずらに「破壊」を楽しむ映画が増え過ぎて、
批判された時期もありましたが、僕も贅沢なもんで、こういう映画が少なくなった昨今では、
むしろローランド・エメリッヒのように頑固に開き直ったディザスター・ムービーを撮り続ける人は
海千山千のハリウッドとは言えど、実に貴重な存在なのではないかと思いますね。

僕も「破壊」を楽しむ映画が増えた頃に、批判的に思っていた一派ですが...
今となっては...また、パワー(資金力)を貯めて、ドカン!と撮って欲しい(苦笑)。。。

(上映時間157分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ローランド・エメリッヒ
製作 ハラルド・クローサー
    マーク・ゴードン
    ラリー・フランコ
脚本 ローランド・エメリッヒ
    ハラルド・クローサー
撮影 ディーン・セムラー
編集 デビッド・ブレナー
    ピーター・S・エリオット
音楽 ハラルド・クローサー
    トマス・ワンダー
出演 ジョン・キューザック
    キウェテル・イジョフォー
    アマンダ・ピート
    オリバー・プラット
    タンディ・ニュートン
    ダニー・グローバー
    ウディ・ハレルソン
    モーガン・リリー
    リアム・ジェームズ
    ジョン・ビリングスレイ
    ジョージ・シーガル
    ベアトリス・ローゼン
    トーマス・マッカーシー